江戸川乱歩 D坂⑥

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1 甘木風寧(週末演 4843 B 5.2 93.0% 512.0 2680 200 44 2024/03/11

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問題文

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(やがて、このひみつかいがとかれたけれど、わたしたちはおくのまへはいっていくのを)

やがて、この秘密会が解かれたけれど、私達は奥の間へ入って行くのを

(えんりょして、れいのみせのまとおくとのさかいのたたみじきのところからおくのほうをのぞきこんでいた。)

遠慮して、例の店の間と奥との境の畳敷きの所から奥の方を覗き込んでいた。

(さいわいなことには、わたしたちはじけんのはっけんしゃだったし、それに、あとから)

幸いなことには、私達は事件の発見者だったし、それに、後から

(あけちのしもんをとらねばならなかったために、さいごまでおいだされずにすんだ。)

明智の指紋を取らねばならなかった為に、最後まで追い出されずに済んだ。

(というよりはよくりゅうされていたというほうがただしいかもしれぬ。)

というよりは抑留されていたという方が正しいかも知れぬ。

(しかしこばやしけいじのかつどうはおくのまだけにかぎられていたわけでなく、)

しかし小林刑事の活動は奥の間だけに限られていた訳でなく、

(おくないおくがいのひろいはんいにわたっていたのだから、ひとつところにじっとしていたわたしたちに、)

屋内屋外の広い範囲に亙っていたのだから、一つ所にじっとしていた私達に、

(そのそうさのもようがわかろうはずがないのだが、うまいぐあいに、)

その捜査の模様が分ろう筈がないのだが、うまい工合に、

(けんじがおくのまにじんどっていて、しじゅうほとんどうごかなかったので、)

検事が奥の間に陣取っていて、始終殆ど動かなかったので、

(けいじがでたりはいったりするごとに、いちいちそうさのけっかをほうこくするのを、)

刑事が出たり入ったりする毎に、一々捜査の結果を報告するのを、

(もれなくききとることができた。けんじはそのほうこくにもとづいて、)

洩れなく聞きとることが出来た。検事はその報告に基づいて、

(ちょうしょのざいりょうをしょきにかきとめさしていた。)

調書の材料を書記に書きとめさしていた。

(まず、したいのあったおくのまのそうさくがおこなわれたが、いりゅうひんも、あしあとも、)

先ず、死体のあった奥の間の捜索が行われたが、遺留品も、足跡も、

(そのほかたんていのめにふれるなにものもなかったようすだ。)

その他探偵の目に触れる何物もなかった様子だ。

(ただひとつのものをのぞいては。)

ただ一つのものを除いては。

(「でんとうのすいっちにしもんがあります」くろいえぼないとのすいっちに)

「電燈のスイッチに指紋があります」黒いエボナイトのスイッチに

(なにかしろいこなをふりかけていたけいじがいった。「ぜんごのじじょうからかんがえて、)

何か白い粉をふりかけていた刑事が云った。「前後の事情から考えて、

(でんとうをけしたのははんにんにそういありません。しかしこれをつけたのは)

電燈を消したのは犯人に相違ありません。しかしこれをつけたのは

(あなたがたのうちどちらですか」)

あなた方の内どちらですか」

(あけちはじぶんだとこたえた。)

明智は自分だと答えた。

など

(「そうですか。あとであなたのしもんをとらせてください。このでんとうは)

「そうですか。あとであなたの指紋をとらせて下さい。この電燈は

(さわらないようにして、このままとりはずしてもっていきましょう」)

触らない様にして、このまま取りはずして持って行きましょう」

(それから、けいじはにかいへあがっていってしばらくおりてこなかったが、)

それから、刑事は二階へ上がって行って暫く下りて来なかったが、

(おりてくるとすぐにろじをしらべるのだといってでていった。それが)

下りて来るとすぐに路地を検べるのだといって出て行った。それが

(じゅっぷんもかかったろうか、やがて、かれはまだついたままのかいちゅうでんとうをかたてに、)

十分もかかったろうか、やがて、彼はまだついたままの懐中電燈を片手に、

(ひとりのおとこをつれてかえってきた。それはよごれたくれっぷしゃつに)

一人の男を連れて帰って来た。それは汚れたクレップシャツに

(かーきいろのずぼんといういでたちで、しじゅうばかりのきたないおとこだ。)

カーキ色のズボンという扮装(いでたち)で、四十ばかりの汚い男だ。

(「あしあとはまるでだめです」けいじがほうこくした。「このうらぐちのあたりは、)

「足跡はまるで駄目です」刑事が報告した。「この裏口の辺りは、

(ひあたりがわるいせいかひどいぬかるみで、げたのあとがめったむしょうに)

日当りが悪いせいかひどいぬかるみで、下駄の跡が滅多無性に

(ついているんだから、とてもわかりっこありません。ところで、)

ついているんだから、とても分りっこありません。ところで、

(このおとこですが」といまつれてきたおとこをさし「これは、このうらのろじをでたところのかどに)

この男ですが」と今連れて来た男を指し「これは、この裏の路地を出た所の角に

(みせをだしていたあいすくりーむやですが、もしはんにんがうらぐちからにげたとすれば、)

店を出していたアイスクリーム屋ですが、もし犯人が裏口から逃げたとすれば、

(ろじはいっぽうぐちなんですから、かならずこのおとこのめについたはずです。)

路地は一方口なんですから、必ずこの男の目についた筈です。

(きみ、もういちどわたしのたずねることにこたえてごらん」)

君、もう一度私の尋ねることに答えて御覧」

(そこで、あいすくりーむやとけいじのもんどう。)

そこで、アイスクリーム屋と刑事の問答。

(「こんばんはちじぜんごに、このろじをでいりしたものはないかね」)

「今晩八時前後に、この路地を出入りしたものはないかね」

(「ひとりもありませんので、ひがくれてからこっち、ねこのこいっぴき)

「一人もありませんので、日が暮れてからこっち、猫の子一匹

(とおりませんので」あいすくりーむやはなかなかようりょうよくこたえる。)

通りませんので」アイスクリーム屋はなかなか要領よく答える。

(「わたしはながらくここへみせをださせてもらってますが、あすこは、)

「私は長らくここへ店を出させて貰ってますが、あすこは、

(このながやのおかみさんたちも、やぶんはめったにとおりませんので、)

この長屋のおかみさん達も、夜分は滅多に通りませんので、

(なにぶんあのあしばのわるいところへもってきて、まっくらなんですから」)

何分あの足場の悪い所へ持って来て、真っ暗なんですから」

(「きみのみせのおきゃくでろじのなかへはいったものはないかね」)

「君の店のお客で路地の中へ入ったものはないかね」

(「それもございません。みなさんわたしのめのまえであいすくりーむをたべて、)

「それも御座いません。皆さん私の目の前でアイスクリームを食べて、

(すぐもとのほうへおかえりになりました。それはもうまちがいはありません」)

すぐ元の方へ御帰りになりました。それはもう間違いはありません」

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