シャーロック・ホームズの事件簿 高名な依頼人5

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投稿者投稿者大樹野いいね6お気に入り登録
プレイ回数5117難易度(5.0) 5504打 長文
シャーロック・ホームズの事件簿より
長文なので、読書感覚でお楽しみください

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問題文

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(「いったのかい?けさすぐにでかけるとはしごとがはやいね。あでるばーとは)

「行ったのかい?今朝すぐに出かけるとは仕事が速いね。アデルバートは

(こんかいはこうてきしゅにであったね。そとのしょさいはちゅうごくのとうきがおいてあるへやだね、)

今回は好敵手に出会ったね。外の書斎は中国の陶器がおいてある部屋だね、

(ーーまどのあいだにあるおおきながらすのとだなのなかにあるだろう。)

―― 窓の間にある大きなガラスの戸棚の中にあるだろう。

(それで、つくえのうしろのとびらのむこうがおくのしょさいになっているーー)

それで、机の後ろの扉の向こうが奥の書斎になっている ――

(しょるいやらなにやらをいれておくちいさなへやさ」)

書類やら何やらを入れておく小さな部屋さ」

(「どろぼうのしんぱいはしていないのか?」)

「泥棒の心配はしていないのか?」

(「あでるばーとはいくじなしじゃない。いちばんのてきでもあいつをそうは)

「アデルバートは意気地なしじゃない。一番の敵でもあいつをそうは

(よべないさ。あいつはじぶんのことはじぶんでやれる。)

呼べないさ。あいつは自分のことは自分でやれる。

(よるはぼうはんべるがある。それに、どろぼうにとってなにがある、)

夜は防犯ベルがある。それに、泥棒にとって何がある、

(ーーあのこうきゅうとうじきいがいにもっていくものは?」)

―― あの高級陶磁器以外に持っていくものは?」

(「そりゃだめだ」しんうぇる・じょんそんはせんもんかのだんことしたくちょうでいった。)

「そりゃ駄目だ」シンウェル・ジョンソンは専門家の断固とした口調で言った。

(「どんなばいにんもそんなものはほしがらんな。とかすこともうることもできん」)

「どんな売人もそんなものは欲しがらんな。溶かすことも売ることもできん」

(「そうだな」ほーむずはいった。「さて、それでは、みす・うぃんたー、)

「そうだな」ホームズは言った。「さて、それでは、ミス・ウィンター、

(もしあしたのゆうがたごじにここにきてもらえれば、ぼくはそれまでのあいだに、)

もし明日の夕方五時にここに来てもらえれば、僕はそれまでの間に、

(きみのていあんどおりこのじょせいにちょくせつあうというてはずがととのえられるかどうか)

君の提案どおりこの女性に直接会うという手はずが整えられるかどうか

(やってみる。きみのきょうりょくにはこのうえなくかんしゃする。)

やってみる。君の協力にはこの上なく感謝する。

(いうまでもないが、いらいにんはじゅうぶんなしゃれいをかんがえて・・・」)

言うまでもないが、依頼人は十分な謝礼を考えて・・・」

(「そんなものいらない、ほーむずさん」わかいじょせいはさけんだ。)

「そんなものいらない、ホームズさん」若い女性は叫んだ。

(「あたいはかねめあてじゃないんだ。)

「あたいは金目当てじゃないんだ。

(このおとこがどろにまみれるところをみせておくれ。そのためだけにやるのさ、・・・)

この男が泥にまみれるところを見せておくれ。そのためだけにやるのさ、・・・

など

(あいつのいまいましいかおをどろのなかでふんづけられれば、それがあたいのほうしゅうさ。)

あいつの忌々しい顔を泥の中で踏んづけられれば、それがあたいの報酬さ。

(あしたでもいつでもてつだうよ、あんたがあいつをおっているかぎりね。)

