悪獣篇 泉鏡花 4

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投稿者投稿者神楽@社長推しいいね0お気に入り登録
プレイ回数313難易度(4.4) 5002打 長文
泉鏡花の中編小説です
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 やまちゃん 4165 C 4.2 97.1% 1149.1 4931 144 100 2025/12/03

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問題文

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(「だって、そうじゃありませんか、そのきみのわるい、いやなかんじ、」) 「だって、そうじゃありませんか、その気味の悪い、厭な感じ、」 (「でもせんせいは、ぐあいのいいとか、みょうなとか、おもしろいかんじってことは、) 「でも先生は、工合の可いとか、妙なとか、おもしろい感じッて事は、 (おいいなさるけれど、きみのわるいだの、いやなかんじだのって、そんなことは、) お言いなさるけれど、気味の悪いだの、厭な感じだのッて、そんな事は、 (めったにおいいなさることはありません。」) めったにお言いなさることはありません。」 (「しかしですね、つまらないばばをみて、ふるえるほどこわがった、) 「しかしですね、詰らない婆を見て、震えるほど恐がった、 (おばさんのふうったら・・・・・・ぐあいのいい、みょうな、おもしろいかんじがする、) 叔母さんの風[ふう]ッたら……工合の可い、妙な、おもしろい感じがする、 (といったら、おばさんはおこるでしょう。」) と言ったら、叔母さんは怒るでしょう。」 (「あたりまえですわ、あなた。」) 「当然[あたりまえ]ですわ、貴郎[あなた]。」 (「だからこのばあいですもの。やっぱりいやなかんじだ。そのきみのわるいかんじと) 「だからこの場合ですもの。やっぱり嫌な感じだ。その気味の悪い感じと (いうのが、けむしとおなじぐらいだとおもったらどうです。べつにふしぎなことは) いうのが、毛虫とおなじぐらいだと思ったらどうです。別に不思議なことは
(ないじゃありませんか。けむしはきみがわるい、けれどもあやしいものでも) 無いじゃありませんか。毛虫は気味が悪い、けれども怪いものでも (なんでもない。」) 何でもない。」 (「そういえばそうですけれど、だってばあさんの、そのめが、ねえ。」) 「そう言えばそうですけれど、だって婆さんの、その目が、ねえ。」 (「けむしにだって、にらまれてごらんなさい。」) 「毛虫にだって、睨まれて御覧なさい。」 (「もじゃもじゃとしらがが、あなた。」) 「もじゃもじゃと白髪が、貴朗。」 (「けむしというくらいです。もじゃもじゃどころなもんですか、たくさんけがある。」) 「毛虫というくらいです。もじゃもじゃどころなもんですか、沢山毛がある。」 (「まあ、あなたのいうことは、でんでんむしの) 「まあ、貴下[あなた]の言うことは、蝸牛[でんでんむし]の (きょうげんのようだよ。」とさびしくわらったが、) 狂言のようだよ。」と寂しく笑ったが、 (「あれ、」) 「あれ、」 (てらでかんかんとかねをならした。) 寺でカンカンと鉦[かね]を鳴らした。
など
(「ああ、このみちのながかったこと。」) 「ああ、この路の長かったこと。」 (つりさおを、とかたにかけた、しょしあり。としのころ) 七 釣棹[つりざお]を、ト肩にかけた、処士あり。年紀[とし]のころ (さんじゅうよんご。ごぶがりのなだらかなるが、こびんさきへすこしはげた、) 三十四五。五分刈のなだらかなるが、小鬢[こびん]さきへ少し兀[は]げた、 (ひたいのひろい、めのやさしい、まゆのふとい、ひきしまったくちの、) 額の広い、目のやさしい、眉の太い、引緊[ひきしま]った口の、 (ややおおきいのもりりしいが、ほおじしがあつく、こばなにえましげな) やや大きいのも凛々しいが、頬肉[ほおじし]が厚く、小鼻に笑[え]ましげな (しわふかく、したあごからみみのねへ、べたりとひげのあとのくろいのも) 皺深く、下頤[したあご]から耳の根へ、べたりと髯のあとの黒いのも (にゅうわである。しろじにあいのたてじまの、ちぢみのしゃつをきて、) 柔和である。白地に藍の縦縞の、縮[ちぢみ]の襯衣[しゃつ]を着て、 (えりのこはぜもみえそうに、えもんをゆるくこんがすり、にさんどみずへはいったろう、) 襟のこはぜも見えそうに、衣紋を寛[ゆる]く紺絣、二三度水へ入ったろう、 (いろはうすくじもすいたが、のりだくさんのおりめだか。) 色は薄く地も透いたが、糊沢山の折目高。 (さつまげたのおぐらのお、ふといしっかりしたおやゆびで、まむしをこしらえねば) 薩摩下駄の小倉の緒、太いしっかりしたおやゆびで、蝮[まむし]を拵えねば (ならぬほど、ゆるいばかりか、ゆがんだのは、みずにたいしていしのうえに、) ならぬほど、弛いばかりか、歪んだのは、水に対して石の上に、 (これをだいにしていたのであった。) これを台にしていたのであった。 (ときに、つれましたか、えものをいれて、かたてにひっさぐべきびくは、) 時に、釣れましたか、獲物を入れて、片手に提[ひっさ]ぐべき畚[びく]は、 (じっちゅうはっくしょうねんの、ようふくをきたのが、かわりにもって、つれだって、) 十中八九少年の、洋服を着たのが、代りに持って、連立って、 (うみからそよそよとふくかぜに、やまへ、さらさらとあしのはのあおくそろって、) 海からそよそよと吹く風に、山へ、さらさらと蘆[あし]の葉の青く揃って、 (にしゃくばかりなびくほうへ、きしづたいにゆうひをせな。みねをはなれて、) 二尺ばかり靡く方へ、岸づたいに夕日を背[せな]。峰を離れて、 (ひとはけのうすぐもをいでてたまのごとき、つきにむかってかえりみち、) 一刷[ひとはけ]の薄雲を出て玉のごとき、月に向って帰途[かえりみち]、 (ぶらりぶらりということは、このひとよりぞはじまりける。) ぶらりぶらりということは、この人よりぞはじまりける。 (「けんくん、きみのやまごえのくわだては、たいそうかえりがはやかったですな。」) 「賢君、君の山越えの企ては、大層帰りが早かったですな。」 (しょうねんはにこやかに、) 少年は莞爾[にこ]やかに、 (「それでもひとかかえほどやまゆりをおってきました、かえってごらんなさい、) 「それでも一抱えほど山百合を折って来ました、帰って御覧なさい、 (そりゃきれいです。ははのへやへも、せんせいのとこのまへも、ちゃんといけるように) そりゃ綺麗です。母の部屋へも、先生の床の間へも、ちゃんと活けるように (いってきました。」) 言って来ました。」 (「はあ、それはありがたい。あさなんざがけにわくくものなかに) 「はあ、それは難有[ありがた]い。朝なんざ崖に湧く雲の中に (ちらちらもえるようなのがみえて、もみじにあさぎりがかかったというぐあいでいて、) ちらちら燃えるようなのが見えて、もみじに朝霧がかかったという工合でいて、 (なんとなくたかねのはなというかんじがしたのに、けんくんのたんせいで、つくえのうえに) 何となく高嶺の花という感じがしたのに、賢君の丹精で、机の上に (いかったのはかんしゃする。) 活かったのは感謝する。 (はやくいってはいけんしよう、・・・・・・が、まただれか、だいどころのほうで、) 早く行って拝見しよう、・・・・・・が、また誰か、台所の方で、 (わたしのかえるのをまっているものはなかったですか。」) 私の帰るのを待っているものはなかったですか。」 (とこばなのさゆうのせんをふかく、びしょうをふくんでしょうねんを。) と小鼻の左右の線を深く、微笑を含んで少年を。 (かおをみあわせてこなたもわらい、) 顔を見合わせて此方[こなた]も笑い、 (「はははは、まつがたいそうまっていました。せんせいのおさかなをいただこうとおもって、) 「はははは、松が大層待っていました。先生のお肴を頂こうと思って、 (おひるもひかえたっていっていましたっけ。」) お午飯[ひる]も控えたって言っていましたっけ。」 (「それだ。なかなかひとがわるい。」ひろいひたいにてをくわえる。) 「それだ。なかなか人が悪い。」広い額に手を加える。 (「それに、ははも、せんせい。おみやげをたのしみにして、おなかをすかしてかえるからって、) 「それに、母も、先生。お土産を楽しみにして、お腹をすかして帰るからって、 (ことづけをしたそうです。」) 言づけをしたそうです。」 (「ますますきょうしゅく。はあ、で、おくさんはどこかへおでかけで。」) 「益々恐縮。はあ、で、奥さんはどこかへお出かけで。」 (「せんさんがいっしょだそうです。」) 「銑さんが一所だそうです。」 (「そうすると、そのつれのひとも、おなじくみやげをまつかたなんだ。」) 「そうすると、その連の人も、同じく土産を待つ方なんだ。」 (「もちろんです。きょうばかりはとちゅうでおばさんになんにもねだらない。) 「勿論です。今日ばかりは途中で叔母さんに何にも強請らない。 (いぬかわでかえってきて、せんせいのごちそうになるんですって。」) 犬川で帰って来て、先生の御馳走になるんですって。」 (とまたかおをみる。) とまた顔を見る。 (このとき、せんせいがくぜんとしてうなじをすくめた。) この時、先生愕然として頸[うなじ]をすくめた。 (「あかぬ!ほういこうげきじゃ、おそるべきだね。なかんずく、せんたろうなどは、) 「あかぬ!包囲攻撃じゃ、恐るべきだね。就中[なかんずく]、銑太郎などは、 (じぶんつりざおをねだって、あなたがなんです、とひとことのもとにおばごに) 自分釣棹をねだって、貴郎[あなた]が何です、と一言の下に叔母御に (きょぜつされたうらみがあるから、そのたたり) 拒絶された怨[うらみ]があるから、その祟り (よういならずとしるべし。」) 