パノラマ奇島談_§24

投稿者オレンジ プレイ回数287
難易度(4.5) 5442打 長文 長文モード可 タグ小説 長文 タッチタイピング タイピング文庫 文学
著者:江戸川乱歩
売れない物書きの人見廣介は、定職にも就かない極貧生活の中で、自身の理想郷を夢想し、それを実現することを夢見ていた。そんなある日、彼は自分と瓜二つの容姿の大富豪・菰田源三郎が病死した話を知り合いの新聞記者から聞く。大学時代、人見と菰田は同じ大学に通っており、友人たちから双生児の兄弟と揶揄されていた。菰田がてんかん持ちで、てんかん持ちは死亡したと誤診された後、息を吹き返すことがあるという話を思い出した人見の中で、ある壮大な計画が芽生える。それは、蘇生した菰田を装って菰田家に入り込み、その莫大な財産を使って彼の理想通りの地上の楽園を創造することであった。幸い、菰田家の墓のある地域は土葬の風習が残っており、源三郎の死体は焼かれることなく、自らの墓の下に埋まっていた。

人見は自殺を偽装して、自らは死んだこととし、菰田家のあるM県に向かうと、源三郎の墓を暴いて、死体を隣の墓の下に埋葬しなおし、さも源三郎が息を吹き返したように装って、まんまと菰田家に入り込むことに成功する。人見は菰田家の財産を処分して、M県S郡の南端にある小島・沖の島に長い間、夢見ていた理想郷を建設する。

一方、蘇生後、自分を遠ざけ、それまで興味関心を示さなかった事業に熱中する夫を源三郎の妻・千代子は当惑して見つめていた。千代子に自分が源三郎でないと感付かれたと考えた人見は千代子を、自らが建設した理想郷・パノラマ島に誘う。人見が建設した理想郷とはどのようなものだったのか。そして、千代子の運命は?
順位名前スコア称号打鍵/秒正誤率時間(秒)打鍵数ミス問題日付
1 subaru 6933 極めて速い 7.4 93.9% 730.2 5413 350 97 2020/03/24
2 はるけん 6876 極めて速い 7.0 97.7% 767.5 5401 123 97 2020/02/29
3 ななっしー 6453 非常に速い 6.7 95.3% 797.4 5409 263 97 2020/02/27
4 HAKU 6318 非常に速い 6.5 97.2% 836.6 5442 156 97 2020/02/27
5 おっ 5963 すごく速い 6.4 93.5% 846.2 5423 377 97 2020/02/25

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問題文

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(あのはかばからいきかえっていらしってからというもの、ながいあいだ、わたしはあなたがほん)

あの墓場から生き返っていらしってからというもの、長い間、私はあなたが本

(とうのあなたかどうかうたがっていたのでございます。げんざぶろうはあなたのようなおそろ)

当のあなたかどうか疑っていたのでございます。源三郎はあなたのような恐ろ

(しいさいのうを、まるでもってはいませんでした。このしまへきますいぜんから、わたしは)

しい才能を、まるで持ってはいませんでした。この島へ来ます以前から、私は

(もう、たぶんあなたもおきづきになっていらっしゃることで、はんぶんはそのうたがい)

もう、たぶんあなたもお気づきになっていらっしゃることで、半分はその疑い

(をたしかめておりました。それに、ここのいろいろのきみのわるい、それでいて、)

を確かめておりました。それに、ここのいろいろの気味の悪い、それでいて、

(ふしぎとひとをひきつけるけしきをみますと、あとのはんぶんのうたがいもはっきりとけてし)

不思議と人を引き付ける景色を見ますと、後の半分の疑いもはっきり解けてし

(まったようにおもうのでございます」)

まったように思うのでございます」

(「はははははは。おまえは、とうとうほんねをはいたね」)

「ハハハハハハ。お前は、とうとう本音を吐いたね」

(ひろすけのこわいろは、いやにおちついていましたが、どこかじぼうじきのちょうしをかくすこ)

広介の声色は、いやに落ち着いていましたが、どこか自暴自棄の調子を隠すこ

(とはできませんでした。)

とはできませんでした。

(「わたしはとんだしっぱいをやったのだ。わたしはあいしてはならぬひとをあいしたのだ。わたしはど)

「私はとんだ失敗をやったのだ。私は愛してはならぬ人を愛したのだ。私はど

(んなにそれをこらえこらえしただろう。だが、もうちょっとというところで、)

