舞姫

背景
投稿者投稿者ひなごんいいね0お気に入り登録
プレイ回数9難易度(4.2) 60秒 長文 かな
森鴎外の舞姫のタイピング
句読点とか練習用自分用

関連タイピング

問題文

ふりがな非表示 ふりがな表示

(せきたんをばはやつみはてつ。)

石炭をばはや積み果てつ。

(ちゅうとうしつのつくえのほとりはいとしずかにて、)

中等室の卓のほとりはいと静かにて、

(しちねつとうのひかりのはれがましきもいたづらなり。)

熾熱灯の光の晴れがましきもいたづらなり。

(こよいはよごとにここにつどいくるかるたなかまもほてるにやどりて、)

今宵は夜ごとにここに集ひ来る骨牌仲間もホテルに宿りて、

(ふねにのこれるはよひとりのみなれば。)

船に残れるは余一人のみなれば。

(いつとせまえのことなりしが、ひごろののぞみたりて、ようこうのかんめいをかうむり、)

五年前のことなりしが、平生の望み足りて、洋行の官命をかうむり、

(このせいごんのみなとまでこしごろは、めにみるもの、みみにきくもの、)

このセイゴンの港まで来し頃は、目に見るもの、耳に聞くもの、

(ひとつとしてあらたならぬはなく、ふでにまかせてかきしるしつるきこうぶん、)

一つとして新たならぬはなく、筆に任せて書き記しつる紀行文、

(ひごとにいくせんことをかなしけん、とうじのしんぶんにのせられて、)

日ごとに幾千言をかなしけん、当時の新聞に載せられて、

(よのひとにもてはやされしかど、)

世の人にもてはやされしかど、

(きょうになりておもへば、おさなきしそう、みのほどしらぬほうげん、)

今日になりて思へば、幼き思想、身の程知らぬ放言、

(さらぬもよのつねのどうしょくきんせき、さてはふうぞくなどをさへめずらしげにしるししを、)

さらぬも尋常の動植金石、さてはふうぞくなどをさへ珍しげに記ししを、

(こころあるひとはいかにかみけん。)

心ある人はいかにか見けん。

(こたびはとにあがりしとき、)

こたびは途に上りしとき、

(にきものせんとてかいひしさっしもまだはくしのままなるは、)

日記ものせんとて買ひし冊子もまだ白紙のままなるは、

(どいつにてものまなびせしまに、)

独逸にて物学びせし間に、

(いっしゅのにる、あどみらりいのきしょうをやしないえたりけん、)

一種のニル・アドミラリイの気象をや養ひ得たりけん、

(あらず、これにはべつにゆえあり。)

あらず、これには別に故あり。