葬儀記 1
| 順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | ミッチャンズ | 8443 | 神 | 8.9 | 94.9% | 347.6 | 3101 | 166 | 51 | 2026/07/18 |
| 2 | HAKU | 7633 | 神 | 7.7 | 98.5% | 60.0 | 465 | 7 | 8 | 2026/07/10 |
| 3 | omochi | 7466 | 光 | 7.6 | 98.0% | 60.0 | 457 | 9 | 7 | 2026/07/03 |
| 4 | mmm | 3722 | D+ | 4.0 | 93.2% | 780.9 | 3133 | 226 | 51 | 2026/07/16 |
| 5 | ジェームス | 1185 | G+ | 1.2 | 97.2% | 2541.9 | 3099 | 86 | 51 | 2026/07/17 |
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問題文
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(はなれででんわをかけて、しわくちゃになったふろっくのそでをきにしながら、)
離れで電話をかけて、皺くちゃになったフロックの袖を気にしながら、
(げんかんへくると、だれもいない。きゃくまをのぞいたら、)
玄関へ来ると、誰もいない。客間を覗いたら、
(おくさんがだれだかのくろのもんつきをきたひととはなしていた。そことしょさいのさかいには、)
奥さんが誰だかの黒の紋付を着た人と話していた。そこと書斎の堺には、
(さっきまでひつぎのうしろにたててあった、しろいびょうぶがたっている。)
さっきまで柩の後に立ててあった、白い屏風が立っている。
(どうしたのかとおもって、しょさいのほうへいくと、)
どうしたのかと思って、書斎の方へ行くと、
(いりぐちのところにわつじさんやなにかがにさんにんかたまっていた。なかにももちろんおおぜいいる)
入口の所に和辻さんや何かが二三人かたまっていた。中にももちろん大ぜいいる
(ちょうどみなが、せんせいのしにがおに、さいごのわかれをおしんでいるときだったのである。)
丁度皆が、先生の死顔に、最後の別れを惜しんでいる時だったのである。
(ぼくは、おかだくんのあとについて、じぶんのでばんがくるのをまっていた。)
僕は、岡田君のあとについて、自分の出番が来るのを待っていた。
(もうあかるくなったがらすどのそとには、しもよけのわらをきたばしょうが、)
もう明るくなった硝子戸の外には、霜よけの藁を着た芭蕉が、
(なんぼんものきちかくならんでいる。しょさいでおつやをしていると、)
何本も軒近くならんでいる。書斎でお通夜をしていると、
(いつもこのばしょうがいちばんはやく、うすぐらいなかからうきあがってきた。)
いつもこの芭蕉が一番早く、薄暗い中からうき上がって来た。
(ーそんなことをぼんやりかんがえているうちに、やがてひとがへって)
ーそんなことをぼんやり考えているうちに、やがて人が減って
(しょさいのなかへはいれた。しょさいのなかには、でんとうがついていたのか、)
書斎の中へはいれた。書斎の中には、電灯がついていたのか、
(それともろうそくがついていたのか、それはおぼえていない。)
それとも蝋燭がついていたのか、それは覚えていない。
(が、なんでも、がいこうだけではなかったようである。ぼくはみょうにあらたまったこころもちで、)
が、何でも、外光だけではなかったようである。僕は妙に改まった心もちで、
(なかへはいった。そうして、おかだくんがれいをしたあとで、ひつぎのまえへいった。)
中へはいった。そうして、岡田君が礼をした後で、柩の前へ行った。
(ひつぎのがわには、まつねさんがたっている。そうしてみぎのてをたいらにして、)
棺の側には、松根さんが立っている。そうして右の手を平らにして、
(それをうすでもひくときのようにうごかしている。れいをしたら、)
それを臼でも挽く時のように動かしている。礼をしたら、
(じゅんじゅんにひつぎのあとをまわって、でていってくれというあいずだろう。)
順々に棺の後を廻って、出て行ってくれという合図だろう。
(ひつぎはねかんである。のせてあるだいはさんじゃくばかりしかない。そばにたつと、)
棺は寝棺である。のせてある台は三尺ばかりしかない。側に立つと、
など
(めとはなのあいだに、なかがみくだされた。なかには、ほそくきざんだかみに)
眼と鼻の間に、中が見下された。中には、細くきざんだ紙に
(なむあみだぶつとかいたのが、ゆきのようにふりまいてある。)
