巨人の研究 -12-

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師匠シリーズ
以前cicciさんが更新してくださっていましたが、更新が止まってしまってしまったので、続きを代わりにアップさせていただきます。
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問題文

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(さいしょにかかったえものはずぼんにしゃつをいれた、さえないがくせいふうのおとこ。)

最初に掛かった獲物はズボンにシャツを入れた、冴えない学生風の男。

(「あ、そこはちぇっくだけでいいですよ~」などとししょうにせかされながら、)

「あ、そこはチェックだけでいいですよ〜」などと師匠にせかされながら、

(にふんもかからずにかいとうしゅうりょう。とくだんゆうれいのたぐいをみたことがなかったらしく、)

二分もかからずに回答終了。特段幽霊の類を見たことがなかったらしく、

(あっさりかいほうされた。)

あっさり解放された。

(あいてはまだはなしたそうだったが、ししょうはきょうみをうしなったかおで、)

相手はまだ話したそうだったが、師匠は興味を失った顔で、

(ふんいきによるばりあをはってそれをげきたいする。)

雰囲気によるバリアを張ってそれを撃退する。

(そんなことをくりかえし、ろくにんめでようやくしんれいげんしょうにそうぐうしたというひとを)

そんなことを繰り返し、六人目でようやく心霊現象に遭遇したという人を

(つかまえる。それもついさいきんちいさいひとをみたという。)

捕まえる。それもつい最近小さい人を見たという。

(わかいだんじょのかっぷるで、じょせいのほうだった。)

若い男女のカップルで、女性の方だった。

(ししょうはここぞとばかりにしつもんをかぶせ、こまかいじょうきょうをききだす。)

師匠はここぞとばかりに質問を被せ、細かい状況を聞き出す。

(りくじょうかなにかをやっているらしく、まだそらもくらいそうちょうにじゅうたくがいで)

陸上かなにかをやっているらしく、まだ空も暗い早朝に住宅街で

(らんにんぐをしていると、ちいさなあしおとがうしろをおいかけてきているような)

ランニングをしていると、小さな足音が後ろを追いかけて来ているような

(けはいがしたそうだ。)

気配がしたそうだ。

(ふりかえると、だれもいない。きのせいかとおもい、まえをむいてはしりだすと、)

振り返ると、誰もいない。気のせいかと思い、前を向いて走り出すと、

(またきこえる。こんどははっきりしたおととして。)

また聞こえる。今度ははっきりした音として。

(こわくなってふりむくと、じぶんのました、あしもとに、のっぺらぼうのような)

怖くなって振り向くと、自分の真下、足元に、のっぺらぼうのような

(ちいさなひとがたのにくかいがすたすたとこばしりについてきていた。)

小さな人型の肉塊がスタスタと小走りについて来ていた。

(かのじょはひめいをあげてぜんりょくでにげだしたが、)

彼女は悲鳴をあげて全力で逃げ出したが、

(しばらくそのあしおとがぴったりとついてきていたそうだ。)

しばらくその足音がぴったりとついて来ていたそうだ。

(そのすたすたといういっていのりずむがかわらないままで。)

そのスタスタという一定のリズムが変わらないままで。

など

(あおざめながらようやくかたりおえたじょせいが、「なにかわるいものに)

青ざめながらようやく語り終えた女性が、「なにか悪いものに

(つかれたりしてるでしょうか」とききかえすと、ししょうはすこしかんがえてからこたえた。)

憑かれたりしてるでしょうか」と訊き返すと、師匠は少し考えてから答えた。

(「だいじょうぶだとおもいますよ。このあんけーとやってても、みにおぼえもないのに)

「大丈夫だと思いますよ。このアンケートやってても、身に覚えもないのに

(おばけをみてそのあとにたたられた、なんてひとはいませんから」)

お化けを見てその後に祟られた、なんて人はいませんから」

(じょせいはむせきにんなそのことばにしゃくぜんとしないかおをしていたが、)

女性は無責任なその言葉に釈然としない顔をしていたが、

(つれのだんせいにもういこうぜとひっぱられていった。)

連れの男性にもう行こうぜと引っ張られて行った。

(ししょうのたいおうはせいかいだろう。まことしやかにれいとはこういうもので、)

師匠の対応は正解だろう。まことしやかに霊とはこういうもので、

(などとかたったり、しんぱいならどこそこのれいのうしゃをたずねろだの、)

