千年後の世界 3 海野十三
昭和初期の作家が書いた近未来のはなし
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問題文
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(「どうしたのだろう。めざめるのがひゃくろくじゅうくにちもおそかったものだから、)
「どうしたのだろう。眼ざめるのが百六十九日もおそかったものだから、
(とびらをあけにきてくれるものがどこかにりょこうにでもでかけてしまったのでは)
扉をあけに来てくれる者がどこかに旅行にでも出かけてしまったのでは
(なかろうか」
ひらかないみっしつのなかで、このようなふあんにおそわれるということは、)
なかろうか」
開かない密室の中で、このような不安に襲われるということは、
(しけいよりもなおいっそうはげしいきょうふだった。
かれは、しんごうそうちにこしょうが)
死刑よりもなおいっそうはげしい恐怖だった。
彼は、信号装置に故障が
(あるのではないかとおもって、そのそばにいって、いくどとなくてんけんした。)
あるのではないかと思って、そのそばにいって、いくどとなく点検した。
(だが、こしょうははっけんされなかった。しからばかれのかくせいしたことが、とうきょうと)
だが、故障は発見されなかった。しからば彼の覚醒したことが、東京と
(にゅーよーくとはばろふすくのさんとへ、でんぱでもってつたえられていなければ)
ニューヨークとハバロフスクの三都へ、電波でもって伝えられていなければ
(ならぬはずだった。
「だれもたすけにこないというのは、いったいどうしたこと)
ならぬはずだった。
「誰も助けにこないというのは、いったいどうしたこと
(だろう?」
だれもとびらをひらきにこないと、せっかくかくせいしたかれふるはたも、)
だろう?」
だれも扉をひらきに来ないと、せっかく覚醒した彼フルハタも、
(あとさんじゅうにちぐらいせいぞんできるが、そのあとはぜったいにいきつづけるみこみがつかない)
あと三十日ぐらい生存できるが、その後は絶対に生きつづける見込みがつかない
(かれは、じぶんのせいめいがおしいということよりも、こうしていっせんねんごのせかいにさいせい)
彼は、自分の生命が惜しいということよりも、こうして一千年後のせかいに再生
(しながら、そのせかいをみないでしぬことが、たいへんざんねんだった。)
しながら、その世界を見ないで死ぬことが、たいへん残念だった。
(はだかのおんなきょうじゅ
そのときだった。)
【 裸の女教授 】
その時だった。
(りりん、りりん、りりーん。
けいりんが、とつぜんさえざえとしたおんきょうをあげてひびき)
リリン、リリン、リリーン。
警鈴が、とつぜん冴々とした音響をあげてひびき
(みっしつないのくうきをぱっとあかるくした。
「あっ、きたぞ、きたぞ、)
密室内の空気をぱっと明るくした。
「あっ、来たぞ、来たぞ、
(ついにきたのだ。かんおけのふたをたたいているものがある」
かんおけのふたをたたけば、)
ついに来たのだ。棺桶の蓋を叩いている者がある」
棺桶の蓋を叩けば、
(このけいりんがりーんとなるしかけになっていたのだ。さあたすけられるのだ。)
この警鈴がリーンと鳴る仕掛けになっていたのだ。さあ助けられるのだ。
(それにつづいて、ひどいしんどうがつたわってきた。いよいよこのかんおけがひらかれるのだ)
それにつづいて、ひどい振動が伝わってきた。いよいよこの棺桶が開かれるのだ
(こうふんがややおちついてきたとき、ふるはたは、いったいだれがこのかんおけをひらきに)
興奮がややおちついてきたとき、フルハタは、いったい誰がこの棺桶を開きに
(やってきたのかと、そのことにはげしいこうきしんをわかした。それは、いよいよ)
やってきたのかと、そのことにはげしい好奇心をわかした。それは、いよいよ
など
(かれのいるみっしつのとびらがひらかれるというそのちょくぜんにせまって、)
彼のいる密室の扉がひらかれるというその直前に迫って、
(いっそうはげしさをくわえた。)
いっそうはげしさを加えた。