『六月のアパート』403号室

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『六月のアパート』403号室/tokumei-kibou

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問題文

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(かぜとおしがよく、ひあたりもいい。)

風通しがよく、日当たりもいい。

(いずれこのへやになにもしらないだれかがおとずれ、)

いずれこの部屋に何も知らない誰かが訪れ、

(なにもしらないだれかがじんせいをしょうひし、)

何も知らない誰かが人生を消費し、

(そしてなにもしらないままでていくことになるのだろう。)

そして何も知らないまま出て行くことになるのだろう。

(このへやではなにもなかった。)

この部屋では何もなかった。

(かのじょのしあわせも、ふこうも、とびおりじさつも。)

彼女の幸せも、不幸も、飛び降り自殺も。

(そうおもえてしまうくらい、ここにかのじょはのこっていない。)

そう思えてしまうくらい、ここに彼女は残っていない。

(もしかしたらかのじょもそれをのぞんでいたのかもしれない。)

もしかしたら彼女もそれを望んでいたのかもしれない。

(ろくがつのあのひ、じぶんにまとわりついたすべてのものをたちきって、)

六月のあの日、自分に纏わり付いた全てのものを断ち切って、

(こころにたまったおもたいなにかをすてて、)

心に溜まった重たい何かを捨てて、

(かるくなったかのじょはとんだ。)

軽くなった彼女は飛んだ。

(できるだけとおくへ、だれもしらないばしょまで。)

できるだけ遠くへ、誰も知らない場所まで。

(しろいかーてんがゆれる。)

白いカーテンが揺れる。

(でんしゃのおとがする。)

電車の音がする。

(ひびはつづく。)

日々は続く。

(おわったかのじょをむしして。)

終わった彼女を無視して。

(ひさしぶりにどあがひらいた。)

久しぶりにドアが開いた。

(いいへやですね。)

「いい部屋ですね。」

(まんぞくげにそういったじょせいは、)

満足気にそう言った女性は、

(どこかかのじょとにているきがした。)

どこか彼女と似ている気がした。

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