などと語ったり、心配ならどこそこの霊能者を訪ねろだの、

(こういうおさつをかえだのといってしまえば、まさにれいかんしょうほうのつかみだと)

こういうお札を買えだのと言ってしまえば、まさに霊感商法の掴みだと

(おもわれて、あんけーとがつづけがたくなるかのうせいがあった。)

思われて、アンケートが続け難くなる可能性があった。

(しかし、ぼくはみていた。そのいっけんむせきにんなかいとうをするまえに、)

しかし、僕は見ていた。その一見無責任な回答をする前に、

(ししょうはそのじょせいのひとみのおくをすかしみるようなめをしたのだ。)

師匠はその女性の瞳の奥を透かし見るような目をしたのだ。

(そのおくにひそむなにかをみつめるように。ししょうはししょうなりにしんしにこたえのだろう。)

その奥に潜むなにかを見つめるように。師匠は師匠なりに真摯に答えのだろう。

(「さあつぎだ」)

「さあ次だ」

(そうしてししょうはたんたんとあんけーとあつめをこなし、ようりょうのわかってきたぼくも)

そうして師匠は淡々とアンケート集めをこなし、要領の分かってきた僕も

(ふたてにわかれてつぎつぎとあーけーどのなかをいくひとびとにこえをかけつづけた。)

二手に分かれて次々とアーケードの中を行く人々に声をかけ続けた。

(けっきょくにじかんはんくらいたったところで「つかれたからこのへんにしよう」と)

結局二時間半くらい経った所で「疲れたからこの辺にしよう」と

(ししょうがいいだし、ぼくもおやくごめんとなった。)

師匠が言い出し、僕もお役御免となった。

(かいしゅうしたあんけーとようしのたばをかぞえるときゅうじゅうにまいあった。)

回収したアンケート用紙の束を数えると九十二枚あった。

(しゅうけいはかえってからするのだろうが、ざっとみたかぎり、しょうにんをみたというかいとうが)

集計は帰ってからするのだろうが、ざっと見た限り、小人を見たという回答が

(すくなくともろっけんはあった。それもすべてさいきんのはなしだった。)

少なくとも六件はあった。それもすべて最近の話だった。

(きゅうじゅうにぶんのろくというのがどのほどたいみをもつすうじなのかわからないが、)

九十二分の六というのがどの程度意味を持つ数字なのか分からないが、

(しんれいげんしょうにそうぐうしたことがあるというひとじたいがおそらくぜんたいのはんぶんいかだった)

心霊現象に遭遇したことがあるという人自体が恐らく全体の半分以下だった

(はずなので、そのなかでのろっけんとかんがえるとじゅうぶんおおいきがした。)

はずなので、その中での六件と考えると十分多い気がした。

(しんれいげんしょうときいておもいうかぶのは、ふつうはゆうれいやしんれいしゃしん、らっぷおん)

心霊現象と聞いて思い浮かぶのは、普通は幽霊や心霊写真、ラップ音

(などだろう。これほどこびとのもくげきがさいきんになってふえているというのは、)

などだろう。これほど小人の目撃が最近になって増えているというのは、

(いったいどういうことなのか。)

一体どういうことなのか。

(「おい。ぼうっとすんな。おわったらさっさとひきあげだ」)

「おい。ぼうっとすんな。終わったらさっさと引き上げだ」

(ししょうにせかされて、またこうしゅうといれにむかう。)

師匠にせかされて、また公衆トイレに向かう。

(ぬぎおわるとそれらをすべてだんぼーるにおしこんだ。)

脱ぎ終わるとそれらをすべて段ボールに押し込んだ。

(そのふたをしようとしたときに、ふとてがとまりへんにかんがいぶかいおもいにかられる。)

その蓋をしようとした時に、ふと手が止まり変に感慨深い思いに駆られる。

(たかがかいだんばなしをきくのに、ここまでしようというもちべーしょんが)

たかが怪談話を聞くのに、ここまでしようというモチベーションが

(ししょうにはある。そこはいまのぼくにはかくじつにかけているところだろう。)

師匠にはある。そこは今の僕には確実に欠けているところだろう。

(けれどそのししょうのこうどうをおもうと、ふしぎとむねがたかなるじぶんがいる。)

けれどその師匠の行動を思うと、不思議と胸が高鳴る自分がいる。

(なにをするか、みていたい。そうおもうのだ。)

なにをするか、見ていたい。そう思うのだ。

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