透明猫 2 海野十三
順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | saty | 4490 | C+ | 4.7 | 94.7% | 863.4 | 4106 | 229 | 64 | 2024/09/26 |
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問題文
(ふしぎなはっけん 「・・・・・・ねこのあたまのようだが、しかしそんなものはみえない)
【 ふしぎな発見 】 「……猫の頭のようだが、しかしそんなものは見えない
(ではないか」なんというきもちのわるいことだろう、とせいじはおもった。)
ではないか」なんという気持ちのわるいことだろう、と青二は思った。
(しかしこのときかれは、さっきとはちがって、もうよほどおちつきを)
しかしこのとき彼は、さっきとはちがって、もうよほど落ちつきを
(とりもどしていた。もういちどそのけぶかいどうぶつのあたまにさわり、それから、)
とりもどしていた。もう一度その毛深い動物の頭にさわり、それから、
(おそるおそるしたのほうへなでていった。 まったくおどろいた。たしかに、ねこと)
おそるおそる下の方へなでていった。 全くおどろいた。たしかに、猫と
(おもわれるからだがあった。しっぽもあって、ぴんぴんうごいていた。あしの)
思われるからだがあった。しっぽもあって、ぴんぴんうごいていた。足の
(うらには、たしかねこのものにちがいないつちふまずもあるし、つめもついていた。)
うらには、たしか猫のものにちがいない土ふまずもあるし、爪もついていた。
(しかしそれはまったくみえないのであった。 せいじは、いよいよおどろいたが、)
しかしそれは全く見えないのであった。 青二は、いよいよおどろいたが、
(もっとしらべをつづけた。 せいじのめにみえるふたつのたまは、どうやらこのねこの)
もっとしらべをつづけた。 青二の目に見える二つの玉は、どうやらこの猫の
(めだまであるらしくおもわれる。 それからしんはっけんがあった。みえないねこのにほんの)
目玉であるらしく思われる。 それから新発見があった。見えない猫の二本の
(まえあしが、ほそいごむのばんどでむすんであることだった。そのごむのばんどは、)
前足が、細いゴムのバンドで結んであることだった。そのゴムのバンドは、
(くさむらのなかにあって、よくよくみないと、せいじのめには、はいらない)
草むらの中にあって、よくよく見ないと、青二の目には、はいらない
(ばしょであった。 こわいよりも、いまやせいじは、こうきしんにわきたった。)
場所であった。 こわいよりも、今や青二は、好奇心にわき立った。
(せいじは、そのあやしいねこのようなどうぶつをだきあげた。たしかにねこぐらいの)
青二は、そのあやしい猫のような動物を抱きあげた。たしかに猫ぐらいの
(おもさがかんじられた。せいじは、それをしっかりとだいて、みちへでた。そして、)
重さが感じられた。青二は、それをしっかりと抱いて、道へ出た。そして、
(じぶんのいえのほうへあるきだした。 そのどうぶつは、おとなしかった。もうなきは)
自分の家の方へ歩き出した。 その動物は、おとなしかった。もうなきは
(しなかった。せいじのふところへ、もぐりこむようにして、からだをまげた。)
しなかった。青二のふところへ、もぐりこむようにして、からだをまげた。
(どうぶつのあたたかみがせいじのほうへつたわってきた。 どうぶつはねむりはじめたらしい。)
動物の温か味が青二の方へつたわって来た。 動物はねむり始めたらしい。
(「いったいこれはなにかしらん。ねこのたましいにしては、すこしへんだし・・・・・・」)
「いったいこれはなにかしらん。猫のたましいにしては、すこし変だし……」
(せいじには、このあやしいどうぶつのしょうたいを、はっきりいいあてることが)
