千年後の世界 9 海野十三
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(さらにおどろいたことは、このどうろのうえに、じどうしゃみたいなのりものがひとつも)
さらにおどろいたことは、この道路のうえに、自動車みたいな乗り物が一つも
(みえないことだ。そしてにんげんが、まるでだんがんのように、しゅっしゅっとはしって)
見えないことだ。そして人間が、まるで弾丸のように、しゅっしゅっと走って
(いる。そのはやさといったら、たいへんなものである。
「ずいぶん、あのひとたち)
いる。その速さといったら、たいへんなものである。
「ずいぶん、あの人たち
(は、かけだすのがはやいですね」
とふるはたがあかもうふのようなたんそくをはなつと)
は、駈けだすのが速いですね」
とフルハタが赤毛布のような歎息をはなつと
(ちたきょうじゅはまたほほほとわらって、
「ちがいますよ、ふるはたさん。)
チタ教授はまたほほほと笑って、
「ちがいますよ、フルハタさん。
(あれはにんげんがかけだしているのではなくて、どうろがうごいているのです。)
あれは人間が駈けだしているのではなくて、道路が動いているのです。
(むかしのどうろは、じっとうごかないで、そのうえにじどうしゃだとかれっしゃとかがはしっていた)
昔の道路は、じっと動かないで、そのうえに自動車だとか列車とかが走っていた
(そうですね。いまのどうろは、いずれもみな、かいそくりょくでうごいているのです。)
そうですね。今の道路は、いずれも皆、快速力で動いているのです。
(にんげんがそのうえにのれば、どこまででもはこんでくれます」
「どうろがうごくなんて、)
人間がその上にのれば、どこまででも搬んでくれます」
「道路が動くなんて、
(たいへんなしかけだ。どうりょくだけかんがえても、ちょっとそろばんがとれまいし、)
たいへんな仕掛けだ。動力だけ考えても、ちょっと算盤がとれまいし、
(だいいちしげんが・・・・・・」
というと、ちたきょうじゅはそれをさえぎって、)
第一資源が……」
というと、チタ教授はそれをさえぎって、
(「いや、いまのよのなかには、えねるぎーはいくらでもあるのです。ぶっしつをこわせば)
「いや、今の世の中には、エネルギーはいくらでもあるのです。物質をこわせば
(いくらでもえねるぎーはとれるのです。しかもむかしとはひかくにならぬきょだいな)
いくらでもエネルギーはとれるのです。しかも昔とは比較にならぬ巨大な
(えねるぎーなんです。そんなことはしんぱいいりません」
ふるはたは、なるほど)
エネルギーなんです。そんなことは心配いりません」
フルハタは、なるほど
(とかんしんした。どうりょくのしんぱいのいらないよのなかになったのだ。じんるいはなんというこうふく)
と感心した。動力の心配のいらない世の中になったのだ。人類はなんという幸福
(なひをむかえたのだろう。
そこでふるはたは、ひとつのじゅうだいなしつもんをちたきょうじゅに)
な日を迎えたのだろう。
そこでフルハタは、一つの重大な質問をチタ教授に
(むけることをかんがえついた。
「ねえ、ちたきょうじゅ。いまのよのなかでも、せんそうは)
向けることを考えついた。
「ねえ、チタ教授。今の世の中でも、戦争は
(ありますか」
「せんそう?ええせんそうはありますとも」)
ありますか」
「戦争? ええ戦争はありますとも」
(そういっているところへ、まちじゅうをつきぬけるようなおおきなこえが、ひびきわたった)
そういっているところへ、街中をつきぬけるような大きな声が、ひびきわたった
(なにごとかはやくちでしゃべっている。ちたきょうじゅのかおが、すこしこわばったようだ。)
なにごとか早口で喋っている。チタ教授の顔が、すこし硬ばったようだ。