未 本編 -1-

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師匠シリーズ
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問題文

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(ししょうからきいたはなしだ。)

師匠から聞いた話だ。

(だいがくいっかいせいのふゆ。ぼくはきたへむかうでんしゃにのっていた。)

大学一回生の冬。僕は北へ向かう電車に乗っていた。

(じゅうにがつにじゅうよっか。くりすますいぶのことだ。)

十二月二十四日。クリスマスイブのことだ。

(れいさいこうしんじょであるおがわちょうさじむしょにもちこまれた)

零細興信所である小川調査事務所に持ち込まれた

(きみょうないらいをひきうけるために、ばいとのかなこさんとそのじょしゅのぼくという、)

奇妙な依頼を引き受けるために、バイトの加奈子さんとその助手の僕という、

(つましいみぶんのふたりで、いつになくとおでをすることになったのだ。)

つましい身分の二人で、いつになく遠出をすることになったのだ。

(しないからしゅっぱつするころにはかなりこんでいたしゃないも、)

市内から出発するころにはかなり混んでいた車内も、

(おおきなえきをとおりすぎるたびにすこしずつひとがへってきた。)

大きな駅を通り過ぎるたびに少しずつ人が減ってきた。

(はじめはごとごととゆれるでんしゃのふたりがけのせきにならんでこしかけ、)

はじめはゴトゴトと揺れる電車の二人賭けの席に並んで腰掛け、

(にもつをそれぞれひざにかかえていたのだが、かんさんとしてきたのをみはからい、)

荷物をそれぞれ膝に抱えていたのだが、閑散としてきたのを見計らい、

(ぼくはあいたむかいのせきにいどうしてにもつをわきにおいた。)

僕は空いた向かいの席に移動して荷物を脇に置いた。

(ぼくをこのたびにかりだしたちょうほんにんであり、おかるとどうのししょうでもある)

僕をこの度に駆り出した張本人であり、オカルト道の師匠でもある

(かなこさんはさっきからいったいいくつめになるのかしれないみかんのかわを)

加奈子さんはさっきから一体いくつ目になるのか知れないみかんの皮を

(しんけんなひょうじょうでむいている。そのよこではまどのさっしにしいたてぃっしゅの)

真剣な表情で剥いている。その横では窓のサッシに敷いたティッシュの

(うえにむかれたかわがちいさなやまをつくっている。)

上に剥かれた皮が小さな山を作っている。

(「いぶにおんせんかぁ」)

「イブに温泉かぁ」

(ほおづえをつき、とくにひょうじょうをこめずにぼくがそうつぶやくと、そのししょうはみかんの)

頬杖をつき、特に表情を込めずに僕がそう呟くと、その師匠はみかんの

(ひょうめんのしろいせんいをちぎれないようにしんちょうにはがしながらかおをあげた。)

表面の白い繊維を千切れないように慎重に剥がしながら顔を上げた。

(「いぶってのはにちぼつからしんやにじゅうよんじまでのことだ。)

「イブってのは日没から深夜二十四時までのことだ。

(にじゅうよっかのひるまはくりすますいぶじゃない」)

二十四日の昼間はクリスマスイブじゃない」

など

(「ほんとうですか」)

「本当ですか」

(「ひゃっかじてんでしらべてみるか」)

「百科事典で調べてみるか」

(ししょうはそういってわらった。)

師匠はそう言って笑った。

(きょうはてんきがいい。)

今日は天気がいい。

(それでもやまはだや、はたけ。すいろ。あぜみち。そうでんせん。そしてかわらやね。)

それでも山肌や、畑。水路。あぜ道。送電線。そして瓦屋根。

(ながれるようにすぎさっていくけしきには、さむざむとしたふゆのいろあいがこい。)

流れるように過ぎ去っていく景色には、寒々とした冬の色合いが濃い。

(こんかいのいらいは、いぜんおかるとじみたじけんをかいけつしてもらっていらい、)

今回の依頼は、以前オカルトじみた事件を解決してもらって以来、

(ししょうのしんぱになってしまったという、)

師匠のシンパになってしまったという、

(あるろうふじんのくちききでころがりこんできたものだった。)

ある老婦人の口利きで転がり込んできたものだった。

(きたのまちのしがいちからはなれたおんせんりょかんで、このところゆうれいのもくげきだんがあいつぎ、)

北の街の市街地から離れた温泉旅館で、このところ幽霊の目撃談が相次ぎ、

(えいぎょうにししょうがでているというのだ。)

営業に支障がでているというのだ。

(そんなものは、かりにほんものだとしても、いや、がせだったとしても、)