んなにそれをこらえこらえしただろう。だが、もうちょっとというところで、

(とうとうしんぼうができなかった。そしてわたしのしんぱいしたとおり、おまえはわたしのしょうたいを)

とうとう辛抱が出来なかった。そして私の心配したとおり、お前は私の正体を

(さとってしまったのだ・・・・・・」)

悟ってしまったのだ……」

(それから、ひろすけは、かれもまたつかれたもののゆうべんをもって、かれのいんぼうのたいりゃくを)

それから、広介は、彼もまた憑かれたものの雄弁をもって、彼の陰謀の大略を

(ものがたるのでした。)

物語るのでした。

(そのあいだにも、なにもしらぬちかのはなびがかりは、しゅじんたちのめをよろこばせよう)

そのあいだにも、何も知らぬ地下の花火係りは、主人たちの目を喜ばせよう

(と、よういのはなびだまをつぎからつぎへうちあげていました。あるいはきかいなるどうぶつど)

と、用意の花火玉を次から次へ打ち上げていました。あるいは奇怪なる動物ど

(もの、あるいはかいれいなるはながたの、あるいはこうとうむけいなさまざまのかたちの、どくどくし)

もの、あるいは瑰麗なる花形の、あるいは荒唐無稽なさまざまの形の、毒々し

(くあおに、あかに、きに、やみのおおぞらにきらめきわたるかえんは、そのままたにぞこのすいめんを)

く青に、赤に、黄に、闇の大空にきらめき渡る火焔は、そのまま谷底の水面を

など

(いろどり、そのなかにぽっかりうきあがっているふたつのすいかのようなかれらのあたまを、そ)

彩り、その中にぽっかり浮き上がっている二つの西瓜のような彼らの頭を、そ

(のひょうじょうのびさいなてんにいたるまで、)

の表情の微細な点に至るまで、

(ぶたいのちゃくしょくしょうめいそのままに、いようにうつしだすのでした。)

舞台の着色照明そのままに、異様に映し出すのでした。

(いっしんにしゃべりつづけるひろすけのかおが、あるときはよっぱらいのあかづらとなり、あるとき)

一心にしゃべり続ける広介の顔が、ある時は酔っ払いの赤づらとなり、ある時

(はしにんのようにあおざめ、あるときはおうだんやみのものすごいぎょうそうをしめし、またあるとき)

は死人のように青ざめ、ある時は黄疸やみのものすごい形相を示し、又ある時

(はまっくらやみのなかのこえのみとなり、それがきっかいなるものがたりのないようといれまじって、)

は真っ暗闇の中の声のみとなり、それが奇怪なる物語の内容と入れ混じって、

(きょくどにちよこをおどかすのでした。)

極度に千代子を脅かすのでした。

(ちよこはあまりのこわさにたえがたくなって、いくたびかそのばをにげだそうとこころ)

千代子はあまりの怖さに耐え難くなって、いくたびかその場を逃げ出そうと試

(みたのですが、ひろすけのものぐるわしきほうようは、いっかなかのじょをはなすことはありま)

みたのですが、広介のもの狂わしき抱擁は、いっかな彼女を離すことはありま

(せんでした。)

せんでした。

(にじゅうに)

二二

(「おまえは、どのていどまでわたしのいんぼうをさっしていたかしらない。びんかんなおまえはさだ)

「お前は、どの程度まで私の陰謀を察していたか知らない。敏感なお前はさだ

(めしかなりふかいところまでそうぞうをめぐらしてもいただろう。だが、さすがのお)

めし可なり深いところまで想像をめぐらしてもいただろう。だが、さすがのお

(まえも、わたしのけいかくなりりそうなりが、)

前も、私の計画なり理想なりが、

(これほどねづよいものとは、まさかしらなかっただろうね」)

これほど根強いものとは、まさか知らなかっただろうね」

(ものがたりをおわると、ちょうどそのときはまっかなはなびが、まだおちずそらをそめて)

物語りを終ると、ちょうどそのときはまっかな花火が、まだ落ちず空を染めて

(いましたが、そのあかおにのぎょうそうをもって、)

いましたが、その赤鬼の形相をもって、

(ひろすけはじっとちよこをにらみつけたのでした。)

広介はじっと千代子を睨みつけたのでした。

(「かえして、かえして--」)

「帰して、帰して――」

(ちよこは、もうさっきから、がいぶんをわすれて、なきわめきながら、ただこのひと)

