食べる -5-

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問題文
(おじさんがめをかがやかせてまたいっぽまえにでた。)
おじさんが目を輝かせてまた一歩前に出た。
(ごくりとつばをのみながらまたいっぽさがる。)
ごくりと唾を飲みながらまた一歩下がる。
(「わかってきたかな。ぼくのいいたいことが。ぬまにおちたというてんぐを)
「分かってきたかな。ボクのいいたいことが。沼に落ちたという天狗を
(まつっていたじんじゃのくでんにはこういっていたね。)
祀っていた神社の口伝にはこう言っていたね。
(「そのすがた、いかなるけものにもにず」って。)
「その姿、いかなる獣にも似ず」って。
(つまりなんだかわからないといってるんだ。)
つまりなんだか分からないと言ってるんだ。
(だからこれはつぎつぎとへんかしていくそんな「てんぐ」ということばのいめーじに)
だからこれは次々と変化していくそんな「天狗」という言葉のイメージに
(ぬりかさねられたぐうわてきなそんざいではなく、)
塗り重ねられた寓話的な存在ではなく、
(しんじつのすがたをびょうしゃしているのではないか。と、そうおもうんだよ」)
真実の姿を描写しているのではないか。と、そう思うんだよ」
(そうぞうしてごらん。)
想像してごらん。
(おじさんはしずかにいった。)
おじさんは静かに言った。
(「せんねんいじょうむかしのそぼくなのうそんのはずれ。ぬまがちなとちに、)
「千年以上昔の素朴な農村の外れ。沼がちな土地に、
(あるときせいじゃくをやぶっててんをきりさくひかりがふりそそいだ」)
あるとき静寂を破って天を切り裂く光が降り注いだ」
(うすぐらいちかしつのてんじょうにひかりがはしったきがした。)
薄暗い地下室の天井に光が走った気がした。
(「ごうおんとともにきょだいなひのたまがふってくるんだ。おそろしいてんぺんちいに)
「轟音とともに巨大な火の球が降ってくるんだ。恐ろしい天変地異に
(そまつなあさのふくをきたむらびとはにげまどった。やがてひのたまはちじょうにげきとつし、)
粗末な麻の服を着た村人は逃げ惑った。やがて火の球は地上に激突し、
(じめんをえぐり、ぬまのみずをいっしゅんでじょうはつさせ、あらぶるきつねびのように)
地面を抉り、沼の水を一瞬で蒸発させ、荒ぶるキツネ火のように
(ほのおがだいちをはいまわった。そしていつしかほのおはきえ、)
炎が大地を這い回った。そしていつしか炎は消え、
(ひとびとがおそるおそるちかづいていくと、ちけいがかわるほどのとほうもないしょうげきが)
人々が恐る恐る近づいていくと、地形が変わるほどの途方もない衝撃が
(あったことをしめすこんせきのなかに、ひのたまのざんがいのようなものがちらばっている。)
あったことを示す痕跡の中に、火の球の残骸のようなものが散らばっている。
(そのなかにひとびとはきずついたけもののすがたをみた。)
その中に人々は傷ついた獣の姿を見た。
(はだはあおぐろく、やせていて、なきごえはきじのようだった。えたいのしれないけものを)
肌は青黒く、痩せていて、鳴き声は雉のようだった。得体の知れない獣を
(とらえたひとびとはざいきょうのゆうしきしゃかいきゅうであったじんじゃのぐうじにとうた。)
捕えた人々は在郷の有識者階級であった神社の宮司に問うた。
(これはいったいなんであるか、と。ぐうじはしんわになぞられていった。)
これは一体なんであるか、と。宮司は神話になぞられて言った。
(「りゅうせいにあらず。これてんぐ(あまきつね)なり」」)
「流星ニ非ズ。是レ天狗(アマキツネ)ナリ」」
(そして・・・・・)
そして・・・・・
(おじさんはつぼにしせんをおとす。ざらざらしたふくらみをゆっくりとなでている。)
おじさんはツボに視線を落とす。ザラザラした膨らみをゆっくりと撫でている。
(「そらから、ひをふくたまにのっておちてきたいほうのせいぶつは、むらのひとびとによって)
「空から、火を吹く球に乗って落ちてきた異邦の生物は、村の人々によって
(しおづけにされた。どうしてほぞんしようとしたか、それはわからない。)
塩漬けにされた。どうして保存しようとしたか、それは分からない。
(しおづけにされたせいぶつのからだはそのじんじゃにまつられ、だいだいのぐうじにうけつがれる。)
塩漬けにされた生物の身体はその神社に祀られ、代々の宮司に受け継がれる。
(ねんげつがたち、やがてにんぎょのにくのでんせつのように、そのにくをしょくすれば)