明日でもいつでも手伝うよ、あんたがあいつを追っているかぎりね。

(あたいがどこにいるかは、ふとっちょがいつでもしってるよ」)

あたいがどこにいるかは、ふとっちょがいつでも知ってるよ」

(わたしはこれいこう、かれともういちどつぎのひのよる、いつものすとらんどがいの)

私はこれ以降、彼ともう一度次の日の夜、いつものストランド街の

(れすとらんでしょくじをするまでほーむずとあっていなかった。かいだんが)

レストランで食事をするまでホームズと会っていなかった。会談が

(うまくいったかをたずねると、かれはかたをすぼめた。それからかれははなしをしたが、)

上手くいったかを尋ねると、彼は肩をすぼめた。それから彼は話をしたが、

(わたしはそれをつぎのようにさいこうせいしておくことにする。かれのきびしくれいたんな)

私はそれを次のように再構成しておくことにする。彼の厳しく冷淡な

(ひょうげんは、にちじょうせいかつのことばへとすこしやわらかくていせいしておくひつようがある。)

表現は、日常生活の言葉へと少し柔らかく訂正しておく必要がある。

(「めんかいすることにかんしてはなんらもんだいがなかった」ほーむずはいった。)

「面会することに関してはなんら問題がなかった」ホームズは言った。

(「あのじょせいはこんやくでとほうもないおやふこうをしたので、それをあがなおうとして、)

「あの女性は婚約で途方もない親不孝をしたので、それをあがなおうとして、

(どちらでもいいようなことすべてに、じまんたらしくみえすいたおやこうこうを)

どちらでもいいような事全てに、自慢たらしく見え透いた親孝行を

(しているからね。しょうぐんがでんわをかければ、じゅんびはおわりだ。そしてはげしい)

しているからね。将軍が電話をかければ、準備は終わりだ。そして激しい

(みす・うぃんたーはよていどおりにあらわれた。だからごじはん、ろうせんしがすんでいる)

ミス・ウィンターは予定通りに現れた。だから五時半、老戦士が住んでいる

(ばーくれいがい104のそとにわれわれはつじばしゃからおりたった。そこは、きょうかいでさえも)

バークレイ街104の外に我々は辻馬車から降り立った。そこは、教会でさえも

(うわついてみえるようなふるいそうごんなろんどんのだいていたくだった。)

浮ついて見えるような古い荘厳なロンドンの大邸宅だった。

(げぼくがおおきなべーじゅのかーてんがかかったおうせつまにあんないし、)

下僕が大きなベージュのカーテンがかかった応接間に案内し、

(そこでそのじょせいがまっていた。じょうひんぶった、かおいろのわるい、ひしゃこうてきな、)

そこでその女性が待っていた。上品ぶった、顔色の悪い、非社交的な、

(よそよそしくちかよりがたいすがたはやまのうえにつくったせつぞうのようだった」)

よそよそしく近寄り難い姿は山の上に作った雪像のようだった」

(「かのじょについてどうせつめいすればいいかほんとうにわからないよ、わとそん。)

「彼女についてどう説明すればいいか本当に分からないよ、ワトソン。

(じけんがおわるまでにきみがかのじょにあうきかいがあれば、きみのぶんしょうひょうげんのさいのうが)

事件が終わるまでに君が彼女に会う機会があれば、君の文章表現の才能が

(やくにたつだろうな。かのじょはうつくしい。しかしなにかにむちゅうになっている)

役に立つだろうな。彼女は美しい。しかし何かに夢中になっている

(きょうしんしゃのような、げんじつばなれしたべつせかいのうつくしさだった。)

狂信者のような、現実離れした別世界の美しさだった。

(ちゅうせいのだいがかたちのえのなかにそういうかおをみたことがある。)

中世の大画家たちの絵の中にそういう顔を見たことがある。

(いったいどのようにしてこんなうきよばなれしたいきものにけだもののようなおとこが)