千代子は、もうさっきから、外聞を忘れて、泣きわめきながら、ただこのひと

(ことをくりかえすばかりでした。)

ことを繰り返すばかりでした。

(「きけ、ちよこ」)

「聞け、千代子」

(ひろすけはかのじょのくちをふさぐようにして、どなりつけました。)

広介は彼女の口をふさぐようにして、怒鳴りつけました。

(「こんなにうちあけてしまってから、おまえをただかえすことができるとおもってい)

「こんなに打ち明けてしまってから、お前をただ帰すことが出来ると思ってい

(るのか。おまえはもうおれをあいさないのか。きのうまで、いやたったさきほどまで、)

るのか。お前はもう俺を愛さないのか。きのうまで、いやたった先ほどまで、

(おまえはおれがほんとうのげんざぶろうであるかどうかをうたがいながら、やっぱりおれをあいしてい)

お前は俺が本当の源三郎であるかどうかを疑いながら、やっぱり俺を愛してい

(たではないか。それが、おれがしょうじきにこくはくをしてしまうと、)

たではないか。それが、俺が正直に告白をしてしまうと、

(もうおれをきゅうてきのようににくみおそれるのか」)

もう俺を仇敵のように憎み恐れるのか」

(「はなしてください。かえしてください」)

「離してください。帰してください」

(「そうか、じゃあ、おまえはやっぱり、おれをおっとのかたきだとおもっているのだな。こもだ)

「そうか、じゃあ、お前はやっぱり、俺を夫の讐だと思っているのだな。菰田

(けのあだとおもっているのだな。ちよこ、よくきくがいい。おれはおまえがこのうえもな)

家の仇と思っているのだな。千代子、よく聞くがいい。俺はお前がこの上もな

(くかわいい。いっそおまえといっしょにしんでしまいたいほどにおもっているのだ。だ)

く可愛い。いっそお前と一緒に死んでしまいたいほどに思っているのだ。だ

(が、おれにはまだみれんがある。ひとみひろすけをころし、こもだげんざぶろうをそせいさせるため)

が、俺にはまだ未練がある。人見広介を殺し、菰田源三郎を蘇生させるため

(に、おれはどれほどのくしんをしたか。そしてこのぱのらまこくをきずくまでにどのよ)

に、俺はどれほどの苦心をしたか。そしてこのパノラマ国を築くまでにどのよ

(うなぎせいをはらったか。それをおもうと、いまひとつきほどでかんせいするこのしまをみすて)

うな犠牲を払ったか。それを思うと、今ひと月ほどで完成するこの島を見捨て

(てしぬきにはなれない。)

て死ぬ気にはなれない。

(だから、ちよこ、おれはおまえをころすほかにほうほうはないのだ」)

だから、千代子、俺はお前を殺すほかに方法はないのだ」

(「ころさないでください」)

「殺さないでください」

(それをきくとちよこはかすれたこえをふりしぼってさけぶのです。)

それを聞くと千代子はかすれた声を振り絞って叫ぶのです。

(「ころさないでください。なんでもあなたのおっしゃるとおりにします。げんざぶろうと)

「殺さないでください。なんでもあなたのおっしゃる通りにします。源三郎と

(していままでのようにあなたにつかえます。ほかにだれもいません。どうかころさない)

して今までのようにあなたにつかえます。他に誰もいません。どうか殺さない

(でください」)

でください」

(「それはほんきか」)

「それは本気か」

(はなびのためにまっさおにいろどられたひろすけのかおの、めばかりがむらさきいろにぎらぎらとかがやい)

花火のために真っ青に彩られた広介の顔の、目ばかりが紫色にギラギラと輝い

(て、つきとおすようにちよこをにらみつけました。)

て、突き通すように千代子を睨みつけました。

(「ははははははは、だめだ。おれはもう、おまえがなんといおうが、しんずることは)

「ハハハハハハハ、駄目だ。俺はもう、お前がなんと言おうが、信ずることは

(できないのだ。ひょっとしたら、おまえはまだいくらかおれをあいしていてくれるか)

できないのだ。ひょっとしたら、お前はまだいくらか俺を愛していてくれるか

(もしれない。おまえのいうことがほんとうかもしれない。だがなんのしょうこがあるの)

もしれない。お前の言うことが本当かもしれない。だがなんの証拠があるの

(だ。おまえをいかしておいてはおれのみがほろびるのだ。よしまた、おまえはたにんにし)

