日本海海戦

(かいろいちまんごせんより)

海路一万五千余浬

(ばんくをしのびとうように)

万苦を忍び東洋に

(さいごのしょうはいけっせんと)

最後の勝敗決せんと

(よせこしてきこそけなげなれ)

寄せ来し敵こそ健気なれ

(ときこれさんじゅうはちねんの)

時維れ三十八年の

(さぎりもふかきさつきすえ)

狭霧も深き五月末

(てきかんみゆとのけいほうに)

敵艦見ゆとの警報に

(いさみたちたるわがかんたい)

勇み立ちたる我が艦隊

(はやくもこんきょちあとにして)

早くも根拠地後にして

(せいきどうどうあらなみを)

旌旗堂々荒波を

(けたててすすむにほんかい)

蹴立てて進む日本海

(ころしもごごのいちじはん)

頃しも午後の一時半

(きりのたえまをみわたせば)

霧の絶間を見渡せば

(てきかんあわせてやくしじゅう)

敵艦合せて約四十（しじゅう）

(にれつのじゅうじんつくりつつ)

二列の縦陣作りつつ

(つしまのおきにさしかかる)

対馬の沖にさしかかる

(せんきいまやとまつほどに)

戦機今やと待つ程に

(きかんにあがれるしんごうは)

旗艦に揚がれる信号は

(みくにのこうはいこのいっきょ)

「皇国（みくに）の興廃この一挙

(かくいんふんれいどりょくせよ)

各員奮励努力せよ」

(せんざいふきゅうのめいれいに)

千載不朽の命令に

(ぜんぐんふかくかんげきし)

全軍深く感激し

(いっしほうこうこのときと)

一死奉公この時と

(しきおうせいにてんをつく)

士気旺盛に天を衝く

(だいいちだいにせんたいは)

第一第二戦隊は

(てきのゆくてをおさえつつ)

敵の行手を押さえつつ

(そのたのせんたいうしろより)

その他の戦隊後より

(てきじんちかくおいせまる)

敵陣近く追い迫る

(てきのせんとうすうぉーろふの)

敵の先頭「スウォーロフ」の

(だいいちだんをはじめとし)

第一弾を初めとし

(ひがのうちだすほうせいに)

彼我の打ち出す砲声に

(てんちもくずるるばかりなり)

天地も崩るる斗りなり

(すいちゅうしろくたちのぼり)

水柱白く立ちのぼり

(ばくえんくろくみなぎりて)

爆煙黒くみなぎりて

(たたかいいよいよたけなわに)

戦愈々たけなわに

(りょうぐんししょうかずしれず)

両軍死傷数知れず

(されどきたえにきたえたる)

されど鍛えに鍛えたる

(わがかんたいのえいほうに)

吾が艦隊の鋭鋒に

(てきのすうかんはちんぼつし)

敵の数艦は沈没し

(じんけいみだれてしぶごれつ)

陣形乱れて四分五裂

(いつしかひはくれすいらいの)

いつしか日は暮れ水雷の

(はげしきこうげきたえまなく)

激しき攻撃絶間なく

(またもあまたのてきかんは)

またも数多の敵艦は

(そこのもくずときえうせぬ)

底の藻屑と消えうせぬ

(あくるあしたのせいてんに)

明くる晨（あした）の晴天に

(てきをもとめていきいけば)

敵を索（もと）めて行き行けば

(うつりょうとうのほとりにて)

鬱稜島のほとりにて

(しろはたかかげしふねよせき)

白旗掲げし艦四隻

(ふくしょうここにこうをこい)

副将ここに降を乞い

(しゅしょうはわれにとらわれて)

主将は我に捕らわれて

(ここんのれきしにためしなき)

古今の歴史に例（ためし）なき

(だいせんこうをおさめけり)

大戦功を収めけり

(むかしはげんぐんじゅうよまん)

昔は元軍十余万

(つくしのうみにしずめたる)

筑紫の海に沈めたる

(そせんにまさるちゅうゆうを)

祖先に勝る忠勇を

(しめすもきみのおおみいつ)

示すも君の大御陵威

(くにのひかりをくわえたる)

国の光を加えたる

(わがかいぐんのほまれこそ)

我が海軍の誉れこそ

(ちよにやちよにくもりなき)

千代に八千代に曇なき

(あさひとともにかがやかめ)

朝日と共に輝かめ