泉鏡花 悪獣篇 16

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投稿者投稿者神楽@社長推しいいね1お気に入り登録
プレイ回数105難易度(3.9) 3902打 長文
泉鏡花の中編小説です
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 やまちゃん 4250 C+ 4.3 97.3% 884.4 3864 105 98 2025/12/10

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問題文

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(「あなたも、きのう、そのじぞうをあつらえにおいでのとちゅうから、) 「貴女[あなた]も、昨日、その地蔵をあつらえにおいでの途中から、 (あやしいものにつかれたとおっしゃった。・・・・・・) 怪しいものに憑かれたとおっしゃった。…… (すべて、それがまほうなので、あなたをみして、ゆめうつつの) すべて、それが魔法なので、貴女を魅して、夢現[ゆめうつつ]の (きょうにじょうじて、そのもうしゅうをはらしました。) 境[きょう]に乗じて、その妄執[もうしゅう]を晴しました。 (けれどもあまりにいたわしい。ひとえにけものにとおおもいなすって、) けれども余りに痛[いたわ]しい。ひとえに獣にとお思いなすって、 (たまのごときそのからだを、くだいてきってもすてたいような) 玉のごときそのお身体を、砕いて切っても棄てたいような (ごようすが、あまりおかわいそうでみておられん。) 御容子[ごようす]が、余りお可哀相[かわいそう]で見ておられん。 (おくさん、しんのけものよりまだこのれんぺいとおぼしめすほうが、) 夫人[おくさん]、真の獣よりまだこの廉平と思[おぼ]し召す方が、 (いくらかおこころがすむですか。」) いくらかお心が済むですか。」 (ふじんはせいせいいきをきった。) 夫人はせいせい息を切った。 (「どうですか、あまりおしつけがましいもうしぶんでは) 二十八 「どうですか、余り推[おし]つけがましい申分[もうしぶん]では (ありますが、こころはおなじちくしょうでも、いくらかにんげんのかおににた、くちをきく、) ありますが、心はおなじ畜生でも、いくらか人間の顔に似た、口を利く、 (てあしのある、れんぺいのほうがいいですか。」) 手足のある、廉平の方が可[い]いですか。」 (くちへだすとよりはこえをのんで、) 口へ出すとよりは声をのんで、 (「あなた、」) 「貴下[あなた]、」 (「・・・・・・・・・・・・」) 「…………」 (「あなた、」) 「貴下、」 (「・・・・・・・・・・・・」) 「…………」 (「あなた、ほんとうでございますか。」) 「貴下、ほんとうでございますか。」 (「もちろん、ざんげしたのじゃて。」) 「勿論、懺悔したのじゃて。」
など
(と、まゆをひらいてきっぱりという。) と、眉を開いてきっぱりという。 (ひざでじりりとすりよって、) 膝でじりりとすり寄って、 (「ええ、うれしい。あなた、よくおっしゃってくださいました。」) 「ええ、嬉しい。貴下、よくおっしゃって下さいました。」 (としっかとひざにてをかけて、わっとまたなきしずむ。れんぺいはわれながら、) としっかと膝に手をかけて、わッとまた泣きしずむ。廉平は我ながら、 (あやしいまでむねがせまった。) 訝[あや]しいまで胸がせまった。 (「わたしといわれて、およろこびになりますほど、それほどのおもいを) 「私と言われて、お喜びになりますほど、それほどの思[おもい]を (なさったですか。」) なさったですか。」 (「いいえ、もう、なにともたとえようはござんせん。しんでもしがいが) 「いいえ、もう、何ともたとえようはござんせん。死んでも死骸[しがい]が (のこります、そのけもののつめのあとしたのあとのあります、けだらけなはだが) 残ります、その獣の爪のあと舌のあとのあります、毛だらけな膚[はだ]が (のこるのですもの。やきましてもきつねたぬきのわるいにおいが) 残るのですもの。