江戸川乱歩 D坂⑪
順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 123 | 6254 | S | 6.4 | 96.8% | 344.4 | 2227 | 73 | 38 | 2024/10/20 |
関連タイピング
-
プレイ回数10万歌詞200打
-
プレイ回数3867かな314打
-
プレイ回数96万長文かな1008打
-
プレイ回数3.2万歌詞1030打
-
プレイ回数6万長文1159打
-
プレイ回数3831長文1069打
-
プレイ回数398長文535打
-
プレイ回数515歌詞886打
問題文
(わたしは、かくもふうがわりなへやのぬしであるあけちこごろうのひととなりについて、)
私は、かくも風変りな部屋の主である明智小五郎の為人について、
(ここでいちおうせつめいしておかねばなるまい。)
ここで一応説明して置かねばなるまい。
(しかしかれとはさっこんのつきあいだから、かれがどういうけいれきのおとこで、)
しかし彼とは昨今のつき合いだから、彼がどういう経歴の男で、
(なにによっていしょくし、なにをもくてきにこのじんせいをおくっているのか、)
何によって衣食し、何を目的にこの人世を送っているのか、
(というようなことはいっさいわからぬけれど、かれが、これというしょくぎょうをもたぬ)
という様なことは一切分らぬけれど、彼が、これという職業を持たぬ
(いっしゅのゆうみんであることはたしかだ。しいていえばしょせいであろうか、)
一種の遊民であることは確かだ。強いて云えば書生であろうか、
(だが、しょせいにしてはよほどふうがわりなしょせいだ。)
だが、書生にしては余程風変りな書生だ。
(いつかかれが「ぼくはにんげんをけんきゅうしているんですよ」といったことがあるが、)
いつか彼が「僕は人間を研究しているんですよ」といったことがあるが、
(そのときわたしには、それがなにをいみするのかよくわからなかった。)
その時私には、それが何を意味するのかよく分らなかった。
(ただ、わかっているのは、かれがはんざいやたんていについて、なみなみならぬきょうみと、)
ただ、分っているのは、彼が犯罪や探偵について、並々ならぬ興味と、
(おそるべくほうふなちしきをもっていることだ。)
恐るべく豊富な知識を持っていることだ。
(としはわたしとおなじくらいで、にじゅうごさいをこしてはいまい。どちらかといえば)
年は私と同じ位で、二十五歳を越してはいまい。どちらかと云えば
(やせたほうで、さきにもいったとおり、あるくときにへんにかたをふるくせがある、)
痩せた方で、先にも云った通り、歩く時に変に肩を振る癖がある、
(といっても、けっしてごうけつりゅうのそれではなく、みょうなおとこをひきあいにだすが、)
といっても、決して豪傑流のそれではなく、妙な男を引合いに出すが、
(あのかたうでのふじゆうな、こうしゃくしのかんだはくりゅうをおもいださせるようなあるきかたなのだ。)
あの片腕の不自由な、講釈師の神田伯龍を思い出させる様な歩き方なのだ。
(はくりゅうといえば、あけちはかおつきからこわねまで、かれにそっくりだ、)
伯龍といえば、明智は顔つきから声音まで、彼にそっくりだ、
(--はくりゅうをみたことのないどくしゃは、しょくんのしっているうちで、)
--伯龍を見たことのない読者は、諸君の知っている内で、
(いわゆるこうだんしではないが、どことなくあいきょうのある、そして)
いわゆる好男子ではないが、どことなく愛嬌のある、そして
(もっともてんさいてきなかおをそうぞうするがよい--)
最も天才的な顔を想像するがよい--
(ただあけちのほうは、かみのけがもっとながくのびていて、もじゃもじゃと)
ただ明智の方は、髪の毛がもっと長く延びていて、モジャモジャと
(もつれあっている。そして、かれはひととはなしているあいだにもよく、)
もつれ合っている。そして、彼は人と話している間にもよく、
(ゆびで、そのもじゃもじゃになっているかみのけを、)
指で、そのモジャモジャになっている髪の毛を、
(さらにもじゃもじゃにするためのようにひっかきまわすのがくせだ。)
更にモジャモジャにする為の様に引っ掻き廻すのが癖だ。
(ふくそうなどはいっこうかまわぬほうらしく、いつももめんのきものに、)
服装などは一向構わぬ方らしく、いつも木綿の着物に、
(よれよれのへこおびをしめている。)
よれよれの兵児帯を締めている。
(「よくたずねてくれましたね。そのごしばらくあいませんが、れいのdざかのじけんは)
「よく訪ねてくれましたね。その後暫く逢いませんが、例のD坂の事件は
(どうです。けいさつのほうではいっこうはんにんのみこみがつかぬようではありませんか」)
どうです。警察の方では一向犯人の見込みがつかぬようではありませんか」
(あけちはれいの、あたまをかきまわしながら、じろじろわたしのかおをながめていう。)
明智は例の、頭を掻き廻しながら、ジロジロ私の顔を眺めて云う。
(「じつはぼく、きょうはそのことですこしはなしがあってきたんですがね」)
「実は僕、今日はそのことで少し話があって来たんですがね」
(そこでわたしはどういうふうにきりだしたものかとまよいながらはじめた。)
そこで私はどういう風に切り出したものかと迷いながら始めた。
(「ぼくはあれから、しゅじゅかんがえてみたんですよ。かんがえたばかりでなく、)
「僕はあれから、種々考えて見たんですよ。考えたばかりでなく、
(たんていのようにじっちのとりしらべもやったのですよ。そして、じつは)
探偵の様に実地の取調べもやったのですよ。そして、実は
(ひとつのけつろんにたっしたのです。それをきみにごほうこくしようとおもって・・・」)
一つの結論に達したのです。それを君に御報告しようと思って・・・」
(「ほう。そいつはすてきですね。くわしくききたいものですね」)
「ホウ。そいつはすてきですね。詳しく聞きたいものですね」
(わたしは、そういうかれのめつきに、なにがわかるものかというような、)
私は、そういう彼の目つきに、何が分るものかという様な、
(けいべつとあんしんのいろがうかんでいるのをみのがさなかった。そして、)
軽蔑と安心の色が浮んでいるのを見逃さなかった。そして、
(それがわたしのしゅんじゅんしているこころをげきれいした。)
それが私の逡巡している心を激励した。
(わたしはいきおいこんではなしはじめた。)
私は勢い込んで話し始めた。