江戸川乱歩 D坂⑯
順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 123 | 6360 | S | 6.5 | 97.4% | 370.7 | 2422 | 64 | 40 | 2024/10/25 |
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問題文
(「きみは、ぼくがあれからなにもしないでいたとおもうのですか。)
「君は、僕があれから何もしないでいたと思うのですか。
(ぼくもこれでなかなかやったのですよ。dざかはまいにちのようにうろついていましたよ。)
僕もこれでなかなかやったのですよ。D坂は毎日の様にうろついていましたよ。
(ことにふるほんやへはよくいきました。そしてしゅじんをつかまえていろいろさぐったのです。)
殊に古本屋へはよく行きました。そして主人をつかまえて色々探ったのです。
(--さいくんをしっていたことはそのときうちあけたのですが、)
--細君を知っていたことはその時打ち明けたのですが、
(それがかえってべんぎになりましたよ--きみがしんぶんきしゃをつうじて)
それが却って便宜になりましたよ--君が新聞記者を通じて
(けいさつのもようをしったように、ぼくはあのふるほんやのしゅじんから、)
警察の模様を知った様に、僕はあの古本屋の主人から、
(それをききだしていたんです。いまのしもんのことも、じきにわかりましたから、)
それを聞き出していたんです。今の指紋のことも、じきに分りましたから、
(ぼくもみょうにおもってしらべてみたのですが、はは・・・、わらいばなしですよ。)
僕も妙に思って検べて見たのですが、ハハ・・・、笑い話ですよ。
(でんきゅうのせんがきれていたのです。だれもけしやしなかったのですよ。)
電球の線が切れていたのです。誰も消しやしなかったのですよ。
(ぼくがすいっちをひねったためにひがついたとおもったのはまちがいで、)
僕がスイッチをひねった為に燈(ひ)がついたと思ったのは間違いで、
(あのとき、あわててでんとうをうごかしたので、いちどきれたたんぐすてんが、)
あの時、慌てて電燈を動かしたので、一度切れたタングステンが、
(つながったのですよ。すいっちにぼくのしもんだけしかなかったのは、)
つながったのですよ。スイッチに僕の指紋だけしかなかったのは、
(あたりまえなのです。あのばん、きみはしょうじのすきまから)
当たり前なのです。あの晩、君は障子の隙間から
(でんとうのついているのをみたといいましたね。とすれば、)
電燈のついているのを見たと云いましたね。とすれば、
(でんきゅうのきれたのは、そのあとですよ。ふるいでんきゅうは、どうもしないでも、)
電球の切れたのは、その後ですよ。古い電球は、どうもしないでも、
(ひとりでにきれることがありますからね。それから、)
独りでに切れることがありますからね。それから、
(はんにんのきもののいろのことですが、これはぼくがせつめいするよりも・・・」)
犯人の着物の色のことですが、これは僕が説明するよりも・・・」
(かれはそういって、かれのしんぺんのしょもつのやまを、あちらこちらはっくつしていたが、)
彼はそういって、彼の身辺の書物の山を、あちらこちら発掘していたが、
(やがて、いっさつのふるぼけたようしょをほりだしてきた。)
やがて、一冊の古ぼけた洋書を掘りだして来た。
(「きみ、これをよんだことがありますか、みゅんすたーべるひの)
「君、これを読んだことがありますか、ミュンスターベルヒの
(「しんりがくとはんざい」というほんですが、この「さっかく」というしょうのぼうとうを)
『心理学と犯罪』という本ですが、この『錯覚』という章の冒頭を
(じゅうぎょうばかりよんでごらんなさい」)
十行ばかり読んで御覧なさい」
(わたしは、かれのじしんありげなぎろんをきいているうちに、だんだんわたしじしんのしっぱいを)
私は、彼の自信ありげな議論を聞いている内に、段々私自身の失敗を
(いしきしはじめていた。で、いわれるままにそのしょもつをうけとって、よんでみた。)
意識し始めていた。で、云われるままにその書物を受け取って、読んで見た。
(そこにはだいたいつぎのようなことがかいてあった。)
そこには大体次の様なことが書いてあった。
(かつてひとつのじどうしゃはんざいじけんがあった。ほうていにおいて、しんじつをもうしたてるむねせんせいした)
嘗つて一つの自動車犯罪事件があった。法廷に於て、真実を申立てる旨宣誓した
(しょうにんのひとりは、もんだいのどうろはぜんぜんかんそうしてほこりたっていたとしゅちょうし、)
証人の一人は、問題の道路は全然乾燥してほこり立っていたと主張し、
(いまひとりのしょうにんは、あめふりのあげくで、どうろはぬかるんでいたとせいごんした。)
今一人の証人は、雨降りの挙句で、道路はぬかるんでいたと誓言した。
(ひとりは、もんだいのじどうしゃはじょこうしていたともいい、ほかのひとりは、)
一人は、問題の自動車は徐行していたともいい、他の一人は、
(あのようにはやくはしっているじどうしゃをみたことがないとのべた。)
あの様に早く走っている自動車を見たことがないと述べた。
(またぜんしゃは、そのそんどうにはにさんにんしかいなかったといい、こうしゃは、)
又前者は、その村道には二三人しか居なかったといい、後者は、
(おとこやおんなやこどものつうこうにんがたくさんあったとちんじゅつした。)
男や女や子供の通行人が沢山あったと陳述した。
(このりょうにんのしょうにんは、ともにそんけいすべきしんしで、じじつをきょくべんしたとて、)
この両人の証人は、共に尊敬すべき紳士で、事実を曲弁したとて、
(なんのりえきがあるはずもないひとびとだった。)
何の利益がある筈もない人々だった。
(わたしがそれをよみおわるのをまってあけちはさらにほんのぺーじをくりながらいった。)
私がそれを読み終わるのを待って明智は更に本の頁を繰りながら云った。
(「これはじっさいあったことですが、こんどは、)
「これは実際あったことですが、今度は、
(この「しょうにんのきおく」というしょうがあるでしょう。そのなかほどのところに、)
この『証人の記憶』という章があるでしょう。その中程の所に、
(あらかじめけいかくしてじっけんしたはなしがあるのですよ。ちょうどきもののいろのことがでてますから、)
予め計画して実験した話があるのですよ。丁度着物の色のことが出てますから、
(めんどうでしょうが、まあちょっとよんでごらんなさい」)
面倒でしょうが、まあちょっと読んで御覧なさい」
(それはさのようなきじであった。)
それは左(さ)の様な記事であった。