坊ちゃん(22)

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プレイ回数2443難易度(4.2) 2256打 長文 かな
夏目漱石の坊ちゃん(22)です。

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問題文

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(きよのことをかんがえながら、のつそつしていると、)

清の事を考えながら、のつそつしていると、

(とつぜんおれのあたまのうえで、かずでいったらさんよんじゅうにんもあろうか、)

突然おれの頭の上で、数で云ったら三四十人もあろうか、

(にかいがおっこちるほどどん、どん、どんと)

二階が落っこちるほどどん、どん、どんと

(ひょうしをとってゆかいたをふみならすおとがした。)

拍子を取って床板を踏みならす音がした。

(するとあしおとにひれいしたおおきなときのこえがおこった。)

すると足音に比例した大きな鬨の声が起った。

(おれはなにごとがもちあがったのかとおどろいてとびおきた。)

おれは何事が持ち上がったのかと驚いて飛び起きた。

(とびおきるとたんに、)

飛び起きる途端に、

(ははあさっきのいしゅがえしにせいとがあばれるのだなときがついた。)

ははあさっきの意趣返しに生徒があばれるのだなと気がついた。

(てまえのわるいことはわるかったといってしまわないうちはつみはきえないもんだ。)

手前のわるい事は悪るかったと言ってしまわないうちは罪は消えないもんだ。

(わるいことは、てまえたちにおぼえがあるだろう。)

わるい事は、手前達に覚があるだろう。

(ほんらいならねてからこうかいしてあしたのあさでもあやまりにくるのがほんすじだ。)

本来なら寝てから後悔してあしたの朝でもあやまりに来るのが本筋だ。

(たとい、あやまらないまでもおそれいって、せいしゅくにねているべきだ。)

たとい、あやまらないまでも恐れ入って、静粛に寝ているべきだ。

(それをなんだこのさわぎは。きしゅくしゃをたててぶたでもかっておきあしまいし。)

それを何だこの騒ぎは。寄宿舎を建てて豚でも飼っておきあしまいし。

(きちがいじみたまねもたいていにするがいい。)

気狂いじみた真似も大抵にするがいい。

(どうするかみろと、ねまきのまましゅくちょくべやをとびだして、)

どうするか見ろと、寝巻のまま宿直部屋を飛び出して、

(はしごだんをみまたはんににかいまでおどりあがった。)

楷子段を三股半に二階まで躍り上がった。

(するとふしぎなことに、いままであたまのうえで、たしかにどたばたあばれていたのが、)

すると不思議な事に、今まで頭の上で、たしかにどたばた暴れていたのが、

(きゅうにしずまりかえって、ひとごえどころかあしおともしなくなった。)

急に静まり返って、人声どころか足音もしなくなった。

(これはみょうだ。)

これは妙だ。

(らんぷはすでにけしてあるから、くらくてどこになにがいるかはんぜんとわからないが、)

ランプはすでに消してあるから、暗くてどこに何が居るか判然と分らないが、

など

(ひとけのあるとないとはようすでもしれる。)

人気のあるとないとは様子でも知れる。

(ながくひがしからにしへつらぬいたろうかにはねずみいっぴきもかくれていない。)

長く東から西へ貫いた廊下には鼠一匹も隠れていない。

(ろうかのはずれからつきがさして、はるかむこうがきわどくあかるい。)

廊下のはずれから月がさして、遥か向うが際どく明るい。

(どうもへんだ、おれはこどものときから、よくゆめをみるくせがあって、)

どうも変だ、おれは小供の時から、よく夢を見る癖があって、

(むちゅうにはねおきて、わからぬねごとをいって、ひとにわらわれたことがよくある)

夢中に跳ね起きて、わからぬ寝言を云って、人に笑われた事がよくある

(じゅうろくひちのときだいやもんどをひろったゆめをみたばんなぞは、むくりとたちあがって、)

十六七の時ダイヤモンドを拾った夢を見た晩なぞは、むくりと立ち上がって、

(そばにいたあにに、いまのだいやもんどはどうしたと、ひじょうないきおいでたずねたくらいだ。)

そばに居た兄に、今のダイヤモンドはどうしたと、非常な勢で尋ねたくらいだ。

(そのときはみっかばかりうちじゅうのわらいぐさになっておおいによわった。)

その時は三日ばかりうち中の笑い草になって大いに弱った。

(ことによるといまのもゆめかもしれない。)

ことによると今のも夢かも知れない。

(しかしたしかにあばれたにちがいないがと、ろうかのまんなかでかんがえこんでいると、)

しかしたしかにあばれたに違いないがと、廊下の真中で考え込んでいると、

(つきのさしているむこうのはずれで、いちにいさんわあと、)

月のさしている向うのはずれで、一二三わあと、

(さんよんじゅうにんのこえがかたまってひびいたかとおもうまもなく、)

三四十人の声がかたまって響いたかと思う間もなく、

(まえのようにひょうしをとって、いちどうがゆかいたをふみならした。)

前のように拍子を取って、一同が床板を踏み鳴らした。

(それみろゆめじゃないやっぱりじじつだ。)

それ見ろ夢じゃないやっぱり事実だ。

(しずかにしろ、よなかだぞ、とこっちもまけんくらいなこえをだして、)

静かにしろ、夜なかだぞ、とこっちも負けんくらいな声を出して、

(ろうかをむこうへかけだした。)

廊下を向うへ馳けだした。

(おれのとおるみちはくらい、ただはずれにみえるつきあかりがめじるしだ。)

おれの通る路は暗い、ただはずれに見える月あかりが目標だ。

(おれがかけだしてふたまもきたかとおもうと、)

おれが馳け出して二間も来たかと思うと、

(ろうかのまんなかで、かたいおおきなものにむこうずねをぶつけて、)

廊下の真中で、堅い大きなものに向脛をぶつけて、

(あいたいがあたまへひびくあいだに、からだはすとんとまえへほうりだされた。)

あ痛いが頭へひびく間に、身体はすとんと前へ抛り出された。

(こんちくしょうとおきあがってみたが、かけられない。)

こん畜生と起き上がってみたが、馳けられない。

(きはせくが、あしだけはいうことをきかない。)

気はせくが、足だけは云う事を利かない。

(じれったいから、いっぽんあしでとんできたら、)

じれったいから、一本足で飛んで来たら、

(もうあしおともひとごえもしずまりかえって、しんとしている。)

もう足音も人声も静まり返って、森としている。

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