いったいどのようにしてこんな浮世離れした生き物にケダモノのような男が

(そのまえあしをかけられたのか、そうぞうもできんな。せいじんとけだもの、せっきじんとてんし、)

その前足を掛けられたのか、想像もできんな。聖人とケダモノ、石器人と天使、

(いかにりょうきょくたんがよびあうかは、きみもすでにしっているかもしれないが、)

いかに両極端が呼び合うかは、君もすでに知っているかもしれないが、

(これいじょうにむざんなじょうきょうはぜったいにみたことがないはずだ」)

これ以上に無残な状況は絶対に見たことがないはずだ」

(「かのじょはなにのようできたかしっていた。もちろん、あのあくとうがかのじょに)

「彼女は何の用で来たか知っていた。もちろん、あの悪党が彼女に

(こちらのわるくちをふきこむのにぬかりのあるはずがなかった。)

こちらの悪口を吹き込むのに抜かりのあるはずがなかった。

(みす・うぃんたーがあらわれたのにはちょっとおどろいたようだが、)

ミス・ウィンターが現れたのにはちょっと驚いたようだが、

(かのじょはわれわれをそれぞれのいすにてまねきした。あたかもおえらいにそういんちょうが)

彼女は我々をそれぞれの椅子に手招きした。あたかもお偉い尼僧院長が

(ちょっとみすぼらしいたくはつしゅうどうしふたりをうけいれるかのようだったな。)

ちょっとみすぼらしい托鉢修道士二人を受け入れるかのようだったな。

(もしこうまんになりたいとおもうなら、わとそん、)

もし高慢になりたいと思うなら、ワトソン、

(みす・ヴぁいおれっと・ど・めるヴぃるのこうぎをうけるといいよ」)

ミス・ヴァイオレット・ド・メルヴィルの講義を受けるといいよ」

(「「なにのごようでしょう」かのじょはひょうざんからふきおろすかぜのようなこえでいった。)

「『何の御用でしょう』彼女は氷山から吹き降ろす風のような声で言った。

(「あなたのなまえはよくぞんじあげています。きいたところでは、あなたは)

『あなたの名前はよく存知あげています。聞いたところでは、あなたは

(わたしのこんやくしゃのぐらなーだんしゃくのわるくちをいうためにこられた。)

私の婚約者のグラナー男爵の悪口を言うために来られた。

(ちちのもとめがあればこそ、わたしはあなたとおあいしています。)

父の求めがあればこそ、私はあなたとお会いしています。

(だからあらかじめもうしあげておきます。あなたがなにをおっしゃっても)

だからあらかじめ申し上げておきます。あなたが何をおっしゃっても

(ほんのわずかでもわたしのきもちをうごかすことはできないと」」)

ほんのわずかでも私の気持ちを動かすことはできないと』」

(「ぼくはかのじょがきのどくになったよ、わとそん。いっしゅん、ぼくはじぶんのむすめなら)

「僕は彼女が気の毒になったよ、ワトソン。一瞬、僕は自分の娘なら

(こうかんじるだろうというきもちでかのじょのことをおもった。)

こう感じるだろうという気持ちで彼女の事を思った。

(ぼくがゆうべんなことはほとんどない。ぼくはあたまはつかうがこころづかいはしないのでね。)

僕が雄弁なことはほとんどない。僕は頭は使うが心遣いはしないのでね。

(しかしぼくはほんとうにかのじょにうったえたよ、じぶんのせいかくのなかでみつかる)

しかし僕は本当に彼女に訴えたよ、自分の性格の中で見つかる

(おもいやりのかぎりをつくしたことばでね。ぼくはかのじょに、けっこんしてからやっと)

思いやりの限りを尽くした言葉でね。僕は彼女に、結婚してからやっと

(おとこのほんしょうにきづいたじょせいのおそろしいたちばをはっきりとめにうかぶように)