だ。お前を生かしておいては俺の身がほろびるのだ。よし又、お前は他人に知

(らせぬつもりでいても、おれのこくはくをきいてしまったいじょう、おんなのおまえのうでまえで)

らせぬつもりでいても、俺の告白を聞いてしまった以上、女のお前の腕前で

(は、とてもおれだけのきょせいがはれるものではない。いつとなくおまえのそぶりがそ)

は、とても俺だけの虚勢がはれるものではない。いつとなくお前のそぶりがそ

(れをうちあけてしまうのだ。)

れを打ち明けてしまうのだ。

(どっちにしても、おれはおまえをころすほかにほうほうはないのだ」)

どっちにしても、俺はお前を殺すほかに方法はないのだ」

(「いやです、いやです。わたしにはおやがあるのです。きょうだいがあるのです。たすけてく)

「いやです、いやです。私には親があるのです。兄弟があるのです。助けてく

(ださい。ごしょうです。ほんとうにでくのぼうのように、あなたのいいなりしだいにな)

ださい。後生です。ほんとうにでくの坊のように、あなたのいいなり次第にな

(ります。はなして、はなして」)

ります。離して、離して」

(「そらみろ、おまえはいのちがおしいのだ。おれのぎせいになるきはないのだ。おまえはおれ)

「そら見ろ、お前は命が惜しいのだ。俺の犠牲になる気はないのだ。お前は俺

(をあいしてはいないのだ。げんざぶろうだけをあいしていたのだ。いや、たとえげんざぶろうと)

を愛してはいないのだ。源三郎だけを愛していたのだ。いや、たとえ源三郎と

(おなじかおがたのおとこをあいすることができても、あくにんのこのおれだけは、どうしてもあいせ)

同じ顔型の男を愛することが出来ても、悪人のこの俺だけは、どうしても愛せ

(ないのだ。おれはいまこそわかった。おれはどうあってもおまえをころすほかはない」)

ないのだ。俺は今こそ分かった。俺はどうあってもお前を殺すほかはない」

(そしてひろすけのりょううでは、ちよこのほうからじょじょにいちをかえてかのじょのくびにせまってい)

そして広介の両腕は、千代子の方から徐々に位置を変えて彼女の頸に迫って行

(くのでした。)

くのでした。

(「わわわわわわ、たすけてぇ・・・・・・」)

「ワワワワワワ、助けてェ……」

(ちよこはもうむがむちゅうでした。かのじょはただみをのがれることのほかはかんがえなかっ)

千代子はもう無我夢中でした。彼女はただ身を逃れることのほかは考えなかっ

(たのです。とおいそせんからうけついだごしんのほんのうは、かのじょをして、ごりらのよう)

たのです。遠い祖先から受け継いだ護身の本能は、彼女をして、ゴリラのよう

(にはをむかせました。そしてほとんどはんしゃてきに、かのじょのするどいけんしは、ひろすけのに)

に歯をむかせました。そしてほとんど反射的に、彼女の鋭い犬歯は、広介の二

(のうでふかくくいいったのです。)

の腕深く喰い入ったのです。

(「ちくしょうっ」)

「畜生ッ」

(ひろすけはおもわずてをゆるめないではいられませんでした。そのすきに、ちよこはひごろ)

広介は思わず手を緩めないではいられませんでした。その隙に、千代子は日頃

(のかのじょからはどうしてもそうぞうすることのできないすばやさで、ひろすけのうでをくぐり)

の彼女からはどうしても想像することのできない素早さで、広介の腕をくぐり

(ぬけると、おそろしいいきおいで、あざらしのようにすいちゅうをはねて、まっくらなかなたのきしへ)

抜けると、恐ろしい勢いで、海豹のように水中を跳ねて、真っ暗な彼方の岸へ

(とのがれました。)

と逃れました。

(「たすけてぇ・・・」)

「助けてェ…」

(つんざくようなひめいが、あたりのこやまにひびきわたりました。)

つんざくような悲鳴が、あたりの小山に響きわたりました。

(「ばか、ここはやまのなかだ。だれがたすけにくるものか。ひるまのおんなどもは、もうこの)

「ばか、ここは山の中だ。誰が助けに来るものか。昼間の女どもは、もうこの

(ちのそこのへやにかえって、ぐっすりねこんでいるだろう。それに、おまえはにげみち)

地の底の部屋に帰って、ぐっすり寝込んでいるだろう。それに、お前は逃げ道

(さえしらないのだ」)

さえ知らないのだ」

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