目羅博士の不思議な犯罪 四 2 江戸川乱歩
動物園を出た後、上野の森の捨て石に腰をかけ、江戸川は「男」の経験談を聞くことにした。
一から五までで一つのお話です。
順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 田虫 | 5251 | B++ | 5.3 | 97.4% | 409.2 | 2207 | 58 | 31 | 2024/10/10 |
関連タイピング
-
プレイ回数10万歌詞200打
-
プレイ回数4212かな314打
-
プレイ回数96万長文かな1008打
-
プレイ回数3.2万歌詞1030打
-
プレイ回数6万長文1159打
-
プレイ回数190かな142打
-
プレイ回数25万長文786打
-
プレイ回数522歌詞886打
問題文
(「あすこのしんさつしつのおくのへやにはね、がらすばこのなかに、ありとあらゆるかたちの)
『あすこの診察室の奥の部屋にはね、ガラス箱の中に、ありとあらゆる形の
(ぎがんが、ずらりとならべてあって、そのなんびゃくというがらすのめだまが、)
義眼が、ズラリと並べてあって、その何百というガラスの目玉が、
(じっとこちらをにらんでいるのだよ。ぎがんもあれだけならぶと、じつにきみのわるい)
じっとこちらを睨んでいるのだよ。義眼もあれ丈け並ぶと、実に気味の悪い
(ものだね。それから、がんかにあんなものがどうしてひつようなのか、がいこつだとか、)
ものだね。それから、眼科にあんなものがどうして必要なのか、骸骨だとか、
(とうしんだいのろうにんぎょうなどが、ふたつもみっつも、にょきにょきとたっているのだよ」)
等身大の蝋人形などが、二つも三つも、ニョキニョキと立っているのだよ』
(ぼくのびるでぃんぐのあるしょうにんが、めらしのしんさつをうけたときのきみょうなけいけんを)
僕のビルディングのある商人が、目羅氏の診察を受けた時の奇妙な経験を
(きかせてくれました。 ぼくはそれから、ひまさえあれば、はかせのどうせいにちゅういを)
聞かせてくれました。 僕はそれから、暇さえあれば、博士の動静に注意を
(おこたりませんでした。いっぽう、あきびるでぃんぐの、れいの5かいのまども、ときどきこちらから)
怠りませんでした。一方、空ビルディングの、例の五階の窓も、時々こちらから
(のぞいてみましたが、べつだんかわったこともありません。きいろいかおはいちどもあらわれ)
覗いて見ましたが、別段変ったこともありません。黄色い顔は一度も現われ
(なかったのです。 どうしてもめらはかせがあやしい。あのばんむかいがわのまどからのぞいて)
なかったのです。 どうしても目羅博士が怪しい。あの晩向側の窓から覗いて
(いたきいろいかおは、はかせにちがいない。だが、どうあやしいのだ。もしあのさんどの)
いた黄色い顔は、博士に違いない。だが、どう怪しいのだ。若しあの三度の
(くびつりがじさつでなくて、めらはかせのたくらんださつじんじけんであったとかていしても、)
首吊りが自殺でなくて、目羅博士の企らんだ殺人事件であったと仮定しても、
(では、なぜ、いかなるしゅだんによって、とかんがえてみると、ぱったりいきづまって)
では、なぜ、如何なる手段によって、と考えて見ると、パッタリ行詰まって
(しまうのです。それでいて、やっぱりめらはかせが、あのじけんのかがいしゃのように)
しまうのです。それでいて、やっぱり目羅博士が、あの事件の加害者の様に
(おもわれてしかたがないのです。 まいにちまいにちぼくはそのことばかりかんがえていました。)
思われて仕方がないのです。 毎日毎日僕はそのことばかり考えていました。
(あるときは、はかせのじむしょのうらのれんがべいによじのぼって、まどごしに、はかせのししつを)
ある時は、博士の事務所の裏の煉瓦塀によじ昇って、窓越しに、博士の私室を
(のぞいたこともあります。そのししつに、れいのがいこつだとか、ろうにんぎょうだとか、ぎがんの)
覗いたこともあります。その私室に、例の骸骨だとか、蝋人形だとか、義眼の
(がらすばこなどがおいてあったのです。 でもどうしてもわかりません。きょうこくを)
ガラス箱などが置いてあったのです。 でもどうしても分りません。峡谷を
(へだてた、むかいがわのびるでぃんぐから、どうしてこちらのへやのにんげんを、じゆうにする)
隔てた、向側のビルディングから、どうしてこちらの部屋の人間を、自由にする
(ことができるのか、わかりようがないのです。さいみんじゅつ?いや、それはだめです。)
ことが出来るのか、分り様がないのです。催眠術? イヤ、それは駄目です。
(しというようなじゅうだいなあんじは、まったくむこうだときいています。 ところが、さいごの)
死という様な重大な暗示は、全く無効だと聞いています。 ところが、最後の
(くびつりがあってから、はんとしほどたって、やっとぼくのうたがいをたしかめるきかいがやって)
首吊りがあってから、半年程たって、やっと僕の疑いを確める機会がやって
(きました。れいのまのへやにかりてがついたのです。かりてはおおさかからきたひとで、)
来ました。例の魔の部屋に借り手がついたのです。借り手は大阪から来た人で、
(あやしいうわさをすこしもしりませんでしたし、びるでぃんぐのじむしょにしては、)
怪しい噂を少しも知りませんでしたし、ビルディングの事務所にしては、
(すこしでもしつりょうのかせぎになることですから、なにもいわないで、かして)
少しでも室料の稼ぎになることですから、何も云わないで、貸して
(しまったのです。まさか、はんとしもたったいまごろ、またおなじことがくりかえされようとは)
しまったのです。まさか、半年もたった今頃、また同じことが繰返されようとは
(かんがえもしなかったのでしょう。 しかし、すくなくもぼくだけは、このかりても、きっと)
考えもしなかったのでしょう。 併し、少くも僕丈けは、この借手も、きっと
(くびをつるにちがいないとしんじきっていました。そして、どうかして、ぼくのちからで、)
首を吊るに違いないと信じきっていました。そして、どうかして、僕の力で、
(それをみぜんにふせぎたいとおもったのです。 そのひから、しごとはそっちのけに)
それを未然に防ぎたいと思ったのです。 その日から、仕事はそっちのけに
(して、めらはかせのどうせいばかりうかがっていました。そして、ぼくはとうとう、)
して、目羅博士の動静ばかりうかがっていました。そして、僕はとうとう、
(それをかぎつけたのです。はかせのひみつをさぐりだしたのです」)
それを嗅ぎつけたのです。博士の秘密を探り出したのです」