『六月のアパート』303号室
『六月のアパート』303号室/tokumei-kibou
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問題文
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(さんどめのあらーむがなった。)
三度目のアラームが鳴った。
(めをさましたくない。)
目を覚ましたくない。
(きょうもきっと、きのうとなにもかわらないのだから。)
今日もきっと、昨日と何も変わらないのだから。
(なまえもしらないひとにあいさつをして、)
名前も知らない人に挨拶をして、
(きかいのようにおなじさぎょうをくりかえして、)
機械のように同じ作業を繰り返して、
(そこにいるとわかっているのにきらいなやつにあいにいく。)
そこにいるとわかっているのに嫌いなやつに会いに行く。
(ゆめなんてとっくのむかしになくしてしまった。)
夢なんてとっくの昔に失くしてしまった。
(てれびにうつるしあわせがまぶしい。)
テレビに映る幸せが眩しい。
(かといってふこうをみたいわけでもない。)
かと言って不幸を見たいわけでもない。
(かのじょがいなくなったくわしいりゆうはしらない。)
彼女がいなくなった詳しい理由は知らない。
(それでも、なんとなくぼくにはわかる。)
それでも、なんとなく僕にはわかる。
(にげることははじではない。)
逃げることは恥ではない。
(そうあたまでりかいしていてもできないのは、)
そう頭で理解していてもできないのは、
(にげたしゅんかんにせけんからぜっこうされるとこころがしっているからだ。)
逃げた瞬間に世間から絶交されると心が知っているからだ。
(まるでさいしょからそこにいなかったみたいに、)
まるで最初からそこにいなかったみたいに、
(めいぼにしゃせんがひかれるどころか、)
名簿に斜線が引かれるどころか、
(じぶんのなまえがはいっていないあたらしいめいぼがいんさつされる。)
自分の名前が入っていない新しい名簿が印刷される。
(それでも、いきろ。って、)
それでも、「生きろ。」って、
(おまえらはなにもしらないくせに。)
お前らは何も知らないくせに。
(そんざいしょうめいをしつづけることはこんなんでくつうだ。)
存在証明をし続けることは困難で苦痛だ。
など
(そんないみのないことをかんがえているうちに)
そんな意味のないことを考えているうちに
(よんどめのあらーむがなった。)
四度目のアラームが鳴った。
(いいかげん、めをさまさないと。)
いい加減、目を覚まさないと。
(かのじょとちがって、ぼくはいきているのだから。)
彼女と違って、僕は生きているのだから。