花 -2-

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師匠シリーズ
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問題文

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(「でも、あとからおもいだしたんですよ。あのがいとうのしたのがーどれーるのあたりに)

「でも、あとから思い出したんですよ。あの街灯の下のガードレールのあたりに

(いつもはながかざってあったんです。こう・・・・・じめんにおいたあきかんとか)

いつも花が飾ってあったんです。こう・・・・・地面に置いた空き缶とか

(あきびんにはなをさしてたんです。こういうはなですよ」)

空き瓶に花を挿してたんです。こういう花ですよ」

(おれはちらかったししょうのへやのまどぎわにおかれているちいさなぷらんたーを)

俺は散らかった師匠の部屋の窓際に置かれている小さなプランターを

(ゆびさした。きいろいかべんのなかにくろいしみがある。)

指さした。黄色い花弁の中に黒い染みがある。

(ぱんじーというなまえだったか。)

パンジーという名前だったか。

(「きょう、ちかくにすんでるともだちにきいたら、あそこでむかし、)

「今日、近くに住んでる友だちに聞いたら、あそこで昔、

(こうつうじこがあったらしいんですよ。こどもがくるまにひかれて、)

交通事故があったらしいんですよ。子どもが車に轢かれて、

(そくししたらしいです。)

即死したらしいです。

(それで、そのじこげんばのあたりをよなかとおってると、)

それで、その事故現場のあたりを夜中通ってると、

(いまでもそのこどもがそこにたっているのがみえてしまうらしいです」)

今でもその子どもがそこに立っているのが見えてしまうらしいです」

(たしかにまーじゃんをしにそのゆうじんのいえにいくときは、いつもそのたむけられたはなが)

確かに麻雀をしにその友人の家に行くときは、いつもその手向けられた花が

(めにはいっていた。おかしのふくろなどもそえられてることがあった。)

目に入っていた。お菓子の袋なども添えられてることがあった。

(ぞっとする。)

ぞっとする。

(それでもじょうぶつできずにいまもそのこがさまよいでてくるのだろう。)

それでも成仏できずに今もその子が彷徨い出てくるのだろう。

(なにげなくみすごしてきたにちじょうのふうけいのなかにも、)

何気なく見過ごしてきた日常の風景の中にも、

(きえることのないひとのおもいがひそんでいる。)

消えることのない人の思いが潜んでいる。

(なんだかくらいきもちになってぼくはかたをおとした。)

なんだか暗い気持ちになって僕は肩を落とした。

(そのぼくのおもいがまったくつたわっていないかのように、)

その僕の思いがまったく伝わっていないかのように、

(ししょうは「ちがうちがう」とひだりてをひらひらさせた。)

師匠は「違う違う」と左手をひらひらさせた。

など

(なにがちがうのか。)

何が違うのか。

(きぶんにみずをさされ、すこしむっとしながらいちおういいぶんをきいてみる。)

気分に水を挿され、少しムッとしながら一応言い分を聞いてみる。

(「それって、あそこだろう。こうつうあんぜんのかんばんがちかくのある・・・・・」)

「それって、あそこだろう。交通安全の看板が近くのある・・・・・」

(ああ、そういえばまぬけなひょうごがかかれたかんばんがあったきがする。)

ああ、そういえば間抜けな標語が書かれた看板があった気がする。

(ししょうがたちあがり、ぷらんたーのぱんじーをひきぬいて)

師匠が立ち上がり、プランターのパンジーを引き抜いて

(だいどころのころがっていたあきかんにさしてからおれのまえにおいた。)

台所の転がっていた空き缶に挿してから俺の前に置いた。

(「で、そのはなってこんなだろう」)

「で、その花ってこんなだろう」

(「そうですけど」)

「そうですけど」

(「これだよ」)

「これだよ」

(「は?」)

「は?」

(「だから、これ、ぼくがおいてるんだ」)

「だから、これ、僕が置いてるんだ」

(ぽかんとした。)

ぽかんとした。

(「どこからはなせばいいかな・・・・・)

「どこから話せばいいかな・・・・・

(まあ、めんどくさいんでたんてきにいうと、ぼくのしわざだ」)

まあ、めんどくさいんで端的にいうと、僕の仕業だ」

(あぜんとするぼくをしりめにししょうはつづける。)

唖然とする僕を尻目に師匠は続ける。

(「もともとはぼくのししょうのけんきゅうだったんだ。まったくなんのいわれもない、)

「もともとは僕の師匠の研究だったんだ。まったくなんの謂れもない、

(そのへんのみちばたにはなをかざるとどうなるか、っていう。)

その辺の道端に花を飾るとどうなるか、っていう。

(もちろんこうつうじこなんておこってないし、しんだこどももいない。)

もちろん交通事故なんて起こってないし、死んだ子どももいない。

(はながかれてもしばらくすると、またあたらしいはなをおきにいくんだ。なんどもなんども。)

花が枯れてもしばらくすると、また新しい花を置きにいくんだ。何度も何度も。

(だれがおいてるかばれないように、ひとけのないよなかをえらんで。)

誰が置いてるかばれないように、人気のない夜中を選んで。

(そうしていると、あるひおいたおぼえのないはながおかれてるんだ。)

そうしていると、ある日置いた覚えのない花が置かれてるんだ。

(だれかほかのひとがおいたんだよ」)

誰か他の人が置いたんだよ」

(ししょうはききとしてかたる。)

師匠は嬉々として語る。

(むなくそのわるくなるような、それでいてききのがせない、きみょうなはなしを。)

胸糞の悪くなるような、それでいて聞き逃せない、奇妙な話を。

(あきかんのなかのぱんじーのはなびらをつまみながらししょうはつづけた。)

空き缶の中のパンジーの花びらをつまみながら師匠は続けた。

(「がーどれーるのしたのはなに、てをあわせるひともあらわれた。)

「ガードレールの下の花に、手を合わせる人も現れた。

(おかしをおいていくひともいる。いっかげつや、にかげつなら、そこでじこなんて)

お菓子を置いていく人もいる。一ヶ月や、二ヶ月なら、そこで事故なんて

(おこってないってことはじもとのひとならわかってるさ。)

起こってないってことは地元の人なら分かってるさ。

(でもそれがなんねんもつづいていると、きおくがあいまいになってくる。)

でもそれが何年も続いていると、記憶が曖昧になってくる。

(あのはなはいつからおかれていたっけ?)

あの花はいつからおかれていたっけ?

(じぶんのしらないあいだにそんなじこがあったのかもしれない。)

自分の知らない間にそんな事故があったのかも知れない。

(あそこでじこがあった?ほかのひとにそうたずねる。)

あそこで事故があった?他の人にそう尋ねる。

(なんねんもたつとしゅうへんのじゅうみんにもひとのいれかわりがある。)

何年も経つと周辺の住民にも人の入れ替わりがある。

(ひっこしてきていらい、がーどれーるのしたのはなをみるたびに、)

引っ越してきて以来、ガードレールの下の花を見るたびに、

(じこでもあったんだろうかとおもっていたそのひとは、)

事故でもあったんだろうかと思っていたその人は、

(こうこたえる。じこが、あったみたいですねえ」)

こう答える。事故が、あったみたいですねえ」

(ししょうはこわいろをかえてえんじる。)

師匠は声色を変えて演じる。

(きもちがわるい。そのこえが、ではない。ひとのこころをあやつるようなそのふそんさが。)

気持ちが悪い。その声が、ではない。人の心を操るようなその不遜さが。

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