坊ちゃん(14)

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夏目漱石の坊ちゃん(14)です。

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問題文

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(さんじかんめも、よじかんめもひるすぎのいちじかんもだいどうしょういであった。)

三時間目も、四時間目も昼過ぎの一時間も大同小異であった。

(さいしょのひにでたきゅうは、いずれもしょうしょうずつしっぱいした。)

最初の日に出た級は、いずれも少々ずつ失敗した。

(じゅぎょうはひととおりすんだが、まだかえれない、)

授業はひと通り済んだが、まだ帰れない、

(さんじまでぽつねんとしてまってなくてはならん。)

三時までぽつ然として待ってなくてはならん。

(さんじになると、うけもちきゅうのせいとがじぶんのきょうしつをそうじしてしらせにくるから)

三時になると、受持級の生徒が自分の教室を掃除して報知にくるから

(けんぶんをするんだそうだ。それから、しゅっせきぼをいちおうしらべてようやくおひまがでる。)

検分をするんだそうだ。それから、出席簿を一応調べてようやくお暇が出る。

(いくらげっきゅうでかわれたからだだって、あいたじかんまでがっこうへしばりつけて)

いくら月給で買われた身体だって、あいた時間まで学校へ縛りつけて

(つくえとにらめっくらをさせるなんてほうがあるものか。)

机と睨めっくらをさせるなんて法があるものか。

(しかしほかのれんちゅうはみんなおとなしくごきそくどおりやってるからしんざんのおればかり、)

しかしほかの連中はみんな大人しくご規則通りやってるから新参のおればかり、

(だだをこねるのもよろしくないとおもってがまんしていた。)

だだを捏ねるのもよろしくないと思って我慢していた。

(かえりがけに、きみなんでもかんでもさんじすぎまでがっこうにいさせるのはおろかだぜと)

帰りがけに、君何でもかんでも三時過まで学校にいさせるのは愚だぜと

(やまあらしにうったえたら、やまあらしはそうさあはははとわらったが、)

山嵐に訴えたら、山嵐はそうさアハハハと笑ったが、

(あとからまじめになって、きみあまりがっこうのふへいをいうと、いかんぜ。)

あとから真面目になって、君あまり学校の不平を云うと、いかんぜ。

(いうならぼくだけにはなせ、ずいぶんみょうなひともいるからなとちゅうこくがましいことをいった。)

云うなら僕だけに話せ、随分妙な人も居るからなと忠告がましい事を云った。

(よつかどでわかれたからくわしいことはきくひまがなかった。)

四つ角で分れたから詳しい事は聞くひまがなかった。

(それからうちへかえってくると、)

それからうちへ帰ってくると、

(やどのていしゅがおちゃをいれましょうといってやってくる。)

宿の亭主がお茶を入れましょうと云ってやって来る。

(おちゃをいれるというからごちそうをするのかとおもうと、)

お茶を入れると云うからご馳走をするのかと思うと、

(おれのちゃをえんりょなくいれてじぶんがのむのだ。)

おれの茶を遠慮なく入れて自分が飲むのだ。

(このようすではるすちゅうもかってにおちゃをいれましょうを)

この様子では留守中も勝手にお茶を入れましょうを

など

(ひとりでりこうしているかもしれない。)

一人で履行しているかも知れない。

(ていしゅがいうにはてまえはしょがこっとうがすきで、)

亭主が云うには手前は書画骨董がすきで、

(とうとうこんなしょうばいをうちうちではじめるようになりました。)

とうとうこんな商買を内々で始めるようになりました。

(あなたもおみうけもうすところだいぶごふうりゅうでいらっしゃるらしい。)

あなたもお見受け申すところ大分ご風流でいらっしゃるらしい。

(ちとどうらくにおはじめなすってはいかがですと、とんでもないかんゆうをやる。)

ちと道楽にお始めなすってはいかがですと、飛んでもない勧誘をやる。

(にねんまえあるひとのつかいにていこくほてるへいったときはじょうまえなおしとまちがえられたことがある。)

二年前ある人の使に帝国ホテルへ行った時は錠前直しと間違られた事がある。

(けっとをこうむって、かまくらのだいぶつをけんぶつしたときはくるまやからおやかたといわれた。)

ケットを被って、鎌倉の大仏を見物した時は車屋から親方と云われた。

(そのほかきょうまでみそこなわれたことはずいぶんあるが、)

その外今日まで見損われた事は随分あるが、

(まだおれをつらまえてだいぶごふうりゅうでいらっしゃるといったものはない。)

まだおれをつらまえて大分ご風流でいらっしゃると云ったものはない。

(たいていはなりやようすでもわかる。)

大抵はなりや様子でも分る。

(ふうりゅうじんなんていうものは、えをみても、ずきんをかぶるかたんざくをもってるものだ。)

風流人なんていうものは、画を見ても、頭巾を被るか短冊を持ってるものだ。

(このおれをふうりゅうじんだなどとまじめにいうのはただのくせものじゃない。)

このおれを風流人だなどと真面目に云うのはただの曲者じゃない。

(おれはそんなのんきないんきょのやるようなことはきらいだといったら、)

おれはそんな呑気な隠居のやるような事は嫌いだと云ったら、

(ていしゅはへへへへとわらいながら、)

亭主はへへへへと笑いながら、

(いえはじめからすきなものは、どなたもございませんが、)

いえ始めから好きなものは、どなたもございませんが、

(いったんこのみちにはいるとなかなかでられませんと)

いったんこの道にはいるとなかなか出られませんと

(ひとりでちゃをそそいでみょうなてつきをしてのんでいる。)

一人で茶を注いで妙な手付をして飲んでいる。

(じつはゆうべちゃをかってくれとたのんでおいたのだが、)

実はゆうべ茶を買ってくれと頼んでおいたのだが、

(こんなにがいこいちゃはいやだ。いっぱいのむといにこたえるようなきがする。)

こんな苦い濃い茶はいやだ。一杯飲むと胃に答えるような気がする。

(こんどからもっとにがくないのをかってくれといったら、)

今度からもっと苦くないのを買ってくれと云ったら、

(かしこまりましたとまたいっぱいしぼってのんだ。)

かしこまりましたとまた一杯しぼって飲んだ。

(ひとのちゃだとおもってむやみにのむやつだ。)

人の茶だと思って無暗に飲む奴だ。

(しゅじんがひきさがってから、あしたのしたよみをしてすぐねてしまった。)

主人が引き下がってから、明日の下読をしてすぐ寝てしまった。

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