泉鏡花 悪獣篇 13

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投稿者投稿者神楽@社長推しいいね0お気に入り登録
プレイ回数107難易度(4.1) 4476打 長文
泉鏡花の中編小説です
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 やまちゃん 4175 C 4.2 98.1% 1039.4 4422 82 100 2025/12/10

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問題文

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(はまにとまぶねはこれにはかぎらぬから、たしかに、うえでみていたのをと、) 浜に苫船はこれには限らぬから、確[たしか]に、上で見ていたのをと、 (いただきをあおいでいちど。まずそのふたりがまえにたった、ひだりのほうのふなべりから、) 頂を仰いで一度。まずその二人が前に立った、左の方の舷から、 (ざくりととまをうえへあげた。・・・・・・) ざくりと苫を上へあげた。・・・・・・ (ざらざらとわらがゆれて、ひろきひたいをさしいれて、べとりとあごひげいちめんな) ざらざらと藁が揺れて、広き額を差入れて、べとりと頤髯[あごひげ]一面な (そのにゅうわなくちをむすんで、あしをややつまだったとおもうと、りょうのかたで、) その柔和な口を結んで、足をやや爪立ったと思うと、両の肩で、 (おどろきのはらをもんで、けたたましくとびのいて、したなるつなに) 驚愕[おどろき]の腹を揉んで、けたたましく飛び退いて、下なる綱に (つまずいてたおれぬばかり、きょとんとして、ふといまゆのひそんだしたに、) 躓いて倒れぬばかり、きょとんとして、太い眉の顰[ひそ]んだ下に、 (まなこをつぶらにしてあたりをながめた。) 眼[まなこ]を円[つぶら]にして四辺[あたり]を眺めた。 (これなるおかとそうたいして、むこうなる、うみのおもにむらむらと) これなる丘と相対して、対[むこ]うなる、海の面[おも]にむらむらと (はびこった、ねずみいろのこきくもは、かしこいちざのやまをつつんで、) 蔓[はびこ]った、鼠色の濃き雲は、彼処[かしこ]一座の山を包んで、 (まだはれやらぬあさもやにて、すさまじくそらにひひって、) まだ霽[は]れやらぬ朝靄にて、もの凄[すさま]じく空に冲[ひひ]って、 (ほのおのつらなってもゆるがごときは、やがてきゅうじゅうどを) 焔[ほのお]の連[つらな]って燃[もゆ]るがごときは、やがて九十度を (こえんずる、なつのひをかいきにつつんで、がけにくさなきあかつちへ、) 越えんずる、夏の日を海気につつんで、崖に草なき赤地[あかつち]へ、 (ほのかにはんえいするのである。) 仄[ほのか]に反映するのである。 (かくてひとつめのはまはわんにゅうする、うみにもはまにもこのとき、) かくて一つ目の浜は彎入[わんにゅう]する、海にも浜にもこの時、 (ひとはただれんぺいと、おやふねをこぎめぐる) 人はただ廉平と、親船を漕ぎ繞[めぐ]る (ちょうようふたりのはだかごあるのみ。) 長幼二人の裸児[はだかご]あるのみ。 (えもいわれぬかおして、しばらくぼうのごとくたっていた、れんぺいは) 二十三 得も言われぬ顔して、しばらく棒のごとく立っていた、廉平は (なにおもいけん、あしをこなたにかえして、ずっとみをおおきくいわのうえへ。) 何思いけん、足を此方[こなた]に返して、ずッと身を大きく巌の上へ。 (それをおりて、なぎさつだい、ふねをもてあそぶこどものまえへ。) それを下りて、渚つだい、船を弄ぶ小児[こども]の前へ。
など
(ちかづいてみれば、かれらがこぎまわるおやぶねは、そのじくをなみうちぎわ。) 近づいて見れば、渠等[かれら]が漕ぎ廻る親船は、その舳[じく]を波打際。 (あさなぎのうみ、おだやかに、まさごをひろうばかりなれば、) 朝凪の海、穏[おだや]かに、真砂[まさご]を拾うばかりなれば、 (もやいもむすばずただよわせたのに、のんきにごろりと) 纜[もやい]も結ばず漾[ただよ]わせたのに、呑気にごろりと (だいのじなり、かじをまくらのかんたんし、ふといまゆの) 大の字形[なり]、楫[かじ]を枕の邯鄲子[かんたんし]、太い眉の (ひいでたのと、はなすじのとおったのが、まのけざまのねがおである。) 秀でたのと、鼻筋の通ったのが、真向[まの]けざまの寝顔である。 (かたわらのふねも、おさないのも、おもうに) 傍[かたわら]の船も、穉[おさな]いのも、惟[おも]うに (このおやのこなのであろう。) この親の子なのであろう。 (れんぺいは、ものもいわずにかけあるいたこえをまずととのえようと、) 廉平は、ものも言わずに駈け歩行[ある]いた声をまず調えようと、 (うちしわぶいたが、えへん! とおおきく、ちょうしはずれに) 打咳[うちしわぶ]いたが、えへん! と大きく、調子はずれに (ひびいたので、しゃつのそでぐちのゆるんだてで、) 響いたので、襯衣[しゃつ]の袖口の弛[ゆる]んだ手で、 (そのくちもとをおおいながら、) その口許を蔽[おお]いながら、 (「おい、おい。」) 「おい、おい。」 (ねたひとにはないしょらしく、ていちょうにしてこどもをよんだ。) 寝た人には内証らしく、低調にして小児[こども]を呼んだ。 (「おい、そのにいさん、そっちのこ。むむ、そうだ、おまえたちだ。) 「おい、その兄さん、そっちの児[こ]。むむ、そうだ、お前達だ。 (じょうずにこぐな、うまいものだ、かんしんなもんじゃな。」) 上手に漕ぐな、甘[うま]いものだ、感心なもんじゃな。」 (こえをかけられると、はねあがって、ふねをゆすること) 声を掛けられると、跳上[はねあ]がって、船を揺[ゆす]ること (このはのごとし。) 木の葉のごとし。 (「あぶない、これこれ、はなしがある、まあ、ちょっとしずまれ。) 「あぶない、これこれ、話がある、まあ、ちょっと静まれ。 (おお、りこうりこう、よくいうことをきくな。) おお、怜悧[りこう]々々、よく言うことを肯[き]くな。 (なにじゃ、そとじゃないがな、どうだあまりかんしんしたについて、) 何じゃ、外じゃないがな、どうだ余り感心したについて、 (もうちっとじょうずなところがみせてもらいたいな。) もうちッと上手な処が見せてもらいたいな。 (どうじゃ、ずっとこげるか。そら、あの、そらいわのもっとさきへ、) どうじゃ、ずッと漕げるか。そら、あの、そら巌のもっとさきへ、 (うみのまんなかまでこいでゆけるか、どうじゃろうな。」) 海の真中[まんなか]まで漕いで行[ゆ]けるか、どうじゃろうな。」 (やどかりでつるこふぐほどには、こんなおじさんに) 寄居虫[やどかり]で釣る小鰒[こふぐ]ほどには、こんな伯父さんに (なじみのない、ひとなれぬさとのこは、めをひからすのみ、) 馴染[なじみ]のない、人馴れぬ里の児は、目を光らすのみ、 (へんじはしないが、としうえなのが、ろのてをとめつつ、) 返事はしないが、年紀上[としうえ]なのが、艪[ろ]の手を止めつつ、 (けろりで、がてんのめつきをする。) けろりで、合点の目色[めつき]をする。 (「こげる? むむ、こげる! えらいな、こいでみせな/¥。) 「漕げる? むむ、漕げる! 豪[えら]いな、漕いで見せな/\。 (おじさんが、またほうびをやるわ。) 伯父さんが、また褒美をやるわ。 (いや、おやじ、なによ、おまえのとっさんか、とっさんには) いや、親仁[おやじ]、何よ、お前の父[とっ]さんか、父爺[とっさん]には (だまってよ、とっさんにきくと、あぶないとかいたずらをするなとか、) 黙ってよ、父爺に肯[き]くと、危いとか悪戯をするなとか、 (なんとかいってしかられら。そら、な、いいか、だまってだまって。」) 何とか言って叱られら。そら、な、可[い]いか、黙って黙って。」 (というと、またがってんがってん。よい、とおしたこがいなながら) というと、また合点[がってん]々々。よい、と圧[お]した小腕ながら (ろをおすせいこうなくろんぼのきかいのよう、しっといっせいとぶににたり。) 艪を圧す精巧な昆倫奴[くろんぼ]の器械のよう、シッと一声飛ぶに似たり。 (はやいこと、ただしゆれること、なかにのったおさないほうは、) 疾[はや]い事、但[ただ]し揺れる事、中に乗った幼い方は、 (あははあはは、とわらってはねる。) アハハアハハ、と笑って跳ねる。 (「えらいぞ、えらいぞ。」) 「豪[えら]いぞ、豪いぞ。」 (というのもはばかり、たださしまねいてほめそやした。こぶねは) というのも憚[はばか]り、たださしまねいて褒めそやした。小船は (みるみるれんぺいのたかくあげたてのゆびをはなれて、いわがくれにやがて) 見る見る廉平の高くあげた手の指を離れて、岩がくれにやがて (ただくもをこぼれたてんとなんぬ。) ただ雲をこぼれた点となンぬ。 (おやぶねはたわいがなかった。) 親船は他愛がなかった。 (れんぺいはいそぎあしにとってかえして、またおかのねのいわをこして、とまぶねに) 廉平は急ぎ足に取って返して、また丘の根の巌を越して、苫船に (たちよって、こなたのふなばたをよこにつたうて、にさんど、) 立寄って、此方[こなた]の船舷[ふなばた]を横に伝うて、二三度、 (おなじところをいったり、きたり。) 同じ処を行ったり、来たり。 (なかごろで、しゃがんでびくのかげにかくれたとおもうと、) 中ごろで、踞[しゃが]んで畚[びく]の陰に隠れたと思うと、 (またつったって、はしのほうからとまをなでたり、うえからそっと) また突立[つった]って、端の方から苫を撫でたり、上からそっと (たたきなどしたが、さらにあちこちをみまわして、ぐるりと) 叩きなどしたが、更にあちこちを眴[みまわ]して、ぐるりと (へさきのほうへまわったとおもうと、むこうのふなばたのかげになった。) 舳[へさき]の方へ廻ったと思うと、向うの舷[ふなばた]の陰になった。 (とまがばらばらとあおったが、「ああ」といきのしたにさけぶこえ。わらをわけた) 苫がばらばらと煽ったが、「ああ」と息の下に叫ぶ声。藁を分けた (えんなるかたそで、あさぎのつまがふねからこぼれて、) 艶[えん]なる片袖、浅葱の褄[つま]が船からこぼれて、 (そのゆかたのそめ、そのしごき、そのくろかみも、そのてあしも、) その浴衣の染[そめ]、その扱帯[しごき]、その黒髪も、その手足も、 (ちぎれちぎれになったかと、すなにたおれたおんなのすがた。) ちぎれちぎれになったかと、砂に倒れた婦人[おんな]の姿。 (「きをしずめて、おくさん、しっかりしなければ) 二十四 「気を静めて、夫人[おくさん]、しっかりしなければ (いけません。おちついて、いいですか。こころをたしかに) 不可[いけ]ません。落着いて、可[い]いですか。心を確[たしか]に (おもちなさいよ。) お持ちなさいよ。 (わかりましたか、わたしです。) 判りましたか、私です。 (なにもはずかしいことはありません、ちっともきまりのわるいことは) 何も恥かしい事はありません、ちっとも極[きま]りの悪いことは (ありませんです。しっかりなさい。) ありませんです。しっかりなさい。 (ごらんなさい、だれもいないです、ただわたしひとりです。とりやまたったひとり、) 御覧なさい、誰も居ないです、ただ私一人です。鳥山たった一人、 (ほかにはだれもおらんですから。」) 他には誰も居[お]らんですから。」 (うみのほうをそびらにしてやすからぬさまにつきそった、れんぺいのあしもとに、) 海の方を背[そびら]にして安からぬ状[さま]に附添った、廉平の足許に、 (みえもなくこしをおとし、もすそをなげてくずおれつつ、) 見得もなく腰を落し、裳[もすそ]を投げて崩折[くずお]れつつ、 (りょうそでにおもてをおおうて、ひたとうちなくのはふじんであった。) 両袖に面[おもて]を蔽[おお]うて、ひたと打泣くのは夫人であった。 (「ほんとうにおくさん、きをおちつけてくださらんでは) 「ほんとうに夫人[おくさん]、気を落着けて下さらんでは (いけません。いきなりうみへとびこもうとなすったりなんぞして、) 不可[いけ]ません。突然[いきなり]海へ飛込もうとなすったりなんぞして、 (じょうだんではない。ええ、おくさん、) 串戯[じょうだん]ではない。ええ、夫人[おくさん]、 (こころがたしかになったですか。」) 心が確[たしか]になったですか。」 (こえにばかりちからをこめて、どうしようにもさきはおんな、) 声にばかり力を籠[こ]めて、どうしようにも先は婦人[おんな]、 (ひとえにめをみすえていうのみであった。) ひとえに目を見据えて言うのみであった。 (かぜそよそよといきするよう、すすりなきのたもとがゆれた。) 風そよそよと呼吸[いき]するよう、すすりなきの袂[たもと]が揺れた。 (うらこはなみだのこえのした、) 浦子は涙の声の下、 (「せんせい、」とかすかにいう。) 「先生、」と幽[かすか]にいう。 (「はあ、はあ、」) 「はあ、はあ、」 (と、わずかにたよりをえたらしく、われをわすれてすりよった。) と、纔[わず]かに便[たより]を得たらしく、我を忘れて擦り寄った。 (「わ、わたしは、もうしんでしまいたいのでございます。」) 「私[わ]、私は、もう死んでしまいたいのでございます。」 (わっとまたしのびねに、みもだえしてつっぷすのである。) わッとまた忍び音[ね]に、身悶えして突伏すのである。 (「なぜですか、おくさん、まだ、どうかしておいでなさる、) 「なぜですか、夫人[おくさん]、まだ、どうかしておいでなさる、 (ちゃんとなさらなくってはいかんですよ。」) ちゃんとなさらなくッては不可[いか]んですよ。」 (「でも、あなた、わたしは、もう・・・・・・」) 「でも、貴下[あなた]、私は、もう・・・・・・」 (「はあ、どうなすった、どんなおこころもちなんですか。」) 「はあ、どうなすった、どんなお心持なんですか。」
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