焼きましても狐狸[きつねたぬき]の悪い臭[におい]が (しましょうかと、こころのこりがしましたのに、あなた、よく、) しましょうかと、心残りがしましたのに、貴下[あなた]、よく、 (おもいきってそうおっしゃってくださいました。こころよくしなれます、) 思い切ってそうおっしゃって下さいました。快く死なれます、 (しなれるんでございますよ。」) 死なれるんでございますよ。」 (「はてさて、」) 「はてさて、」 (「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」) 「………………」 (「じゃ、やっぱり、しぬのをおもいとどまっちゃくださらん。」) 「じゃ、やっぱり、死ぬのを思い止まっちゃ下さらん。」 (かおをみあわせ、うちうなずき、) 顔を見合わせ、打頷[うちうなず]き、 (「むむ、なるほど、」) 「むむ、成程、」 (とうでをほどいて、れんぺいはしょうようとしていなおった。) と腕を解いて、廉平は従容[しょうよう]として居直った。 (「なるほど、そうじゃ。あなたほどのおかたが、かかるちじょくを) 「成程、そうじゃ。貴女[あなた]ほどのお方が、かかる恥辱を (おうけなさって、ゆめにして、ながらえておいでなさるはずないのじゃった。) お受けなさって、夢にして、ながらえておいでなさる筈ないのじゃった。 (ざんげをいたせば、わるいゆめとあきらめて、おもいなおしていただけることもあろうかと) 懺悔をいたせば、悪い夢とあきらめて、思い直して頂けることもあろうかと (おもったですが、いかにもとりかえしのつかんおからだにしたのじゃった、) 思ったですが、いかにも取返しのつかんお身体にしたのじゃった、 (はじいります。) 恥入ります。 (おくさん、あなたばかりはころしはせんのじゃ。」) 夫人[おくさん]、貴女ばかりは殺しはせんのじゃ。」 (「いいえ、とんだことをおっしゃいます。とのがたにはなんでもないので) 「いいえ、飛んだことをおっしゃいます。殿方には何でもないので (ございますもの、そしてざんげにはつみがきえますともうします、) ございますもの、そして懺悔には罪が消えますと申します、 (おうらみにはおもいません。」) お怨[うら]みには思いません。」 (「ゆるしてくださるか。」) 「許して下さるか。」 (「おんなのくちからゆきすぎではございますが、」) 「女の口から行[ゆ]き過ぎではございますが、」 (「ゆるしてくださる。」) 「許して下さる。」 (「はい、」) 「はい、」 (「それではどうぞ、おもいなおして、」) 「それではどうぞ、思い直して、」 (「わたしはもう、」) 「私はもう、」 (とつとまえづまをひきよせる。いわのしたをかいくぐって、) と衝[つ]と前褄[まえづま]を引寄せる。岩の下を掻[か]いくぐって、 (したのねのうつろをうって、たえず、とんとんとつづみのおとがひびいたのが、) 下の根のうつろを打って、絶えず、丁々[トントン]と鼓の音が響いたのが、 (しおやみちくる、どっとはげしく、ざぶりくだけたなみがしら、) 潮や満ち来る、どッと烈[はげ]しく、ざぶり砕けた波がしら、 (しらたきをさかしまに、さっとばかりゆきをくずして、) 白滝を倒[さかしま]に、颯[さっ]とばかり雪を崩して、 (うらこのかたから、つむりから。) 浦子の肩から、頭[つむり]から。 (「あ、」とふいにいきをひいた。ぬれしおれたくろかみに、たまのつらなる) 「あ、」と不意に呼吸[いき]を引いた。濡れしおれた黒髪に、玉のつらなる (しずくをかくれば、なむさんなみにさらわるる、と) 雫[しずく]をかくれば、南無三[なむさん]浪に攫[さら]わるる、と (せなをだくのにみをもたせて、かんねんしたかんばせの、) 背[せな]を抱くのに身を恁[もた]せて、観念した顔[かんばせ]の、 (けだかきまでにっことして、) 気高きまでに莞爾[にっこ]として、 (「ああ、こうやってひとおもいに。」) 「ああ、こうやって一思いに。」 (「おくさん、おくれはせんですよ。」と、かおにつららを) 「夫人[おくさん]、おくれはせんですよ。」と、顔につららを (そそいでいった。うちかえしがまたざっと。) 注いで言った。打返しがまたざっと。 (「しぶきがかかる、しぶきがかかる、あぶないぞ。」) 