千年後の世界 10 海野十三
昭和初期の作家が書いた近未来のはなし
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問題文
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(そのおおきなこえがやんだところでふるはたはたずねた。
「いまのは、どうした)
その大きな声がやんだところでフルハタはたずねた。
「今のは、どうした
(というのです。あのおおきなこえは、やはりこうせいきですかね」
「そうです。)
というのです。あの大きな声は、やはり高声器ですかね」
「そうです。
(いみんしれいぶからのしらせなんです。あるばんごうまでのにんげんは、はやくちじょうへのぼって)
移民指令部からの知らせなんです。ある番号までの人間は、早く地上へのぼって
(いみんろけっとのまえにあつまれというのです」
「ははあ、するとここはちじょうじゃ)
移民ロケットの前に集まれというのです」
「ははあ、するとここは地上じゃ
(ないのですか」
「そうですとも、ちかごひゃくめーとるのところですよ」)
ないのですか」
「そうですとも、地下五百メートルのところですよ」
(「ちちゅうがいというわけですね。ちたきょうじゅ、わたしはちじょうをみたいのですが、)
「地中街というわけですね。チタ教授、私は地上を見たいのですが、
(どんなふうにちじょうのようすがかわったかをはやくしりたいのです」
「だめ、だめ」と)
どんなふうに地上の様子が変ったかを早く知りたいのです」
「だめ、だめ」と
(きょうじゅはげんかにふるはたのねがいをしりぞけた。「ちじょうへはめいれいされたひとのほか、)
教授は言下にフルハタの願いをしりぞけた。「地上へは命令された人のほか、
(でられないのです。いみんは、めいれいですから、ああしてうえへでられるのです」)
出られないのです。移民は、命令ですから、ああして上へ出られるのです」
(「いみんて、どこへいみんするのですか」
「きんせいへゆくんです。ていきてきに、)
「移民て、どこへ移民するのですか」
「金星へゆくんです。定期的に、
(ちきゅうじょうのじんるいをどんどんきんせいへおくっています」
「へえ、きんせい。あのほしのきんせいへ)
地球上の人類をどんどん金星へ送っています」
「へえ、金星。あの星の金星へ
(ですか」とふるはたはびっくりした。「とうとうほしへりょこうのできるひが)
ですか」とフルハタはびっくりした。「とうとう星へ旅行のできる日が
(きたのか」
「うまくゆけば、もうあとさんかげつのうちに、ちきゅうじょうのにんげんは)
来たのか」
「うまくゆけば、もうあと三ヵ月のうちに、地球上の人間は
(すっかりきんせいへうつってしまいます」
「えっ、するとちきゅうはからっぽになるの)
すっかり金星へうつってしまいます」
「えっ、すると地球は空っぽになるの
(ですか。いったいそれはどうしたわけです。このとうといちきゅうをすてるなんて」)
ですか。いったいそれはどうしたわけです。この尊い地球を捨てるなんて」
(「あとちょうどいちねんたてば、ちきゅうはえっくすすいせいとしょうとつして、めちゃめちゃに)
「あとちょうど一年たてば、地球はエックス彗星と衝突して、めちゃめちゃに
(こわれることがわかっているのです」
「はあ、なるほど、すいせいとのしょうとつですか」と)
壊れることが分っているのです」
「はあ、なるほど、彗星との衝突ですか」と
(ふるはたはうなずいたが、「それでちきゅうからいみんのひつようがあるんですね。)
フルハタはうなずいたが、「それで地球から移民の必要があるんですね。
(それなら、きんせいなどゆかないで、ちきゅうときこうもいちばんよくにたかせいへ)
それなら、金星などゆかないで、地球と気候もいちばんよく似た火星へ
(ゆかないのはどうしたわけです」
するとちたきょうじゅは、いままでにない)
ゆかないのはどうしたわけです」
するとチタ教授は、今までにない
など
(けわしいめをして、ふるはたをふりかえりながら、いったことである。)
険しい目をして、フルハタをふりかえりながら、いったことである。