そんなものは、仮に本物だとしても、いや、ガセだったとしても、

(どちらにせよじもとのじんじゃやおてらにおねがいしてはらってもらえばすむはなしだろう。)

どちらにせよ地元の神社やお寺にお願いして祓ってもらえば済む話だろう。

(ところがそれがまったくこうかがないらしいのだ。)

ところがそれがまったく効果がないらしいのだ。

(それももくげきされるゆうれいというのがもんだいだった。)

それも目撃される幽霊というのが問題だった。

(「かんぬし?」)

「神主?」

(「そう。かんぬしのかっこうしてるんだと」)

「そう。神主の格好してるんだと」

(ししょうはみかんにこびりついたしろいせんいをすべてとりさってなお、)

師匠はみかんにこびりついた白い繊維をすべて取り去ってなお、

(まだのこっていないかと、じろじろとみまわしながらこたえた。)

まだ残っていないかと、じろじろと見回しながら答えた。

(「ちいさなおんせんがいだ。そのあたりにあるのもわかみやじんじゃっていういっしゃだけ。)

「小さな温泉街だ。そのあたりにあるのも若宮神社っていう一社だけ。

(れきしはあるみたいで、)

歴史はあるみたいで、

(せんぞだいだいいちぞくでかんぬしをひきついできてるんだけど・・・・・」)

先祖代々一族で神主を引き継いできてるんだけど・・・・・」

(「そのじんじゃのごせんぞさまがばけてでてるんですか。おんせんりょかんに」)

「その神社のご先祖様が化けて出てるんですか。温泉旅館に」

(「そこなんだよ。りゆうがわからないんだ。ばしょもあるいてし、ごじゅっぷんくらいは)

「そこなんだよ。理由がわからないんだ。場所も歩いて四、五十分くらいは

(はなれてるらしいし、どうしてわざわざりょかんのほうへでてくるのか」)

離れてるらしいし、どうしてわざわざ旅館の方へ出てくるのか」

(「なにかいんねんがあるんでしょうかね」)

「なにか因縁があるんでしょうかね」

(「それがりょかんのほうにも、じんじゃのほうにもぜんぜんこころあたりがないらしい。)

「それが旅館の方にも、神社の方にも全然心当たりがないらしい。

(せきにんをかんじていまのぐうじがかなりほんかくてきにおはらいをやったらしいんだけど、)

責任を感じて今の宮司がかなり本格的にお祓いをやったらしいんだけど、

(こうかなし。いぜんとしてよなかにりょかんのなかをかりぎぬにえぼし、)

効果なし。依然として夜中に旅館の中を狩衣に烏帽子、

(はかますがたのゆうれいがさまよってるんだとさ」)

袴姿の幽霊がさまよってるんだとさ」

(しんしょくのふくそうってのはおもにさんしゅるいにわけられる、といいながらししょうは)

神職の服装ってのは主に三種類に分けられる、と言いながら師匠は

(てぃっしゅのなかからてごろなみかんのかわをつまみだした。)

ティッシュの中から手ごろなみかんの皮を摘み出した。

(「まず、せいそう。にいなめさいとかのたいさいできるいかんだな。)

「まず、正装。新嘗祭とかの大祭で着る衣冠だな。

(つぎにれいそう。きげんさいとかのちゅうさいできるさいふくだ。これもあたまはかんむり。)

次に礼装。紀元祭とかの中祭で着る斎服だ。これも頭は冠。

(きげんさいとかのちゅうさいできるさいふくだ。これもあたまはかんむり。)

紀元祭とかの中祭で着る斎服だ。これも頭は冠。

(さいごにしょうさい、こうれいしきとかひごろのおつとめできるじょうそう。)

最後に小祭、高齢式とか日ごろのお勤めで着る常装。

(これがかりぎぬにえぼし、はかまってわけ」)

これが狩衣に烏帽子、袴ってわけ」

(ししょうがじゅんばんにゆびをさすみっつならべられたみかんのかわをどれほどみつめても)

師匠が順番に指をさす三つ並べられたみかんの皮をどれほど見つめても

(そんなちがいをかんじとれない。)

そんな違いを感じ取れない。

(「まあ、かんとえぼしはしるえっとでもみためちがうからわかるよ」)

「まあ、冠と烏帽子はシルエットでも見た目違うから分かるよ」

(ではそのにちじょうのかっこうであるつねよそいでばけてでてくるところに)

ではその日常の格好である常装で化けて出てくるところに

(なにかいみがあるのだろうか。)

なにか意味があるのだろうか。

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