苺

(あばらのおくしんぞうがまたたいてる)

あばらの奥　心臓が瞬いてる

(けしてとどかないこいのせいきみのせいで)

決して届かない　恋のせい　君のせいで

(しょうせつかでもしじんでもない)

小説家でも詩人でもない

(つたえるすべをもたないからと)

伝える術を持たないからと

(かのじょがかみをわけるしぐさを)

彼女が髪を分ける仕草を

(ただとなりでみています)

ただ隣で見ています

(みつめられたいちびょうで)

見つめられた　一秒で

(いちごのようにあかくかわったほお)

苺のように赤く　変わった頬

(ばれぬようにくびをしたにおりまげる)

ばれぬように　首を下に折り曲げる

(ゆらりゆらりあかいいちごは)

ゆらり　ゆらり　赤い苺は

(くちをつむったまま)

口をつむったまま

(あるみのはんがーくちにいれているような)

アルミのハンガー　口に入れているような

(かおをひきつれて)

顔を引き連れて

(そのかたのよこあとすうせんち)

その肩の横　あと数センチ

(かのうせいならぜろではないと)

可能性なら０ではないと

(こころのどっかでおもってるけど)

心のどっかで　思ってるけど

(まわらぬくちとあたまじゃとても)

回らぬ口と頭じゃとても

(いえそうにはありません)

言えそうにはありません

(ほらちくたくちくたくながれている)

ほらチクタクチクタク　流れている

(とけいはめをつむり)

時計は目をつむり

(ふれがたいよこがおを)

触れがたい　横顔を

(ただとなりでみています)

ただ隣で見ています

(このはがゆいおもいとかのじょごと)

この歯痒い思いと　彼女ごと

(つれさってしまおうか)

連れ去ってしまおうか

(むねにやかれたきみのなを)

胸に焼かれた　君の名を

(かみさまけしてください)

神様消してください

(みつめられたいちびょうで)

見つめられた　一秒で

(いちごのようにあかくかわったほお)

苺のように赤く　変わった頬

(ばれぬようにいっそきえてしまおうか)

ばれぬように　いっそ消えてしまおうか

(ゆらりゆらりあかいいちごは)

ゆらり　ゆらり　赤い苺は

(くちをつむって)

口をつむって

(ころりころりねがうゆうに)

ころり　ころり　願うように

(ただあかくそまっている)

ただ赤く染まっている