時計のない村4(完) 小川未明

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時計のない村に時計を持ち込んだ者がいた。
日本のアンデルセンといわれる小川未明の童話。
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1 ねね 4304 C+ 4.4 96.9% 500.2 2222 69 36 2024/02/19

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問題文

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(こうのくみは、さすがに、じぶんたちのほうのとけいはくるわないただしいとけいだと、)

甲の組は、さすがに、自分たちのほうの時計は狂わない正しい時計だと、

(いよいよそのとけいのありがたみをかんじたわけです。こうなれば、おつのくみのものも)

いよいよその時計のありがたみを感じたわけです。こうなれば、乙の組のものも

(こちらにしたがわなければならぬとおもっていました。それで、そうだんがあるときは)

こちらにしたがわなければならぬと思っていました。それで、相談があるときは

(「ごご6じより。」というように、じかんをさだめて、おつのほうへつうちを)

「午後六時より。」というように、時間を定めて、乙のほうへ通知を

(いたしました。けれど、とけいをもたなくなったおつのほうは、6じがいつであるか)

いたしました。けれど、時計を持たなくなった乙のほうは、六時がいつであるか

(わかりません。こんなことで、いつもそうだんが、はかどりませんでした。)

わかりません。こんなことで、いつも相談が、はかどりませんでした。

(とけいがふたつあったときよりも、ひとつになったときのほうが、むらのまとまりが)

時計が二つあったときよりも、一つになったときのほうが、村のまとまりが

(つかなくなったのです。こうのほうも、あんがいおつのほうがじぶんたちにしたがって)

つかなくなったのです。甲のほうも、案外乙のほうが自分たちに従って

(こないのをしると、こまってしまったのです。 「まちへいって、とけいをなおして)

こないのを知ると、困ってしまったのです。 「町へいって、時計を直して

(こなければならない。」 と、おつのほうのひとりがいいました。)

こなければならない。」 と、乙のほうの一人がいいました。

(「なおしたってしかたがない。こわれるようなとけいは、もうしんようすることが)

「直したってしかたがない。壊れるような時計は、もう信用することが

(できない。」 と、ほかのひとりがいいました。)

できない。」 と、他の一人がいいました。

(「そうすれば、どうしたらいいのか。」 「こわれない、いいとけいをさがして)

「そうすれば、どうしたらいいのか。」 「壊れない、いい時計を探して

(くるよりしかたがない。」 「そんな、いいとけいは、どこへいったら)

くるよりしかたがない。」 「そんな、いい時計は、どこへいったら

(みつかるだろうか。」 と、おつのほうは、よるとあつまるとくちぐちにそのはなしを)

見つかるだろうか。」 と、乙のほうは、寄ると集まると口々にその話を

(したのであります。 おつのかねもちは、)

したのであります。  乙の金持ちは、

(「ことし、さけがよくつくれたら、とおいまちへいって、いいとけいをかってこよう。」)

「今年、酒がよく造れたら、遠い町へいって、いい時計を買ってこよう。」

(といいました。 そうしているうちに、ふと、あるひのこと、こうのほうの)

といいました。  そうしているうちに、ふと、ある日のこと、甲のほうの

(とけいもこわれてしまったのです。じぶんたちのほうのとけいは、けっしてくるうことは)

時計も壊れてしまったのです。自分たちのほうの時計は、けっして狂うことは

(ないといって、いばっていましたが、ついにそのこうのほうのとけいもこわれて)

ないといって、いばっていましたが、ついにその甲のほうの時計も壊れて

など

(しまったのです。 「やはり、とけいなんかというものはだめだ。)

しまったのです。 「やはり、時計なんかというものはだめだ。

(すぐにこわれてしまう。しんようのできるものでない。」 と、ひとりがいいますと、)

すぐに壊れてしまう。信用のできるものでない。」 と、一人がいいますと、

(「とけいがあったって、なくたって、このいちにちにはかわりがないじゃないか。」)

「時計があったって、なくたって、この一日には変わりがないじゃないか。」

(と、ほかのひとりがいいました。 こうのほうでは、おつのほうのとけいもこわれて)

と、他の一人がいいました。  甲のほうでは、乙のほうの時計も壊れて

(しまったのだから、いまさら、いそいであたらしいとけいを、まちへいってもとめるきにも)

しまったのだから、いまさら、急いで新しい時計を、町へいって求める気にも

(なりませんでした。 おつのほうでも、こうのほうのとけいがこわれたときいて、)

なりませんでした。  乙のほうでも、甲のほうの時計が壊れたと聞いて、

(いまさら、まちへいってあたらしいとけいをもとめるというきもちがおこりませんでした。)

いまさら、町へいって新しい時計を求めるという気持ちが起こりませんでした。

(むらは、いつしか、とけいのなかったむかしのじょうたいにかえったのです。そして、たよるべき)

村は、いつしか、時計のなかった昔の状態にかえったのです。そして、頼るべき

(とけいがないとおもうと、みんなは、また、むかしのように、おおぞらをあおいでたいようのあがり)

時計がないと思うと、みんなは、また、昔のように、大空を仰いで太陽の上がり

(ぐあいで、じかんをはかりました。そして、それは、すこしのふじゆうをもかれらに)

ぐあいで、時間をはかりました。そして、それは、すこしの不自由をも彼らに

(かんじさせなかったのです。とけいがこわれても、たいようは、けっしてこわれたり、)

感じさせなかったのです。時計が壊れても、太陽は、けっして壊れたり、

(くるったりすることはありませんでした。 「とけいなんか、いらない、)

狂ったりすることはありませんでした。 「時計なんか、いらない、

(おてんとうさまさえあれば、たくさんだ。」 といって、みんなは、はじめて、)

お天道さまさえあれば、たくさんだ。」 といって、みんなは、はじめて、

(たいようをありがたがりました。そして、しゅうかいのじこくもたいようのまわりぐあいで)

太陽をありがたがりました。そして、集会の時刻も太陽のまわりぐあいで

(きめましたために、みんなは、またむかしのようにいっちして、いつとなく、むらは)

きめましたために、みんなは、また昔のように一致して、いつとなく、村は

(へいわにおさまったということであります。)

平和に治まったということであります。

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