青二には、このあやしい動物の正体を、はっきりいいあてることが
(できなかった。 やがてせいじは、いえにかえりついた。)
できなかった。 やがて青二は、家にかえりついた。
(せいじは「ただいま」といって、すぐにかいへあがった。せいじは、とちゅうでひろってきた)
青二は「ただ今」といって、すぐ二階へあがった。青二は、途中で拾ってきた
(あやしいねこみたいなどうぶつのことを、ははおやにはなしをしようかとおもったが、いやいや)
あやしい猫みたいな動物のことを、母親に話をしようかと思ったが、いやいや
(そうでない、そんなあやしいものをひろってきたことを、おかあさんがしったら、)
そうでない、そんなあやしいものを拾って来たことを、お母さんが知ったら、
(どんなにおどろくかしれない。そしてはやくそのようなものはすてておしまいと)
どんなにおどろくかしれない。そして早くそのようなものは捨てておしまいと
(いわれるだろう。それではせっかくこわいめをしてひろってきたのに、つまらない)
いわれるだろう。それではせっかくこわい目をして拾ってきたのに、つまらない
(ことになってしまう。そうおもってせいじは、そのあやしいどうぶつをだいたまますぐにかいの)
事になってしまう。そう思って青二は、その怪しい動物を抱いたまますぐ二階の
(じぶんのへやにあがってしまったのである。 にかいへあがったものの、せいじは、)
自分の部屋にあがってしまったのである。 二階へあがったものの、青二は、
(ちょっとこまってしまった。このあやしいどうぶつをどこへおいたらいいかと)
ちょっと困ってしまった。このあやしい動物をどこへおいたらいいかと
(いうことだ。そのままおいておけば、きっとでていってしまうだろう。にげられ)
いうことだ。そのままおいておけば、きっと出ていってしまうだろう。逃げられ
(たんでは、いやだ。 とだなにいれようか。いや、ねこはふすまをやぶることなんか)
たんでは、いやだ。 戸棚に入れようか。いや、猫はふすまを破ることなんか
(へいきだから、とだなではあんしんならない。 「せいじや。なにをしておいでだい。)
平気だから、戸棚では安心ならない。 「青二や。なにをしておいでだい。
(ごはんですよ。はやくおりていらっしゃい」 はしごだんのしたから、ははおやがにかいへ)
ご飯ですよ。早くおりていらっしゃい」 はしご段の下から、母親が二階へ
(こえをかけた。 「はーい。いまいくよ」)
声をかけた。 「はーい。今行くよ」
(さあ、どうしようかと、せいじはこまってしまった。 が、こまったときには、)
さあ、どうしようかと、青二は困ってしまった。 が、困ったときには、
(よくめいあんがうかぶものである。せいじは、つくえのひきだしをひっぱりだして、ひもを)
よく名案がうかぶものである。青二は、机のひきだしをひっぱりだして、ひもを
(さがした。あかとあおのだんだらの、にもつをくくるひもがあった。それをだすとかれは)
探した。赤と青のだんだらの、荷物をくくるひもがあった。それを出すと彼は
(あやしいどうぶつのあとあしにほんを、そのひもでいっしょにぐるぐるしばってしまった。)
あやしい動物の後足二本を、そのひもでいっしょにぐるぐるしばってしまった。
(こうすれば、このあやしいどうぶつは、まえあしもあとあしもにほんずつしばられて)
こうすれば、このあやしい動物は、前足も後足も二本ずつしばられて
(いるんだから、もうあるくことができない。あるくことができなければ、このへや)
いるんだから、もう歩くことができない。歩くことができなければ、この部屋
(から、でてゆくこともない。よしよし、これならだいじょうぶと、せいじはそれがすむと)
から、出てゆくこともない。よしよし、これなら大丈夫と、青二はそれがすむと
(つくえのうえにそっとおいて、はしごだんをしたへおりていった。 ゆうはんのおぜんを、)
机の上にそっとおいて、はしご段を下へおりていった。 夕飯のおぜんを、