容易ならずと可知矣[しるべし]。」 (とあしのはずれにさおをたれて、おもわずかんねんのまなこをふさげば、) と蘆の葉ずれに棹を垂れて、思わず観念の眼[まなこ]を塞げば、 (しょうねんはきのどくそうに、) 少年は気の毒そうに、 (「せんせい、かっていらっしゃい。」) 「先生、買っていらっしゃい。」 (「かう?」) 「買う?」 (「だっていっぴきもいないんですもの。」) 「だって一尾[ぴき]も居ないんですもの。」 (といまさらながらびくをのぞくと、つめたいいそのにおいがして、) と今更ながら畚[びく]を覗くと、冷たい磯の香[におい]がして、 (ざらざらとすみにかたまるものあり、ほうじょうきにいわく、ごうなはちいさきかいをこのむ。) ざらざらと隅に固まるものあり、方丈記に曰く、ごうなは小さき貝を好む。 (せんせいはみざるまねして、しょうねんがてにかたむけたくだんのびくをよこめに、) 八 先生は見ざる真似して、少年が手に傾けた件[くだん]の畚を横目に、 (「あいにく、はぜ、かいづ、こぶななどをあきなうさかなやがなくってこまる。) 「生憎、沙魚[はぜ]、海津、小鮒などを商う魚屋がなくって困る。 (おくさんはなにもしらず、せんたろうなおあざむくべしじゃが、あの、おまつというのが、) 奥さんは何も知らず、銑太郎なお欺くべしじゃが、あの、お松というのが、 (またわるくかじょうにつうじておって、ごうなかわえびで、あじやおぼこの) また悪く下情に通じておって、ごうな川蝦[かわえび]で、鯵やおぼこの (つれないことはこころえておるから。これでさかなやへよるのは、らくごのごんすけが) 釣れないことは心得ておるから。これで魚屋へ寄るのは、落語の権助が (かわがりのみやげに、あやまってかまぼことめざしをかったよりいっそうのぐじゃ。) 川狩の土産に、過って蒲鉾[かまぼこ]と目刺を買ったより一層の愚じゃ。 (とくにえさのなかでも、ごちそうのかわえびは、あのまつがしんせつに、) 特に餌の中でも、御馳走の川蝦は、あの松がしんせつに、 (そこらですくってきてくれたんで、それをちぎってつるじぶんは、うきがすいめんに) そこらで掬って来てくれたんで、それをちぎって釣る時分は、浮木が水面に (とどくかとどかぬに、ちょろり、かいずめがさらってしまう。) 届くか届かぬに、ちょろり、かいず奴[め]が攫ってしまう。 (たいせつなえびいつつ、またたくまにしてやらてて、ごうなになると、) 大切な蝦五つ、瞬く間にしてやらてて、ごうなになると、 (いともうごかさないなどは、まことにはじいるです。) 糸も動かさないなどは、誠に恥入るです。 (わたしはけんくんがしっとるとおり、ただつりということにおもしろいかんじをもって) 私は賢君が知っとる通り、ただ釣という事におもしろい感じを持って (やるのじゃで、つれようがつれまいが、とんとそんなことにとんちゃくはない。) 行[や]るのじゃで、釣れようが釣れまいが、トンとそんな事に頓着はない。 (しだいにこまったら、はりもつけず、えさなしにこころみていいのじゃけれど、) 次第に困ったら、針もつけず、餌なしに試みて可[い]いのじゃけれど、 (それではあまりけんじんめかすようで、きとがめがするから、) それでは余り賢人めかすようで、気咎[きとがめ]がするから、 (なるべくえさもくっつけてつる。えもののありなしでおもしろみに) 成る可く餌も附着[くッつ]けて釣る。獲物の有無[ありなし]でおもしろ味に (かわりはないで、またこのからびくをぶらさげて、あしのなかをつりざおを) 変[かわり]はないで、またこの空畚をぶらさげて、蘆の中を釣棹を (かついだところも、ぐあいのいいかんじがするのじゃがね。) 担いだ処も、工合の可い感じがするのじゃがね。 (そのようすでは、しょくんにたいして、とてもこのまま、さおをふってはかえられん。) その様子では、諸君に対して、とてもこのまま、棹を掉[ふ]っては帰られん。 (つりをこころみたいというと、おくさまがかぶんなどうぐをととのえてくだすった。) 釣を試みたいと云うと、奥様が過分な道具を調えて下すった。 (このななほんたけのつぎざおなんぞ、わたしにはもったいないとおもうたが、) この七本竹の継棹[つぎざお]なんぞ、私には勿体ないと思うたが、 (こういうときはやくにたつ。) こういう時は役に立つ。 (ひとつたたみこんでふところへいれるとしよう、けんくん。ちょっとそこへ) 一つ畳み込んで懐中[ふところ]へ入れるとしよう、賢君。ちょっとそこへ (やすもうではないか。」) 休もうではないか。」 (とつきをみてたちどまった、やまのすそにおがわをひかえて、あしがはきだした) と月を見て立停[たちどま]った、山の裾に小川を控えて、蘆が吐き出した (ちゃみせがいっけん。) 茶店が一軒。
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