江戸川乱歩 D坂⑩

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1 甘木風寧(週末演 5135 B+ 5.3 95.3% 342.9 1851 90 33 2024/03/16

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問題文

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((げ)すいり)

(下)推理

(さて、さつじんじけんからとおかほどたったあるひ、わたしはあけちこごろうのやどをたずねた。)

さて、殺人事件から十日程たったある日、私は明智小五郎の宿を訪ねた。

(そのとおかのあいだに、あけちとわたしとが、このじけんにかんして、)

その十日の間に、明智と私とが、この事件に関して、

(なにをなし、なにをかんがえそしてなにをけつろんしたか。)

何を為し、何を考えそして何を結論したか。

(どくしゃは、それらを、このひ、かれとわたしとのあいだにとりかわされたかいわによって、)

読者は、それらを、この日、彼と私との間に取り交わされた会話によって、

(じゅうぶんさっすることができるであろう。)

十分察することが出来るであろう。

(それまで、あけちとはかふぇでかおをあわしていたばかりで、)

それまで、明智とはカフェで顔を合わしていたばかりで、

(やどをたずねるのは、そのときがはじめてだったけれど、)

宿を訪ねるのは、その時が初めてだったけれど、

(かねてところをきいていたので、さがすのにほねはおれなかった。)

かねて所を聞いていたので、探すのに骨は折れなかった。

(わたしは、それらしいたばこやのみせさきにたって、おかみさんに、)

私は、それらしい煙草屋の店先に立って、おかみさんに、

(あけちがいるかどうかをたずねた。)

明智がいるかどうかを尋ねた。

(「ええ、いらっしゃいます。ちょっとおまちください、いまおよびしますから」)

「エエ、いらっしゃいます。ちょっと御待ち下さい、今お呼びしますから」

(かのじょはそういって、みせさきからみえているかいだんのあがりぐちまでいって、)

彼女はそういって、店先から見えている階段の上がり口まで行って、

(おおごえにあけちをよんだ。かれはこのいえのにかいをまがりしているのだ。)

大声に明智を呼んだ。彼はこの家の二階を間借りしているのだ。

(すると、「おー」とへんなへんじをして、あけちはみしみしとかいだんをおりてきたが、)

すると、「オー」と変な返事をして、明智はミシミシと階段を下りて来たが、

(わたしをはっけんすると、おどろいたかおをして「やー、おあがりなさい」といった。)

私を発見すると、驚いた顔をして「ヤー、お上がりなさい」といった。

(わたしはかれのあとにしたがってにかいへあがった。)

私は彼の後に従って二階へ上がった。

(ところが、なにげなく、かれのへやへいっぽあしをふみこんだとき、)

ところが、何気なく、彼の部屋へ一歩足を踏み込んだ時、

(わたしはあっとたまげてしまった。へやのようすがあまりにもいようだったからだ。)

私はアッと魂消てしまった。部屋の様子が余りにも異様だったからだ。

(あけちがかわりものだということをしらぬではなかったけれど、)

明智が変り者だということを知らぬではなかったけれど、

など

(これはまたかわりすぎていた。)

これは又変り過ぎていた。

(なんのことはない、よじょうはんのざしきがしょもつでうまっているのだ。)

何のことはない、四畳半の座敷が書物で埋まっているのだ。

(まんなかのところにすこしたたみがみえるだけで、あとはほんのやまだ、)

真ん中の所に少し畳が見えるだけで、あとは本の山だ、

(しほうのかべやふすまにそって、したのほうはほとんどへやいっぱいに、)

四方の壁や襖に沿って、下の方は殆ど部屋一杯に、

(うえのほうほどはばがせまくなって、てんじょうのちかくまで、しほうからしょもつのどてが)

上の方程幅が狭くなって、天井の近くまで、四方から書物の土手が

(せまっているのだ。ほかのどうぐなどはなにもない。)

迫っているのだ。ほかの道具などは何もない。

(いったいかれはこのへやでどうしてねるのだろうとうたがわれるほどだ。)

一体彼はこの部屋でどうして寝るのだろうと疑われる程だ。

(だいいち、しゅかくふたりのすわるところもない、うっかりみうごきしようものなら、)

第一、主客二人の坐る所もない、うっかり身動きしようものなら、

(たちまちほんのどてくずれで、おしつぶされてしまうかもしれない。)

忽ち本の土手くずれで、圧しつぶされてしまうかも知れない。

(「どうもせまくっていけませんが、それに、ざぶとんがないのです。)

「どうも狭くっていけませんが、それに、座蒲団がないのです。

(すみませんが、やわらかそうなほんのうえへでもすわってください」)

済みませんが、柔らかそうな本の上へでも坐って下さい」

(わたしはしょもつのやまにわけいって、やっとすわるばしょをみつけたが、)

私は書物の山に分け入って、やっと坐る場所を見つけたが、

(あまりのことに、しばらく、ぼんやりとそのあたりをみまわしていた。)

あまりのことに、暫く、ぼんやりとその辺りを見廻していた。

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