『妖怪博士』江戸川乱歩9
○少年探偵団シリーズ第3作品『妖怪博士』
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順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | ヌオー | 5778 | A+ | 6.1 | 94.4% | 751.8 | 4614 | 270 | 100 | 2024/12/16 |
2 | baru | 4180 | C | 4.6 | 90.4% | 1001.2 | 4678 | 492 | 100 | 2024/11/29 |
3 | nao@koya | 3495 | D | 3.6 | 95.0% | 1268.1 | 4678 | 245 | 100 | 2024/12/17 |
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問題文
(おかあさんはこわいのもわすれて、ねまきのままおき)
お母さんは怖いのも忘れて、寝巻のまま起き
(あがって、そっとろうかへでてみました。だいぶぶんの)
上がって、ソッと廊下へ出てみました。 大部分の
(でんとうはけしてしまっているので、ろうかのむこうがわは、)
電灯は消してしまっているので、廊下の向こう側は、
(まっくらでみとおしもききません。でも、そのくらやみの)
真っ暗で見通しもききません。でも、その暗闇の
(なかに、なにかしらにんげんらしいくろいかげが、ゆっくりうごいて)
中に、何かしら人間らしい黒い影が、ゆっくり動いて
(いるのが、かすかにみえるではありませんか。)
いるのが、かすかに見えるではありませんか。
(おかあさんはぎょっとして、いまにもさけびごえをたてそうに)
お母さんはギョッとして、今にも叫び声をたてそうに
(なりましたが、もしそんなことをしてぞくがはむかって)
なりましたが、もしそんなことをして賊が歯向かって
(きてはいけないと、のどまででたこえをかみころし、)
きてはいけないと、のどまで出た声を噛み殺し、
(なおもそのひとかげをじっとみました。すると、めが)
なおもその人影をジッと見ました。 すると、目が
(なれるにつれて、くらやみのなかでもすこしずつもののかたちが)
馴れるにつれて、暗闇の中でも少しずつ物の形が
(みわけられるようになり、あやしいひとかげのおおきさや)
見分けられるようになり、怪しい人影の大きさや
(りんかくがわかってきました。「おや、たいちゃんじゃ)
輪郭が分かってきました。「おや、タイちゃんじゃ
(ない」いかにも、そのあやしいじんぶつはじゅうに、さんさいのせたけで、)
ない」 いかにも、その怪しい人物は十二、三歳の背丈で、
(うしろすがたがたいじくんとそっくりにみえました。さっき、)
後ろ姿が泰二君とソックリに見えました。 さっき、
(おかあさんはたいじくんをしばりましたが、むろん、まねごとで)
お母さんは泰二君をしばりましたが、無論、真似事で
(ろーぷをまいただけですので、とこうとおもえばたいじくん)
ロープを巻いただけですので、とこうと思えば泰二君
(じしんで、やすやすととけるのです。おかあさんは、)
自身で、やすやすととけるのです。 お母さんは、
(それがたいじくんにちがいないとわかると、どろぼうにはいられた)
それが泰二君に違いないと分かると、泥棒に入られた
(よりも、もっとおそろしくかんじました。いよいよ、)
よりも、もっと恐ろしく感じました。いよいよ、
(たいじくんのあたまがくるったのではないか。なにかのあくまに)
泰二君の頭が狂ったのではないか。なにかの悪魔に
(みいられたのではないか、とおもったのです。そこで、)
魅入られたのではないか、と思ったのです。 そこで、
(おかあさんはあしおとをしのばせてそっと、そのくろいかげに)
お母さんは足音を忍ばせてソッと、その黒い影に
(ちかづき「たいちゃん、たいちゃん」と、こごえでよび)
近づき「タイちゃん、タイちゃん」と、小声で呼び
(ました。そこまでちかづいてみると、もうまぎれも)
ました。 そこまで近づいてみると、もう紛れも
(なく、そのあやしいじんぶつはたいじくんでした。それなのに、)
なく、その怪しい人物は泰二君でした。それなのに、
(いくらこえをかけても、まるでみみがきこえないひとにでも)
いくら声をかけても、まるで耳が聞こえない人にでも
(なったように、へんじもしなければ、ふりむくことも)