男の本性に気づいた女性の恐ろしい立場をはっきりと目に浮かぶように

(せつめいしたよ。ちにまみれたてとこうしょくなくちびるでほうようされても、)

説明したよ。血にまみれた手と好色な唇で抱擁されても、

(うけいれるしかないじょせいのことをね。ぼくはあらゆるてをつかった。)

受け入れるしかない女性の事をね。僕はあらゆる手を使った。

(はじ、おそれ、くのう、ぜつぼう、ぜんぶだ。ぼくがどれだけあついことばをつくしても、)

恥、恐れ、苦悩、絶望、全部だ。僕がどれだけ熱い言葉を尽くしても、

(ぞうげのようなほおにほんのわずかのあかみも、ほうしんしたようなめに)

象牙のような頬にほんのわずかの赤みも、放心したような目に

(いちじょうのかんじょうのきらめきも、もたらすことはできなかった。)

一条の感情のきらめきも、もたらすことは出来なかった。

(ぼくはあのあくとうがあとさいみんのこうかについてはなしていたことをおもいだしたよ。)

僕はあの悪党が後催眠の効果について話していたことを思い出したよ。

(あのじょせいがちじょうをはなれ、なにかこうこつとしたゆめのなかにいきているといっても、)

あの女性が地上を離れ、何か恍惚とした夢の中に生きていると言っても、

(しんじてもらうことができただろうな。)

信じてもらうことが出来ただろうな。

(しかし、かのじょのへんとうにはなにひとつあいまいなてんはなかった」)

しかし、彼女の返答には何一つあいまいな点はなかった」

(「「にんたいづよくはなしをききましたが、ほーむずさん」かのじょはいった。)

「『忍耐強く話を聞きましたが、ホームズさん』彼女は言った。

(「まったく、こころがうごかされることはありませんでした。)

『まったく、心が動かされることはありませんでした。

(こんやくしゃのあでるばーとがはらんにみちたじんせいをおくってきたことはしっています。)

婚約者のアデルバートが波乱に満ちた人生を送ってきたことは知っています。

(かれがはげしくにくまれ、このうえなくふせいなちゅうしょうをあびたこともです。)

彼が激しく憎まれ、この上なく不正な中傷を浴びたこともです。

(あなたはわたしにちゅうしょうをきかせにきたさいごのじんぶつというだけのことです。)

あなたは私に中傷を聞かせに来た最後の人物というだけの事です。

(もしかするとあなたはこういかもしれません。しかしあなたはおかねでうごく)

もしかするとあなたは好意かもしれません。しかしあなたはお金で動く

(だいりにんだというはなしです。そういうにんげんはよろこんでかれのてきとおなじように)

代理人だという話です。そういう人間は喜んで彼の敵と同じように

(だんしゃくのためにもかつやくするのでしょうね。しかしどうであれ、)

男爵のためにも活躍するのでしょうね。しかしどうであれ、

(あなたにはこれをさいごにきっぱりとわかっていただきたいのです。)

あなたにはこれを最後にきっぱりと分かっていただきたいのです。

(わたしはかれをあいし、かれもわたしをあいし、そしてせかいじゅうのいけんは、)

私は彼を愛し、彼も私を愛し、そして世界中の意見は、

(そのまどのそとにいるとりのさえずりいじょうのものではないということを。)

その窓の外にいる鳥のさえずり以上のものではないということを。

(もしかれのこうきなじんかくがいっしゅん、ちにおちたことがあるとしても、おそらく、)

もし彼の高貴な人格が一瞬、地に堕ちた事があるとしても、おそらく、

(そのほんらいのたかみへひきあげるため、わたしがとくにつかわされたのでしょう。)

その本来の高みへ引き上げるため、私が特に使わされたのでしょう。

(ところで」ここでかのじょはぼくのつれにめをやった。)

ところで』ここで彼女は僕の連れに目をやった。

(「このわかいじょせいはどなたですか」」)

『この若い女性はどなたですか』」

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