花 -3-(完)

cicciさんのアカウント
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順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
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1 | Jyo | 5812 | A+ | 6.0 | 96.8% | 491.7 | 2954 | 96 | 62 | 2025/10/09 |
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問題文
(「ひとびとのこころのなかに、ししゃがうまれたんだ。ひとははなをかざり、てをあわせ、いのる。)
「人々の心の中に、死者が生まれたんだ。人は花を飾り、手を合わせ、祈る。
(ししゃのめいふくを。たましいのやすらぎを。そうしてうまれてしまったししゃは、)
死者の冥福を。魂の安らぎを。そうして生まれてしまった死者は、
(ひとのことばからことばへとかんせんする。)
人のことばから言葉へと感染する。
(がーどれーるのそばでくるまにはねられたこどもとして。あるいはろうばとして、)
ガードレールのそばで車に跳ねられた子どもとして。あるいは老婆として、
(あるいはにんぷとして。もともとのかたちをもたないそれは、さまざまなすがたをしている。)
あるいは妊婦として。元々の形をもたないそれは、様々な姿をしている。
(こみゅにてぃをばいかいするもほうしはじょうほうでんたつのかていでへんいする。)
コミュニティを媒介する模倣子は情報伝達の過程で変異する。
(あるはずのない、かいだんばなしがうまれるまではもうすぐだ」)
あるはずのない、怪談話が生まれるまではもうすぐだ」
(ただはなをおいただけだ。みちばたに、ただはなを。)
ただ花を置いただけだ。道端に、ただ花を。
(たったそれだけで。)
たったそれだけで。
(おれはえたいのしれないさむけがからだのなかをはしるのをかんじていた。)
俺は得体の知れない寒気が身体の中を走るのを感じていた。
(「じゅうねんだ。ぼくのししょうがまちじゅうにはなをかざりはじめて」)
「十年だ。僕の師匠が街中に花を飾り始めて」
(ししょうはにやりとわらった。)
師匠はニヤリと笑った。
(まちにはなをかざろう、といううんどうはきいたことがある。)
街に花を飾ろう、という運動は聞いたことがある。
(しかしこれは、にてひなるものだ。)
しかしこれは、似て非なるものだ。
(まちじゅう?)
まちじゅう?
(すこしおくれてそのいみをにんしきする。)
少し遅れてその意味を認識する。
(そういえば、ししょうのあぱーとにはへやのなかだけではなく、)
そういえば、師匠のアパートには部屋の中だけではなく、
(げんかんのそとにもぷらんたーがいくつかあったことをおもいだす。)
玄関の外にもプランターがいくつかあったことを思い出す。
(このひとにしてはみょうなしゅみだとおもっていた。)
この人にしては妙な趣味だと思っていた。
(まちじゅうに、そんなはながかざられているのか。)
街中に、そんな花が飾られているのか。
(そしてそのはなのなかからわきでるように、なまえのないししゃたちが・・・・・)
そしてその花の中から湧き出るように、名前のない死者たちが・・・・・
(「ゆうれいってのが、しにんのからだからはなれたにくたいをもたないなにか、)
「幽霊ってのが、死人の身体から離れた肉体を持たないなにか、
(とていぎづけるなら、きのうみたそれはゆうれいではない。)
と定義づけるなら、昨日見たそれは幽霊ではない。
(しにんのからだからはなれたものではなく、はじめからしにんとしてしか)
死人の身体から離れたものではなく、はじめから死人としてしか
(そんざいしていないんだから。そしてどれほどおおくのひとがめいふくをいのっても、)
存在していないんだから。そしてどれほど多くの人が冥福を祈っても、
(じょうぶつをねがっても、かなうことはない。ほんらいのいみでいう、ししゃですらないそれは、)
成仏を願っても、叶うことはない。本来の意味で言う、死者ですらないそれは、
(ひとびとがめいふくをいのることで、じょうぶつをねがうことで、)
人々が冥福を祈ることで、成仏を願うことで、