年月が経ち、やがて人魚の肉の伝説のように、その肉を食すれば
(みのうちにれいりょくがやどるといううわさがうまれた。それをききつけたとちのりょうしゅに)
身の内に霊力が宿るという噂が生まれた。それを聞きつけた土地の領主に
(いちぶがけんじょうされたこともあったそうだよ。)
一部が献上されたこともあったそうだよ。
(かまくら、むろまち、えど、めいじとじだいはくだり、あまきつねはてんぐになり、)
鎌倉、室町、江戸、明治と時代は下り、アマキツネはテングになり、
(やがてこのてんぐのにくはみやじいちぞくといちぶのうじこしゅうだけがしるひみつのごしんたいそして)
やがてこの天狗の肉は宮司一族と一部の氏子衆だけが知る秘密の御神体そして
(くでんでけいしょうされてきた。ぼくがどうやってそれをてにはいれたかはひみつだよ」)
口伝で継承されてきた。僕がどうやってそれを手に入れたかは秘密だよ」
(ひもをとりはらい、つぼのくちをおおうぬのをそろそろとずらしていく。)
紐を取り払い、ツボの口を覆う布をそろそろとずらしていく。
(わたしはそのつぼからしせんをそらすことができない。)
わたしはそのツボから視線を逸らすことができない。
(「にほんのしんわやみんわにはようかいやおにがみなどのおそるべきちからをもったそんざいを)
「日本の神話や民話には妖怪や鬼神などの恐るべき力を持った存在を
(しょくすることでそのちからをとりこむというはなしがいくつかみられる。)
食することでその力を取り込むという話がいくつか見られる。
(それじたいはさほどめずらしいものじゃない。でもね。)
それ自体はさほど珍しいものじゃない。でもね。
(このてんぐのにくをたべることでみのうちにやどるれいりょくとされるのは、)
この天狗の肉を食べることで身の内に宿る霊力とされるのは、
(にんぎょのにくとおなじくふろうちょうじゅのちからだというんだ。ここがおもしろいところでね。)
人魚の肉と同じく不老長寿の力だというんだ。ここが面白いところでね。
(ここん、てんぐのにくをしょくしてふろうちょうじゅをえるというでんせつはほとんどきかない。)
古今、天狗の肉を食して不老長寿を得るという伝説はほとんど聞かない。
(そもそもてんぐはにんぎょよりもはるかにおそろしいちからをもつそんざいだ。)
そもそも天狗は人魚よりもはるかに恐ろしい力を持つ存在だ。
(てんぐだおし、てんぐつぶて、てんぐさらい、てんぐわらい・・・・・)
天狗だおし、天狗つぶて、天狗さらい、天狗わらい・・・・・
(じんちのおよばないかいいのしょうちょうであるてんぐをうちたおし、しょくするというはっそうが)
人地の及ばない怪異の象徴である天狗を打ち倒し、食するという発想が
(そもそもないんだ。てんてきのみっきょうぼうずはかいりつでにくしょくができないしね。)
そもそもないんだ。天敵の密教坊主は戒律で肉食ができないしね。
(ところが、このじんじゃにまつられるてんぐはそんなこうせいのてんぐではなく、)
ところが、この神社に祀られる天狗はそんな後世の天狗ではなく、
(ほんとうはあまきつねだ。いかなるけものにもにず、きじのようなこえをはっするせいぶつ。)
本当はアマキツネだ。如何なる獣にも似ず、雉のような声を発する生物。
(てんぐだからこういうすがたであらわれたわけではなく、こういうあらわれかたをしたから)
天狗だからこういう姿で現れたわけではなく、こういう現れ方をしたから
(あまきつねをよばれた。これはえんえきほうではなく、きのうほうだよ」)
アマキツネを呼ばれた。これは演繹法ではなく、帰納法だよ」
(なんだかわけがわからなくなり、)
なんだかわけがわからなくなり、
(どきどきしているわたしにおじさんはわらいかけた。)
ドキドキしているわたしにおじさんは笑いかけた。
(「さあ。やくそくのおいしいたべものだよ」)
「さあ。約束のおいしい食べ物だよ」
(そういってぬのをとり、つぼのなかにかたほうのてをつっこむ。)
そう言って布を取り、ツボの中に片方の手を突っ込む。
(そしてにくがぶつりとちぎれるかすかなおとがきこえた。)
そして肉がブツリと千切れる微かな音が聞こえた。
(つぼからひきぬかれたそのゆびさきに、どすぐろいなにかがつままれている。)
ツボから引き抜かれたその指先に、どす黒いなにかが摘まれている。
(さしだされたそれをせいしできず、おもわずかおをそむけた。)
差し出されたそれを正視できず、思わず顔を背けた。