南無阿弥陀仏と書いたのが、雪のようにふりまいてある。
(せんせいのかおは、なかばほおをそのかみのなかにうずめながら、しずかにめをつぶっていた。)
先生の顔は、半ば頬をその紙の中に埋めながら、静かに目をつぶっていた。
(ちょうどろうででもつくった、めんがたのようなかんじである。)
丁度蝋ででも作った、面型のような感じである。
(りんかくは、せいぜんとすこしもちがわない。が、どこかようすがちがう。)
輪郭は、生前と少しもちがわない。が、どこか容子がちがう。
(くちびるのいろがくろずんでいたり、かおいろがかわっていたりするいがいに、)
唇の色が黒ずんでいたり、顔色が変わっていたりする以外に、
(どこかちがっているところがある。ぼくはそのまえで、ほとんどむかんどうにれいをした。)
どこかちがっている所がある。僕はその前で、ほとんど無感動に礼をした。
(「これはせんせいじゃない」そんなきがつよくした。)
「これは先生じゃない」そんな気が強くした。
((これははじめから、そうであった。げんにいまでもぼくはこちょうなしに)
(これは始めから、そうであった。現に今でも僕は誇張なしに
(せんせいがいきているようなきがしてしかたがない)ぼくは、ひつぎのまえにいちにふんたっていた)
先生が生きているような気がして仕方がない)僕は、柩の前に一二分立っていた
(それから、まつねさんのあいずどおり、あとのひとにかわって、しょさいのそとへでた。)
それから、松根さんの合図通り、後の人に代わって、書斎の外へ出た。
(ところが、そとへでると、きゅうにまたせんせいのかおがみたくなった。)
ところが、外へ出ると、急にまた先生の顔が見たくなった。
(なんだかよくみてくるのをわすれたようなこころもちがする。そうして、)
なんだかよく見て来るのを忘れたような心もちがする。そうして、
(それがとりかえしのつかない、ばかなことだったようなこころもちがする。)
それが取り返しのつかない、莫迦な事だったような心もちがする。
(ぼくはよっぽど、もういちどいこうかとおもった。が、なんだかそれがはずかしかった。)
僕はよっぽど、もう一度行こうかと思った。が、なんだかそれが恥かしかった。
(それにかんじょうをこちょうしているようなきも、すこしはした。「もうしかたがない」)
それに感情を誇張してしているような気も、少しはした。「もう仕方がない」
(ーそうおもってとうとうやめにした。そうしたら、いやにかなしくなった。)
ーそう思ってとうとうやめにした。そうしたら、いやに悲しくなった。
(そとへでると、まつおかが「よくみてきたか」という。ぼくは、「うん」とこたえながら、)
外へ出ると、松岡が「よく見てきたか」と言う。僕は、「うん」と答えながら、
(うそをついたようなきがして、ふかいだった。)
嘘をついたような気がして、不快だった。
(あおやまのさいじょうへいったら、もやがまったくはれて、はのないさくらのこずえに)
青山の斎場へ行ったら、靄が完く晴れて、葉のない桜の梢に
(もうあさひがさしていた。したからみると、そのさくらのえだが、)
もう朝日がさしていた。下から見ると、その桜の枝が、
(ちょうどてつもうのようにこまかくそらをかがっている。)
丁度鉄網のように細かく空をかがっている。
(ぼくたちはそのしたにしいたむしろのうえをあるきながら、みんな、からだをそらせて、)
僕たちはその下に敷いた蓆の上を歩きながら、みんな、体を反らせて、
(「やっとめがさめたようなきがする」といった。)
「やっと眼がさめたような気がする」と言った。
(さいじょうは、しょうがっこうのきょうしつとおてらのほんどうとを、ひとつにしたようなけんちくである。)
斎場は、小学校の教室とお寺の本堂とを、一つにしたような建築である。
(まるいはしらや、りょうほうのがらすまどが、はなはだみすぼらしい。)
丸い柱や、両方の硝子窓が、はなはだみすぼらしい。
(しょうめんにはいちだんたかいところがあって、そのうえにしゅぬりのきょくろくがみっつすえてある。)
正面には一段高い所があって、そのうえに朱塗りの曲禄が三つ据えてある。
(それが、そのしたに、いちめんにならべてあるあんちょくないすと、みょうなたいしょうをつくっていた。)
それが、その下に、一面に並べてある安直な椅子と、妙な対照をつくっていた。
(「このきょくろくを、しょさいのいすにしたら、おもしろいぜ」)
「この曲禄を、書斎の椅子にしたら、面白いぜ」
(ーぼくはくめにこんなことをいった。くめはきょくろくのあしをなでながら、)
ー僕は久米にこんなことを言った。久米は曲禄の足をなでながら、
(うんとかなんとかいいかげんなへんじをしていた。)
うんとか何とかいい加減な返事をしていた。