(そしておそれることでこそ、そんざいしつづける」)
そして畏れることでこそ、存在し続ける」
(なんてことをするんだ。とおもった。かたりながらこうこつとしたひょうじょうをうかべる)
なんてことをするんだ。と思った。語りながら恍惚とした表情を浮かべる
(このひとは、ふつうのひととはちがうりんりかんをもっているということを、)
この人は、普通の人とは違う倫理観を持っているということを、
(いまさらながらおもいしらされた。)
今更ながら思い知らされた。
(ひとからひとへとかんせんしつづけるういるす。)
人から人へと感染し続けるウイルス。
(めにみえないそのそんざいのことをかんがえたとき、のうりにうかんだのはそれだった。)
目に見えないその存在のことを考えた時、脳裏に浮かんだのはそれだった。
(かんせんがひとのこころにまぼろしをうむのだ。)
感染が人の心に幻を生むのだ。
(そしてじぶんのなかにもそれははいりこんでいる。)
そして自分の中にもそれは入り込んでいる。
(だが。)
だが。
(「おかしいですよ」)
「おかしいですよ」
(ようやくそのことばをしぼりだした。)
ようやくその言葉を搾り出した。
(「なにが」)
「なにが」
(「その、がーどれーるのところにはながかざられていたのをおもいだしたのは、)
「その、ガードレールのところに花が飾られていたのを思い出したのは、
(とおりすぎたあとです。それにそこでこうつうじこがあって、こどものれいが)
通り過ぎた後です。それにそこで交通事故があって、子どもの霊が
(さまよっているなんてはなしをともだちからきいたのはきょうになってからです」)
彷徨っているなんて話を友だちから聞いたのは今日になってからです」
(「だから?」)
「だから?」
(「だから、だれからもそんなはなしをきいていないし、なにもしらなかったのに、)
「だから、誰からもそんな話を聞いていないし、なにも知らなかったのに、
(そんざいしないものをどうしてみられるんです?「あれ」はなんだったんですか」)
存在しないものをどうして見られるんです?「あれ」はなんだったんですか」
(じぶんでいっていてぞくりとした。)
自分で言っていてゾクリとした。
(おれは「かんせん」していない。だれからもそこでおきた、)
俺は「感染」していない。誰からもそこで起きた、
(ありもしないじこのうわさをきいていない。)
ありもしない事故の噂を聞いていない。
(じてんしゃでとおるときに、はながあるなあ、とはおもったことがあったが、)
自転車で通るときに、花があるなあ、とは思ったことがあったが、
(そこでだれかしんだのではないかというおもいをいだいたことはなかった。)
そこで誰か死んだのではないかという思いを抱いたことはなかった。
(れんそうすればしぜんにたどりつくかもしれないが、そこまできょうみをもたなかった。)
連想すれば自然にたどりつくかも知れないが、そこまで興味を持たなかった。
(ただしかいにはいった、というだけのけしきのいちぶにすぎない。)
ただ視界に入った、というだけの景色の一部に過ぎない。
(そしてそのはなのこともおもいださず。ただじてんしゃをこいでいただけのおれのまえに、)
そしてその花のことも思い出さず。ただ自転車を漕いでいただけの俺の前に、
(どうしてそんなえたいのしれないものがあらわれるどうりがあるのか。)
どうしてそんな得体の知れないものが現れる道理があるのか。
(にんげんしんりをりようしてじんいてきにつくりだされたはずのまぼろしとしての「ししゃ」が、)
人間心理を利用して人為的に作り出されたはずの幻としての「死者」が、
(まるで・・・・・)
まるで・・・・・
(まるで、ひとのこころのそとへとにじみだして、)
まるで、人の心の外へと滲み出して、
(ひとりでにあるきだしたかのようではないか。)
ひとりでに歩き出したかのようではないか。
(おれみつめているそのさきで、ししょうがあきかんにさしたぱんじーのくきにゆびさきをそえて、)
俺見つめているその先で、師匠が空き缶に挿したパンジーの茎に指先を添えて、
(ゆっくりとくちをあいた。)
ゆっくりと口を開いた。
(「だから、けんきゅうをつづけるかちがあるんじゃないか」)
「だから、研究を続ける価値があるんじゃないか」
(そうしてしずかにはなのくびをたおった。)
そうして静かに花の首を手折った。