なったように、返事もしなければ、振り向くことも
(ないのです。そしてぐんぐんとろうかをすすんで、)
ないのです。 そしてグングンと廊下を進んで、
(おとうさんのようしつのしょさいのまえまでくると、いきなり)
お父さんの洋室の書斎の前まで来ると、いきなり
(そのどあをひらいて、なかへはいっていくでは)
そのドアをひらいて、中へ入って行くでは
(ありませんか。おかあさんはあまりのきみわるさに、)
ありませんか。 お母さんは余りの気味悪さに、
(もうこえをかけるゆうきもなく、どあのそとからわがこの)
もう声をかける勇気もなく、ドアの外から我が子の
(しぐさをじっとみつめるしかありません。しょさいにはいった)
仕草をジッと見つめるしかありません。書斎に入った
(たいじくんは、まずかべのすいっちをおしてでんとうをつけ、)
泰二君は、まず壁のスイッチを押して電灯をつけ、
(それからわきめもふらずにへやのいっぽうのすみへ、あるいて)
それから脇目もふらずに部屋の一方の隅へ、歩いて
(いきます。おかあさんは、ふとたいじくんがむゆうびょうに)
行きます。 お母さんは、ふと泰二君が夢遊病に
(かかったのではないか、とうたがいました。むゆうびょうという)
かかったのではないか、と疑いました。夢遊病という
(のは、ねむっているあいだにじぶんではすこしもしらず、)
のは、ねむっている間に自分では少しも知らず、
(ねどこからぬけだして、そのへんをあるきまわるびょうき)
寝床から抜け出して、そのへんを歩きまわる病気
(なのですが、たいじくんがちゅうにめをすえて、ふらふらと)
なのですが、泰二君が宙に目をすえて、フラフラと
(あるいていくようすは、なんとなくそのむゆうびょうらしく)
歩いて行く様子は、なんとなくその夢遊病らしく
(おもわれるのです。たいじくんは、おとうさんのおおきなつくえの)
思われるのです。 泰二君は、お父さんの大きな机の
(まえにちかづくと、そのあしをえぐってつくってある)
前に近づくと、その足をえぐって作ってある
(ひみつのひきだしをあけて、ひとつのかぎたばをとりだし)
秘密の引き出しをあけて、一つのカギ束を取り出し
(ました。それから、そのかぎたばをみぎてにぶらさげた)
ました。それから、そのカギ束を右手にぶらさげた
(まま、またむゆうびょうしゃのようなあるきかたで、いっぽうのすみに)
まま、また夢遊病者のような歩き方で、一方の隅に
(あるこうてつせいのおおきなしょるいばこのところへいき、そのまえに)
ある鋼鉄製の大きな書類箱の所へ行き、その前に
(しゃがんで、てにしたかぎをそこのかぎあなへさし)
しゃがんで、手にしたカギをそこのカギ穴へ差し
(こみ、くもなくしょるいばこのふたをあけてしまいました。)
込み、苦もなく書類箱のフタをあけてしまいました。
(それをみているおかあさんは、もうきがきでは)
それを見ているお母さんは、もう気が気では
(ありません。いま、たいじくんがひらいたしょるいばこのなかには、)
ありません。今、泰二君がひらいた書類箱の中には、
(かいしゃのたいせつなきみつぶんしょがおさめてあるのです。いや、)
会社の大切な機密文書が収めてあるのです。いや、
(それだけではありません。このきみつぶんしょが、もし)
それだけではありません。この機密文書が、もし
(すぱいのてにでもはいるようなことがあれば、くににも)
スパイの手にでも入るようなことがあれば、国にも
(たいへんなししょうをきたすことになるのです。たいじくんの)
大変な支障をきたすことになるのです。 泰二君の
(おとうさんはとうようせいさくがいしゃという、おおきなせいぞうこうじょうの)
お父さんは東洋製作会社という、大きな製造工場の
(ぎしちょうをしているのですが、そのこうじょうでせいぞうしている)
技師長をしているのですが、その工場で製造している
(きかいのぶひんのせっけいずとかみつもりしょ、ちゅうもんすうりょう、)
機械の部品の設計図とか見積もり書、注文数量、
(ひきわたしきじつなどをしょうさいにしるしたしょるいが、ちょうど)
引き渡し期日などを詳細に記した書類が、ちょうど
(いま、おとうさんのてもとにきていて、そのきんこのような)
今、お父さんの手元に来ていて、その金庫のような
(しょるいいれのなかにたいせつにほかんされているのです。)
書類入れの中に大切に保管されているのです。
(おとうさんはかんさいへしゅっちょうするときにも、あれはかいしゃ)
お父さんは関西へ出張する時にも、あれは会社