(ははおやとかこんで、いつものようにたべた。ははおやは、ほうそうきょくにはかわったことが)
母親とかこんで、いつものように食べた。母親は、放送局にはかわったことが
(なかったかときいた。せいじは、なにもかわったことがなく、おとうさんはえんぴつを)
なかったかと聞いた。青二は、なにもかわったことがなく、お父さんは鉛筆を
(いっぽんくれたと、こたえた。 しょくじがすんだ。)
一本くれたと、答えた。 食事がすんだ。
(ははおやがだいどころのほうへいっているひまに、せいじはさらのうえからたべのこりのさかなのほねを)
母親が台所の方へいっているひまに、青二は皿の上からたべのこりの魚の骨を
(そっとてのひらへうつした。そしてきゅうにたって、にかいへとんとんとあがっていった。)
そっと掌へうつした。そして急に立って、二階へとんとんとあがっていった。
(「せいじ、おまちよ、りんごをひとつ、あげるから・・・・・・」 ははおやがこえをかけたが、)
「青二、お待ちよ、りんごを一つ、あげるから……」 母親が声をかけたが、
(せいじは、 「うん。あとでもらうから、いまはいいよ」)
青二は、 「うん。あとでもらうから、今はいいよ」
(と、いいすててにかいへあがった。すぐつくえのまえへとんでいった。 つくえのうえには)
と、いいすてて二階へあがった。すぐ机の前へとんでいった。 机の上には
(みおぼえのあるあかとあおとのだんだらのひもと、ごむのばんどがあった。きみの)
見おぼえのある赤と青とのだんだらのひもと、ゴムのバンドがあった。気味の
(わるいふたつのめだまらしいものも、そこにあった。 「にゃーお。う、う、う」)
わるい二つの目玉らしいものも、そこにあった。 「にゃーお。う、う、う」
(「これがほしいんだろう。さあ、おたべ」 せいじは、さかなのほねを、ひかるめだまの)
「これがほしいんだろう。さあ、おたべ」 青二は、魚の骨を、光る目玉の
(したへおいてやった。すると、かりかりとほねをかむおとがした。ほねがくだけて、つくえの)
下へおいてやった。すると、かりかりと骨をかむ音がした。骨がくだけて、机の
(うえからすこしもちあがった。そしてそれはやがてせんのようにつながって、)
上からすこしもちあがった。そしてそれはやがて線のようにつながって、
(だんだんとうえにあがりそれからよこにのびていった。 「き、きもちがわるいなあ」)
だんだんと上にあがりそれから横にのびていった。 「き、気持がわるいなあ」
(せいじは、ぞっとした。さかなのほねが、どうぶつのくちへはいってくだかれ、それから)
青二は、ぞっとした。魚の骨が、動物の口へはいってくだかれ、それから
(しょくどうをとおって、いぶくろのほうへいくらしい。それがすいてみえるのだった。)
食道をとおって、胃ぶくろの方へ行くらしい。それが透いてみえるのだった。
(「ふーん。たしかにこれはみえないねこだ。とうめいねこだ。なぜこんなふしぎなどうぶつが)
「ふーん。たしかにこれは見えない猫だ。透明猫だ。なぜこんなふしぎな動物が
(いきているんだろうか」 せいじは、おそろしくもなったが、またこのみえない)
生きているんだろうか」 青二は、おそろしくもなったが、またこの見えない
(ねこがきちょうなものにおもわれてきて、ひざのうえにのせてしきりになでてやった。)
猫が貴重なものに思われてきて、膝の上にのせてしきりになでてやった。
(そのうちに、ふたつのめだまがうごかなくなった。とうめいねこは、ひざのうえでねむりはじめ)
そのうちに、二つの目玉が動かなくなった。透明猫は、膝の上でねむりはじめ
(たらしい。しかしそのとき、せいじがふしぎにおもったのは、ひろったときはたいへん)
たらしい。しかしそのとき、青二がふしぎに思ったのは、拾ったときはたいへん
(はっきりみえていためだまが、いまはぼんやりとしかみえないことだった。)
はっきり見えていた目玉が、今はぼんやりとしか見えないことだった。