江戸川乱歩 D坂⑤

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順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 甘木風寧(週末演 4681 C++ 5.1 91.9% 498.1 2556 224 42 2024/03/11

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問題文

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(しほうしゅにんととけいやのもんどうはだいたいつぎのようなものであった。)

司法主任と時計屋の問答は大体次の様なものであった。

(「しゅじんはどこへいったのかね」)

「主人はどこへ行ったのかね」

(「ここのしゅじんは、まいばんふるほんのよみせをだしにまいりますんで、)

「ここの主人は、毎晩古本の夜店を出しに参りますんで、

(いつもじゅうにじごろでなきゃかえってまいりません。へい」)

いつも十二時頃でなきゃ帰って参りません。ヘイ」

(「どこへよみせをだすんだね」)

「どこへ夜店を出すんだね」

(「よくうえののひろこうじへまいりますようですが。こんばんはどこへでましたか、)

「よく上野の広小路へ参ります様ですが。今晩はどこへ出ましたか、

(どうもてまえにはわかりかねますんで。へい」)

どうも手前には分り兼ねますんで。ヘイ」

(「いちじかんばかりまえに、なにかものおとをきかなかったかね」)

「一時間ばかり前に、何か物音を聞かなかったかね」

(「ものおとともうしますと」)

「物音と申しますと」

(「きまっているじゃないか。このおんながころされるときのさけびごえとか、)

「極まっているじゃないか。この女が殺される時の叫び声とか、

(かくとうのおととか・・・」)

格闘の音とか・・・」

(「べつだんこれというものおとをききませんようでございましたが」)

「別段これという物音を聞きません様でございましたが」

(そうこうするうちに、きんじょのひとたちがききつたえてあつまってきたのと、)

そうこうする内に、近所の人達が聞き伝えて集まって来たのと、

(とおりがかりのやじうまで、ふるほんやのおもてはいっぱいのひとだかりになった。)

通りがかりの弥次馬で、古本屋の表は一杯の人だかりになった。

(そのなかに、もういっぽうの、りんかのたびやのおかみさんがいて、とけいやにおうえんした。)

その中に、もう一方の、隣家の足袋屋のおかみさんがいて、時計屋に応援した。

(そして、かのじょもなにもものおとをきかなかったむねちんじゅつした。)

そして、彼女も何も物音を聞かなかった旨陳述した。

(このかん、きんじょのひとたちは、きょうぎのうえ、ふるほんやのしゅじんのところへ)

この間、近所の人達は、協議の上、古本屋の主人の所へ

(つかいをはしらせたようすだった。)

使いを走らせた様子だった。

(そこへ、おもてにじどうしゃのとまるおとがして、すうにんのひとがどやどやとはいってきた。)

そこへ、表に自動車の止まる音がして、数人の人がドヤドヤと入って来た。

(それはけいさつからのきゅうほうでかけつけたさいばんしょのれんちゅうと、ぐうぜんどうじにとうちゃくした)

それは警察からの急報で駈けつけた裁判所の連中と、偶然同時に到着した

など

(kけいさつしょちょう、およびとうじのめいたんていといううわさのたかかったこばやしけいじなどのいっこうだった。)

K警察署長、及び当時の名探偵という噂の高かった小林刑事などの一行だった。

(--むろんこれはあとになってわかったことだ、というのは、わたしのともだちに)

--無論これは後になって分ったことだ、というのは、私の友達に

(ひとりのしほうきしゃがあって、それがこのじけんのかかりのこばやしけいじと)

一人の司法記者があって、それがこの事件の係りの小林刑事と

(ごくこんいだったので、わたしはごじつかれからいろいろときくことができたのだ。--)

ごく懇意だったので、私は後日彼から色々と聞くことが出来たのだ。--

(せんちゃくのしほうしゅにんは、このひとたちのまえでいままでのもようをせつめいした。)

先着の司法主任は、この人達の前で今までの模様を説明した。

(わたしたちもさきのちんじゅつをもういちどくりかえさねばならなかった。)

私達も先の陳述をもう一度繰り返さねばならなかった。

(「おもてのとをしめましょう」)

「表の戸を閉めましょう」

(とつぜん、くろいあるぱかのうわぎに、しろずぼんという、したまわりのかいしゃいんみたいなおとこが、)

突然、黒いアルパカの上衣に、白ズボンという、下廻りの会社員みたいな男が、

(おおごえでどなって、さっさととをしめだした。これがこばやしけいじだった。)

大声でどなって、さっさと戸を閉め出した。これが小林刑事だった。

(かれはこうしてやじうまをげきたいしておいて、さてたんていにとりかかった。)

彼はこうして弥次馬を撃退して置いて、さて探偵にとりかかった。

(かれのやりかたはいかにもぼうじゃくぶじんで、けんじやしょちょうなどはまるでがんちゅうにない)

彼のやり方は如何にも傍若無人で、検事や署長などはまるで眼中にない

(ようすだった。かれははじめからおわりまでひとりでかつどうした。ほかのひとたちはただ、)

様子だった。彼は始めから終わりまで一人で活動した。他の人達はただ、

(かれのびんしょうなこうどうをぼうかんするためにやってきたけんぶつにんにすぎないようにみえた。)

彼の敏捷な行動を傍観する為にやって来た見物人に過ぎない様に見えた。

(かれはだいいちにしたいをしらべた。くびのまわりはことにねんいりにいじりまわしていたが、)

彼は第一に死体を検べた。頸の廻りは殊に念入りにいじり廻していたが、

(「このゆびのあとにはべつにとくちょうがありません。つまりふつうのにんげんが、)

「この指の痕には別に特徴がありません。つまり普通の人間が、

(みぎてでおさえつけたといういがいになんのてがかりもありません」)

右手で押えつけたという以外に何の手掛りもありません」

(とけんじのほうをみていった。つぎにかれはいちどしたいをらたいにしてみるといいだした。)

と検事の方を見て云った。次に彼は一度死体を裸体にして見るといい出した。

(そこで、ぎかいのひみつかいみたいに、ぼうちょうしゃのわたしたちは、)

そこで、議会の秘密会みたいに、傍聴者の私達は、

(みせのまへおいだされねばならなかった。だから、そのあいだに)

店の間へ追い出されねばならなかった。だから、その間に

(どういうはっけんがあったか、よくわからないが、さっするところ、かれらは)

どういう発見があったか、よく分らないが、察する所、彼等は

(しにんのからだにたくさんのなまきずのあることにちゅういしたにそういない。)

死人の身体に沢山の生傷のあることに注意したに相違ない。

(かふぇのうえいとれすのうわさしていたあれだ。)

カフェのウエイトレスの噂していたあれだ。

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