田山花袋「少女病」 2
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問題文
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(このおとこのすがたのこのたんぼみちにあらわれだしたのは、いまからふたつきほどまえ、)
この男の姿のこの田畝道にあらわれ出したのは、今からふた月ほど前、
(きんこうのちがひらけて、あたらしいかさくがかなたのもりのかど、)
近郊の地が開けて、新しい家作がかなたの森の角、
(こなたのおかのうえにできあがって、)
こなたの丘の上にでき上がって、
(ぼうしょうしょうのていたく、ぼうかいしゃじゅうやくのていたくなどのおおきなかまえが、)
某少将の邸宅、某会社重役の邸宅などの大きな構えが、
(むさしののなごりのくぬぎのおおなみきのあいだから)
武蔵野のなごりの櫟の大並木の間から
(ちらちらとえのようにみえるころであったが、)
ちらちらと画のように見えるころであったが、
(そのくぬぎのなみきのかなたに、かしやだてのかおくがご、ろっけんならんであるというから、)
その櫟の並木のかなたに、貸家建ての家屋が五、六軒並んであるというから、
(なんでもそこらにいてんしてきたひとだろうとのもっぱらのひょうばんであった。)
なんでもそこらに移転して来た人だろうとのもっぱらの評判であった。