(だけのひみつではなくて、くにのひみつなのだからじゅうぶんちゅうい)
だけの秘密ではなくて、国の秘密なのだから充分注意
(するように、といいのこしてしゅっぱつしたほどです。)
するように、と言い残して出発したほどです。
(でも、たとえどろぼうがはいっても、そのこうてつばこをひらく)
でも、例え泥棒が入っても、その鋼鉄箱をひらく
(かぎは、おおきなつくえのあしのひみつのかくしばしょにしまって)
カギは、大きな机の足の秘密の隠し場所にしまって
(あるのですから、まさかそれをみつけられることは)
あるのですから、まさかそれを見つけられることは
(ないだろうと、おかあさんもきをゆるしていたのでした。)
ないだろうと、お母さんも気を許していたのでした。
(ところが、どろぼうはそとからではなく、いえのなかにいた)
ところが、泥棒は外からではなく、家の中に居た
(のです。しかも、おとうさんとおかあさんがいちばんあいして)
のです。しかも、お父さんとお母さんが一番愛して
(いるたいじくんなのですから、つくえのあしのひみつもしって)
いる泰二君なのですから、机の足の秘密も知って
(おり、こうてつばこをあけるのはなんのぞうさもないのです。)
おり、鋼鉄箱をあけるのは何の造作もないのです。
(それにしても、たいじくんはきでもくるったのでしょうか。)
それにしても、泰二君は気でも狂ったのでしょうか。
(まるでどろぼうのように、まよなかにそっとおきだして、)
まるで泥棒のように、真夜中にソッと起きだして、
(しょさいにしのびこみ、おとうさんのたいせつなしょるいばこをひらく)
書斎に忍び込み、お父さんの大切な書類箱をひらく
(なんて、まったくかんがえもおよばないおそろしいしわざでは)
なんて、まったく考えも及ばない恐ろしい仕業では
(ありませんか。これにはきっと、なにかふかいわけがある)
ありませんか。これにはきっと、何か深い訳がある
(のです。そのかげに、「ようまののろい」というような)
のです。その陰に、「妖魔の呪い」というような
(ものが、ひそんでいるにちがいありません。やがて)
ものが、ひそんでいるに違いありません。 やがて
(たいじくんは、とうとうしょるいばこのひきだしのなかから、)
泰二君は、とうとう書類箱の引き出しの中から、
(そのきみつしょるいをつかみだしました。そしてもとどおり、)
その機密書類をつかみだしました。そして元通り、
(こうてつばこのふたをしめ、かぎたばをひみつのかくしばしょに)
鋼鉄箱のフタを閉め、カギ束を秘密の隠し場所に
(かえし、すいっちをおしてでんとうをけすと、なにごとも)
返し、スイッチを押して電灯を消すと、何事も
(なかったかのように、またむゆうびょうしゃのあるきかたで、)
なかったかのように、また夢遊病者の歩き方で、
(しょさいからでてくるのです。おかあさんは、もうじっと)
書斎から出て来るのです。 お母さんは、もうジッと
(しているわけにはいきませんでした。ちからずくでも)
している訳にはいきませんでした。力ずくでも
(しょるいをうばいかえそうと、いきなりたいじくんのゆくてに)
書類を奪い返そうと、いきなり泰二君のゆく手に
(たちふさがり、「たいちゃん、おまえ、なにをするん)
立ちふさがり、「タイちゃん、お前、何をするん
(です」と、はげしいごきでしかりました。)
です」と、激しい語気でしかりました。
(「bdばっじ」)
「bdバッジ」
(「たいちゃん、しっかりしなさい。おまえ、ゆめでも)
「タイちゃん、しっかりしなさい。お前、夢でも
(みたんじゃないの。それ、なんだとおもっているの。)
見たんじゃないの。それ、なんだと思っているの。
(おとうさんのたいせつなしょるいじゃありませんか。さ、おかえし)
お父さんの大切な書類じゃありませんか。さ、お返し
(なさい。それがわるいひとのてにわたったら、それこそたいへん)
なさい。それが悪い人の手に渡ったら、それこそ大変
(なんだから」しかし、さいみんじゅつのまりょくによって、)
なんだから」 しかし、催眠術の魔力によって、
(べつじんのようになったたいじくんは、おかあさんにみむきも)
別人のようになった泰二君は、お母さんに見向きも
(しなければ、そのことばをきこうともせず、おしのける)
しなければ、その言葉を聞こうともせず、押しのける
(ようにして、ぐんぐんろうかのむこうへたちさろうと)
ようにして、グングン廊下の向こうへ立ち去ろうと
(します。「これ、たいちゃん、たいちゃんたら」)
します。「これ、タイちゃん、タイちゃんたら」