「潵[しぶき]がかかる、潵がかかる、危いぞ。」 (と、そらからたかくとばわるこえ。) と、空から高く呼[とば]わる声。 (もやがわかれて、うなづらにこつとしてそびえたった、) 靄が分れて、海面[うなづら]に兀[こつ]として聳[そび]え立った、 (いわつづきのみあぐるうえ。くさむすいただきにひとありて、めのしたにこえをかけた、) 巌[いわ]つづきの見上ぐる上。草蒸す頂に人ありて、目の下に声を懸けた、 (きこりとおぼしきひとりのおやじ。おもてながく) 樵夫[きこり]と覚しき一個[ひとり]の親仁[おやじ]。面[おもて]長く (かみのしろきが、くさいろのはりめぎぬに、くちばいろの) 髪の白きが、草色の針目衣[はりめぎぬ]に、朽葉色[くちばいろ]の (たっつけはいて、わらじをつまぞりや、) 裁着[たっつけ]穿いて、草鞋[わらじ]を爪反[つまぞ]りや、 (いわばなにちょこなんとひらあぐらかいてぞいたりける。) 巌端[いわばな]にちょこなんと平胡坐[ひらあぐら]かいてぞいたりける。 (そのいわのおもにひたとあてて、りょうてでごしごしいっちょうの、) その岩の面[おも]にひたとあてて、両手でごしごし一挺[ちょう]の、 (きらめくはものをゆうゆうとといでいたり。) きらめく刃物を悠々と磨[と]いでいたり。 (とぎつつ、のぞくようにみおろして、) 磨ぎつつ、覗くように瞰下[みおろ]して、 (「うえへきさっしゃい、うえへきさっしゃい、なみにひかれるとあぶないわ。」) 「上へ来さっしゃい、上へ来さっしゃい、浪に引かれると危いわ。」 (という。なみはすいしょうのはしらのごとく、さかしまにほとばしって、) という。浪は水晶の柱のごとく、倒[さかしま]にほとばしって、 (いまつったったれんぺいのずじょうをとんで、そらざまによずることじゅうじょう、) 今つッ立った廉平の頭上を飛んで、空ざまに攀[よ]ずること十丈、 (おやじのてもとのとぎしるをひとあらい、しろきぼたんのちるごとく、) 親仁の手許の磨ぎ汁を一洗滌[ひとあらい]、白き牡丹の散るごとく、 (いわかどにひるがえって、うなづらへざっとひく。) 巌角[いわかど]に翻って、海面[うなづら]へざっと引く。 (「おじご、なにを、なにをしてござるのか。」と、れんぺいはわざとおちついて、) 「おじご、何を、何をしてござるのか。」と、廉平はわざと落着いて、 (したからまずこえをおくった。) 下からまず声を送った。 (「いしのみをとぐよ。ふたつめのはまのいしやにたのまれての、こんど) 「石鑿[いしのみ]を研ぐよ。二つ目の浜の石屋に頼まれての、今度 (けんりつさっしゃるという、じぞうさまのいしをけずるわ。」) 建立さっしゃるという、地蔵様の石を削るわ。」 (「や、おじごがな。」) 「や、親仁御[おじご]がな。」 (「おお、こなたしゅはそのちゅうもんのぬしじゃろ。そうかの。はて、) 「おお、此方衆[こなたしゅ]はその註文のぬしじゃろ。そうかの。はて、 (どうりこそ、ばばどもがつきまとうぞ。」) 道理こそ、婆々[ばば]どもが附き纏うぞ。」 (ばばというよ、しょうしをしらぬふじんのみみに、するどくそののみをもって) 婆々と云うよ、生死[しょうし]を知らぬ夫人の耳に、鋭くその鑿をもって (えぐるがごとくひびいたので、) 抉[えぐ]るがごとく響いたので、 (「もし、」とりょうひざをついてのびあがった。) 「もし、」と両膝をついて伸び上った。 (「ばばとおいいなさいますのは。」) 「婆[ばば]とお云いなさいますのは。」 (「それ、ぎんめと、きんめと、あかいめのやつらよ。ぬしたちがくどくでの、) 「それ、銀目と、金目と、赤い目の奴等よ。主達[ぬしたち]が功徳での、 (じぞうさまがたったがさいごじゃ。まものめ、いどこがなくなるじゃで、) 地蔵様が建ったが最後じゃ。魔物め、居処[いどこ]がなくなるじゃで、 (さまざまにたたりおって、いのちまでとろうとするわ。おなごしゅ、) さまざまに祟りおって、命まで取ろうとするわ。女子衆[おなごしゅ]、 (しんぱいさっしゃんな、からだはきよいぞ。」) 心配さっしゃんな、身体は清いぞ。」 (とて、のみをこつこつ。) とて、鑿をこつこつ。
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