ゴーゴリ 狂人日記 - 1

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ニコライ・ゴーゴリ 平井肇訳

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(じゅうがつみっか) 十月三日 (きょうというひにはずいぶんへんなことがあった。) 今日という日にはずいぶん変なことがあった。 (あさ、おきたのはかなりおそかったが、まヴらがながぐつのみがいたのをもってきたとき、) 朝、起きたのはかなり遅かったが、マヴラが長靴の磨いたのを持って来た時、 (いまなんじだときいた。) 今何時だと訊いた。 (すると、もうとっくにじゅうじをうちましたとのこたえに、) すると、もうとっくに十時を打ちましたとの答えに、 (おれはおおいそぎでみじまいをした。) おれは大急ぎで身仕舞いをした。 (しょうじきなところ、やくしょへなんかてんでいきたくはないのだ。) 正直なところ、役所へなんかてんで行きたくはないのだ。 (いけば、きっとかちょうのやつがしぶいつらをしやがるにきまっている。) 行けば、きっと課長の奴が渋い面をしやがるに決まっている。 (やつはもうこのあいだじゅうからおれのかおさえみればこんなことをいいやがるんだ。) 奴はもうこの間じゅうからおれの顔さえ見ればこんなことを言いやがるんだ。 (--「きみはいったいどうしたというんだ、まるであたまがこんらんしてるようじゃないか?) --『君は一体どうしたというんだ、まるで頭が混乱してるようじゃないか?
(どうかすると、どくけにでもあてられたようにふらふらしてるし、) どうかすると、毒気にでもあてられたようにふらふらしてるし、 (ときどき、しょるいのひょうだいにこもじをつかったり、) 時々、書類の表題に小文字を使ったり、 (ひづけやばんごうをぜんぜんいれなかったり、) 日付や番号を全然入れなかったり、 (なにがなにやらさっぱりわけのわからないものにしてしまうじゃないか。」なんて。) 何が何やらさっぱり訳の分からないものにしてしまうじゃないか。』なんて。 (いまいましいあおさぎやろうめ!) 忌々しい蒼鷺野郎め! (ありゃあきっとこのおれがきょくちょうのかんていでおしょさいにすわって、) ありゃあ屹度このおれが局長の官邸でお書斎に坐って、 (かっかのぺんをけずっているのがうらやましいんだろう。) 閣下のペンを削っているのが羨ましいんだろう。 (なあに、おれはあのかいけいがかりにあって、あのけちんぼうやろうをおがみたおして、) なあに、おれはあの会計係に逢って、あのけちん坊野郎を拝み倒して、 (あわよくばなにがしかげっきゅうのまえがりをするあてでもなかったなら、) あわよくばなにがしか月給の前借をするあてでもなかったなら、 (どうしてやくしょへなんぞいってやるものか。) どうして役所へなんぞ行ってやるものか。
など
(ところが、あのかいけいがかりがどうしてどうして、ひとすじなわでいくしろものじゃあないて!) ところが、あの会計係がどうしてどうして、一筋縄で行く代物じゃあないて! (ついぞあんちくしょうがひとつきぶんだってげっきゅうのまえがりをさせたためしがあるかい) ついぞあん畜生が一月分だって月給の前借をさせた例しがあるかい (--それよりゃ、さいごのしんぱんのくるのをまったほうがましなくらいだ。) --それよりゃ、最後の審判の来るのを待った方がましなくらいだ。 (どんなにせがんだって、こちらがいくらこまっていたって、) どんなにせがんだって、こちらがいくら困っていたって、 (--あのしらがあたまのあくまめ、まえがりなんぞさせることじゃない。) --あの白髪頭の悪魔め、前借なんぞさせることじゃない。 (そのくせうちではじぶんとこのりょうりおんなにほおげたをたたかれていくさるのだ。) そのくせうちでは自分とこの料理女に頬桁を叩かれていくさるのだ。 (それはもうせけんでだれひとりしらぬものがない。) それはもう世間で誰ひとり知らぬものがない。 (まったくほんきょくづとめなんてどこがいいだろう。) まったく本局勤めなんてどこがいいだろう。 (--うまいもうけぐちなんかひとつとしてありやしない。) --うまい儲け口なんか一つとしてありやしない。 (そこへいくと、けんちょうだの、くやくしょだの、) そこへ行くと、県庁だの、区役所だの、 (しきんこだのになるとがらりとようすがかわってくる。) 支金庫だのになるとがらりと様子が変って来る。 (たとえば、すみっこのほうにちぢこまるようにして、) 例えば、隅っこの方に縮こまるようにして、 (なにかかきものをしているむさいやすふろっくにくるまったせんせいだが、) 何か書き物をしているむさい安フロックにくるまった先生だが、 (そのごめんそうをみればつばでもひっかけてやりたいくらいだが、) その御面相を見れば唾でもひっかけてやりたいくらいだが、 (どうしてどうして、あれですばらしいべっそうをかりたりしているのだ!) どうしてどうして、あれで素晴らしい別荘を借りたりしているのだ! (こんなせんせいのところへきんぴかのとうじきのちゃわんなんぞもっていくものではない。) こんな先生の所へ金ぴかの陶磁器の茶碗なんぞ持って行くものではない。 (「こりゃあ、まるでちくあんせんせいへのてみやげだね。」とおっしゃる。) 『こりゃあ、まるで竹庵先生への手土産だね。』と仰っしゃる。 (まあもっていくなら、だくうまをにとうとか、だんきつきばしゃをいちだいとか、) まあ持って行くなら、だく馬を二頭とか、弾機付馬車を一台とか、 (それともさんびゃくるーぶりもするらっこのけがわでもしいれていくことだ。) それとも三百ルーブリもする猟虎の毛皮でも仕入れて行くことだ。 (みかけはまことにものしずかでくちのききかたなどもまことにやさしく、) 見かけは誠に物静かで口のきき方なども誠にやさしく、 (「ぺんをけずるないふをちょっとはいしゃくいたしたいのでございますが。」) 『ペンを削るナイフをちょっと拝借致したいのでございますが。』 (などというちょうしなんだが、これがどうして、) などという調子なんだが、これがどうして、 (なにかたのみこんでくるせいがんにんとみれば、) 何か頼みこんで来る請願人と見れば、 (きれいにむいてしんいいちまいにしてしまうのだ。) きれいに剥いて襯衣一枚にしてしまうのだ。 (もっともそのかわりこちとらのつとめむきはじょうひんなもので、) 尤もその代わりこちとらの勤めむきは上品なもので、 (ばんじにかけてせいけつなことはこんりんざい、けんちょうなどではみられたものでなく、) 万事にかけて清潔なことは金輪際、県庁などでは見られたものでなく、 (てーぶるはまほがにいせいだし、うわやくだってみんな、「あなた」ことばだ・・・・・・。) テーブルはマホガニイ製だし、上役だってみんな、『あなた』言葉だ……。 (まったくしょうじきなところ、つとめでもこのとおりじょうひんでなかったら、) まったく正直なところ、勤めでもこの通り上品でなかったら、 (おれはとっくのむかしにやくしょなんかしりぞいてしまっているんだが。) おれはとっくの昔に役所なんか退いてしまっているんだが。
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