坊ちゃん(12)

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夏目漱石の坊ちゃん(12)です。

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問題文

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(じゅうごじょうのおもてにかいでおおきなとこのまがついている。)

十五畳の表二階で大きな床の間がついている。

(おれはうまれてからまだこんなりっぱなざしきへはいったことはない。)

おれは生れてからまだこんな立派な座敷へはいった事はない。

(このあといつはいれるかわからないから、)

この後いつはいれるか分らないから、

(ようふくをぬいでゆかたいちまいになってざしきのまんなかへだいのじにねてみた。)

洋服を脱いで浴衣一枚になって座敷の真中へ大の字に寝てみた。

(いいこころもちである。)

いい心持ちである。

(ひるめしをくってからさっそくきよへてがみをかいてやった。)

昼飯を食ってから早速清へ手紙をかいてやった。

(おれはぶんしょうがまずいうえにじをしらないからてがみをかくのがだいきらいだ。)

おれは文章がまずい上に字を知らないから手紙を書くのが大嫌いだ。

(またやるところもない。しかしきよはしんぱいしているだろう。)

またやる所もない。しかし清は心配しているだろう。

(なんぱしてしにやしないかなどとおもっちゃこまるから、)

難船して死にやしないかなどと思っちゃ困るから、

(ふんぱつしてながいのをかいてやった。そのもんくはこうである。)

奮発して長いのを書いてやった。その文句はこうである。

(「きのうついた。つまらんところだ。じゅうごじょうのざしきにねている。)

「きのう着いた。つまらん所だ。十五畳の座敷に寝ている。

(やどやへちゃだいをごえんやった。かみさんがあたまをいたのまへすりつけた。)

宿屋へ茶代を五円やった。かみさんが頭を板の間へすりつけた。

(ゆうべはねられなかった。きよがささあめをささごとくうゆめをみた。)

夕べは寝られなかった。清が笹飴を笹ごと食う夢を見た。

(らいねんのなつはかえる。きょうがっこうへいってみんなにあだなをつけてやった。)

来年の夏は帰る。今日学校へ行ってみんなにあだなをつけてやった。

(こうちょうはたぬき、きょうとうはあかしゃつ、えいごのきょうしはうらなり、)

校長は狸、教頭は赤シャツ、英語の教師はうらなり、

(すうがくはやまあらし、ががくはのだいこ。)

数学は山嵐、画学はのだいこ。

(いまにいろいろなことをかいてやる。さようなら」)

今にいろいろな事を書いてやる。さようなら」

(てがみをかいてしまったら、いいこころもちになってねむけがさしたから、)

手紙をかいてしまったら、いい心持ちになって眠気がさしたから、

(さいぜんのようにざしきのまんなかへのびのびとだいのじにねた。)

最前のように座敷の真中へのびのびと大の字に寝た。

(こんどはゆめもなにもみないでぐっすりねた。)

今度は夢も何も見ないでぐっすり寝た。

など

(このへやかいとおおきなこえがするのでめがさめたら、やまあらしがはいってきた。)

この部屋かいと大きな声がするので目が覚めたら、山嵐がはいって来た。

(さいぜんはしっけい、きみのうけもちは・・とひとがおきあがるやいなや)

最前は失敬、君の受持ちは・・と人が起き上がるや否や

(だんぱんをひらかれたのでおおいにろうばいした。)

談判を開かれたので大いに狼狽した。

(うけもちをきいてみるとべつだんむずかしいこともなさそうだからしょうちした。)

受持ちを聞いてみると別段むずかしい事もなさそうだから承知した。

(このくらいのことなら、あさってはおろか、あしたからはじめろといったっておどろかない。)

このくらいの事なら、明後日は愚、明日から始めろと云ったって驚ろかない。

(じゅぎょうじょうのうちあわせがすんだら、)

授業上の打ち合せが済んだら、

(きみはいつまでこんなやどやにいるつもりでもあるまい、)

君はいつまでこんな宿屋に居るつもりでもあるまい、

(ぼくがいいげしゅくをしゅうせんしてやるからうつりたまえ。)

僕がいい下宿を周旋してやるから移りたまえ。

(そとのものではしょうちしないがぼくがはなせばすぐできる。)

外のものでは承知しないが僕が話せばすぐ出来る。

(はやいほうがいいから、きょうみて、あすうつって、)

早い方がいいから、今日見て、あす移って、

(あさってからがっこうへゆけばきまりがいいとひとりでのみこんでいる。)

あさってから学校へ行けば極りがいいと一人で呑み込んでいる。

(なるほどじゅうごじょうじきにいつまでいるわけにもいくまい。)

なるほど十五畳敷にいつまで居る訳にも行くまい。

(げっきゅうをみんなしゅくりょうにはらってもおっつかないかもしれぬ。)

月給をみんな宿料に払っても追っつかないかもしれぬ。

(ごえんのちゃだいをふんぱつしてすぐうつるのはちとざんねんだが、どうせうつるものなら、)

五円の茶代を奮発してすぐ移るのはちと残念だが、どうせ移る者なら、

(はやくひきこしておちつくほうがべんりだから、)

早く引き越して落ち付く方が便利だから、

(そこのところはよろしくやまあらしにたのむことにした。)

そこのところはよろしく山嵐に頼む事にした。

(するとやまあらしはともかくもいっしょにきてみろというから、いった。)

すると山嵐はともかくもいっしょに来てみろと云うから、行った。

(まちはずれのおかのちゅうふくにあるいえでしごくかんせいだ。)

町はずれの岡の中腹にある家で至極閑静だ。

(しゅじんはこっとうをばいばいするいかぎんというおとこで、)

主人は骨董を売買するいか銀と云う男で、

(にょうぼうはていしゅよりもよっつばかりとしかさのおんなだ。)

女房は亭主よりも四つばかり年嵩の女だ。

(ちゅうがっこうにいたときうぃっちということばをならったことがあるが)

中学校に居た時ウィッチと云う言葉を習った事があるが

(このにょうぼうはまさにうぃっちににている。)

この女房はまさにウィッチに似ている。

(うぃっちだってひとのにょうぼうだからかまわない。)

ウィッチだって人の女房だから構わない。

(とうとうあしたからひきうつることにした。かえりにやまあらしはとおりちょうでこおりみずをいっぱいおごった。)

とうとう明日から引き移る事にした。帰りに山嵐は通町で氷水を一杯奢った。

(がっこうであったときはやにおうふうなしっけいなやつだとおもったが、)

学校で逢った時はやに横風な失敬な奴だと思ったが、

(こんなにいろいろせわをしてくれるところをみると、わるいおとこでもなさそうだ。)

こんなにいろいろ世話をしてくれるところを見ると、わるい男でもなさそうだ。

(ただおれとおなじようにせっかちでかんしゃくもちらしい。)

ただおれと同じようにせっかちで肝癪持らしい。

(あとできいたらこのおとこがいちばんせいとにじんぼうがあるのだそうだ。)

あとで聞いたらこの男が一番生徒に人望があるのだそうだ。

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