江戸川乱歩 D坂⑲(終)
順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 123 | 6456 | S | 6.6 | 97.5% | 355.6 | 2356 | 60 | 42 | 2024/10/26 |
2 | 123 | 6102 | A++ | 6.2 | 96.9% | 374.1 | 2356 | 73 | 42 | 2024/10/25 |
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問題文
(わたしはいろいろそうぞうをめぐらしてみたけれど、)
私は色々想像をめぐらして見たけれど、
(どうにもかれのかんがえていることがわかりかねた。)
どうにも彼の考えていることが分り兼ねた。
(わたしじしんのしっぱいをはじることをわすれて、かれのこのきかいなすいりにみみをかたむけた。)
私自身の失敗を恥じることを忘れて、彼のこの奇怪な推理に耳を傾けた。
(「で、ぼくのかんがえをいいますとね、さつじんしゃはあさひやのしゅじんなのです。)
「で、僕の考えを云いますとね、殺人者は旭屋の主人なのです。
(かれはざいせきをくらますためにあんなべんじょをかりたおとこのことをいったのですよ。)
彼は罪跡をくらます為にあんな便所を借りた男のことを云ったのですよ。
(いや、しかしそれはなにもかれのそうあんでもなんでもない。われわれがわるいのです。)
いや、しかしそれは何も彼の創案でも何でもない。我々が悪いのです。
(きみにしろぼくにしろ、そういうおとこがなかったかと、こちらからといをかまえて、)
君にしろ僕にしろ、そういう男がなかったかと、こちらから問いを構えて、
(かれをきょうさしたようなものですからね。それに、かれはぼくたちをけいじかなんかと)
彼を教唆した様なものですからね。それに、彼は僕達を刑事かなんかと
(おもいちがえていたのです。では、かれはなにゆえにさつじんざいをおかしたか。)
思い違えていたのです。では、彼は何故(なにゆえ)に殺人罪を犯したか。
(・・・ぼくはこのじけんによって、うわべはきわめてなにげなさそうな、)
・・・僕はこの事件によって、うわべは極めて何気なさそうな、
(このじんせいのうらめんに、どんなにいがいな、)
この人世の裏面に、どんなに意外な、
(いんさんなひみつがかくされているかということを、)
陰惨な秘密が隠されているかということを、
(まざまざとみせつけられたようなきがします。それは、じつに、)
まざまざと見せつけられた様な気がします。それは、実に、
(あのあくむのせかいでしかみいだすことのできないようなしゅるいのものだったのです。)
あの悪夢の世界でしか見出すことの出来ない様な種類のものだったのです。
(あさひやのしゅじんというのは、さーどきょうのながれをくんだ、)
旭屋の主人というのは、サード卿の流れをくんだ、
(ひどいざんぎゃくしきじょうしゃで、なんといううんめいのいたずらでしょう、)
ひどい惨虐色情者で、何という運命のいたずらでしょう、
(いっけんおいてとなりに、おんなのまぞっほをはっけんしたのです。)
一軒置いて隣に、女のマゾッホを発見したのです。
(ふるほんやのさいくんはかれにおとらぬひぎゃくしきじょうしゃだったのです。)
古本屋の細君は彼に劣らぬ被虐色情者だったのです。
(そして、かれらは、そういうびょうしゃにとくゆうのたくみさをもって、)
そして、彼等は、そういう病者に特有の巧みさを以って、
(だれにもみつけられずに、かんつうしていたのです。)
誰にも見つけられずに、カン通していたのです。
(・・・きみ、ぼくがごういのさつじんだといったいみがわかるでしょう。)
・・・君、僕が合意の殺人だといった意味が分るでしょう。
(・・・かれらは、さいきんまでは、おのおの、せいとうのおっとやつまによって、)
・・・彼等は、最近までは、各々、正当の夫や妻によって、
(そのびょうてきなよくぼうを、かろうじてみたしていました。ふるほんやのさいくんにも、)
その病的な慾望を、かろうじて充たしていました。古本屋の細君にも、
(あさひやのさいくんにも、おなじようななまきずのあったのはそのしょうこです。)
旭屋の細君にも、同じ様な生傷のあったのはその証拠です。
(しかし、かれらがそれにまんぞくしなかったのはいうまでもありません。)
しかし、彼等がそれに満足しなかったのは云うまでもありません。
(ですからめとはなのきんじょに、おたがいのさがしもとめているにんげんをはっけんしたとき、)
ですから目と鼻の近所に、お互いの探し求めている人間を発見した時、
(かれらのあいだにひじょうにびんそくなりょうかいのせいりつしたことは)
彼等の間に非常に敏速な了解の成立したことは
(そうぞうにかたくないではありませんか。ところがそのけっかは、)
想像に難くないではありませんか。ところがその結果は、
(うんめいのいたずらがすぎたのです。かれらの、)
運命のいたずらが過ぎたのです。彼等の、
(ぱっしヴとあくてぃヴのちからのごうせいによって、きょうたいがぜんじばいかされていきました。)
パッシヴとアクティヴの力の合成によって、狂態が漸次倍加されて行きました。
(そして、ついにあのよる、この、かれらとてもけっしてねがわなかったじけんを)
そして、遂にあの夜、この、彼等とても決して願わなかった事件を
(ひきおこしてしまったわけなのです・・・」)
惹き起こしてしまった訳なのです・・・」
(わたしは、あけちのこのいようなけつろんをきいて、おもわずみぶるいした。)
私は、明智のこの異様な結論を聞いて、思わず身震いした。
(これはまあ、なんというじけんだ!)
これはまあ、何という事件だ!
(そこへ、したのたばこやのおかみさんが、ゆうかんをもってきた。)
そこへ、下の煙草屋のおかみさんが、夕刊を持って来た。
(あけちはこれをうけとって、しゃかいめんをみていたが、やがて、)
明智はこれを受け取って、社会面を見ていたが、やがて、
(そっとためいきをついていった。)
そっと溜息をついて云った。
(「ああ、とうとうたえきれなくなったとみえて、じしゅしましたよ。)
「アア、とうとう耐え切れなくなったと見えて、自首しましたよ。
(みょうなぐうぜんですね。ちょうどそのことをはなしていたときに、)
妙な偶然ですね。丁度そのことを話していた時に、
(こんなほうどうにせっしるとは」)
こんな報導に接しるとは」
(わたしはかれのゆびさすところをみた。そこには、ちいさいみだしで、じゅうぎょうばかり、)
私は彼の指さす所を見た。そこには、小さい見出しで、十行ばかり、
(そばやのしゅじんのじしゅしたむねがしるされてあった。)
蕎麦屋の主人の自首した旨が記されてあった。