異妖編「新牡丹燈記」1 岡本綺堂

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江戸時代の怪異談
「K君はこの座中で第一の年長者であるだけに、江戸時代の怪異談をたくさんに知っていて、それからそれへと立て続けに五、六題の講話があった。そのなかで特殊のもの三題を選んで左に紹介する。」
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 berry 7443 7.6 97.9% 361.8 2750 57 40 2024/04/17
2 ねね 4151 C 4.2 97.1% 650.4 2781 81 40 2024/02/28
3 とうじ 2850 E+ 3.1 90.1% 865.6 2769 302 40 2024/04/16

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問題文

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(せんとうしんわのうちのぼたんとうきをほんあんした、かのさんとうきょうでんのうきぼたんぜんでんや、)

剪燈新話のうちの牡丹燈記を翻案した、かの山東京伝の浮牡丹全伝や、

(さんゆうていえんちょうのかいだんぼたんどうろうや、それらはいずれもゆうめいなものになっているが、)

三遊亭円朝の怪談牡丹燈籠や、それらはいずれも有名なものになっているが、

(それらとはまたすこしちがってこんなはなしがつたえられている。)

それらとはまたすこし違ってこんな話が伝えられている。

(かえいしょねんのことである。よつやしおまちのかめだやというあぶらやのにょうぼうがくまきちという)

嘉永初年のことである。四谷塩町の亀田屋という油屋の女房が熊吉という

(こぞうをつれて、いちがやのかっぱさかしたをとおった。それは7がつ12にちのよるの)

小僧をつれて、市ヶ谷の合羽坂下を通った。それは七月十二日の夜の

(よっつはん(ごご11じ)にちかいころで、こんやはここらのくみやしきやあきんどみせをあいてに)

四つ半(午後十一時)に近いころで、今夜はここらの組屋敷や商人店を相手に

(ちいさいくさいちがひらかれていたのであるが、やまのてのことであるからげっけいじの)

小さい草市が開かれていたのであるが、山の手のことであるから月桂寺の

(よっつのかねをあいずに、それらのしょうにんもみなみせをしまってかえって、みちばたには)

四つの鐘を合図に、それらの商人もみな店をしまって帰って、路ばたには

(うれのこりのくさのはなどがちっていた 「よくあとかたづけをしていかないんだね」)

売れのこりの草の葉などが散っていた 「よく後片付けをして行かないんだね」

(こんなことをいいながら、にょうぼうはこぞうにもたせたちょうちんのひをたよりに)

こんなことを言いながら、女房は小僧に持たせた提灯の火をたよりに

(くらいよみちをたどっていった。まちやのにょうぼうがさびしいよふけに、どうしてここらを)

暗い夜路をたどって行った。町家の女房がさびしい夜ふけに、どうしてここらを

(あるいているかというと、それはしんせきにふこうがあって、そのくやみにいった)

歩いているかというと、それは親戚に不幸があって、その悔みに行った

(かえりみちであった。ほんらいならばつやをすべきであるが、ぼんまえでみせのほうもいそがしいので)

帰り路であった。本来ならば通夜をすべきであるが、盆前で店の方も忙しいので

(いわゆるはんつやでよつすぎにそこをでてきたのである。つきのないくらいそらで、)

いわゆる半通夜で四つ過ぎにそこを出て来たのである。月のない暗い空で、

(しょしゅうのよふけのかぜがひやひやとはだにしみるので、にょうぼうはうすいきもののそでを)

初秋の夜ふけの風がひやひやと肌にしみるので、女房は薄い着物の袖を

(かきあわせながらみちをいそいだ。 いっときかはんときまえまではとちそうおうににぎわっていた)

かきあわせながら路を急いだ。  一時か半時前までは土地相応に賑わっていた

(らしいくさいちのあとも、ひとひとりとおらないほどにしずまっていた。にょうぼうがいうとおり、)

らしい草市のあとも、人ひとり通らないほどに静まっていた。女房がいう通り、

(いちしょうにんはろくろくにあとかたづけをしていかないとみえて、そこらにはしおれた)

市商人は碌々に後片付けをして行かないとみえて、そこらにはしおれた

(みそはぎや、やぶれたはすのはなどがきたならしくちっていた。)

鼠尾草(みそはぎ)や、破れた蓮の葉などが穢ならしく散っていた。

(とうもろこしのからやすいかのかわなどもころがっていた。そのろうぜきたるなかをふみわけて)

唐もろこしの殻や西瓜の皮なども転がっていた。その狼藉たるなかを踏みわけて

など

(ふたりはあしをはやめてくると、3、4けんさきにぼんどうろうのかげをみた。それはふつうの)

ふたりは足を早めてくると、三、四間さきに盆燈籠のかげを見た。それは普通の

(かたちのしろいきりこどうろうで、べつにふしぎもないのであるが、それがおうらいのほとんど)

形の白い切子燈籠で、別に不思議もないのであるが、それが往来のほとんど

(まんなかで、しかもつちのうえにすえられてあるようにみえたのが、このふたりの)

まん中で、しかも土の上に据えられてあるように見えたのが、このふたりの

(ちゅういをひいた。 「くまきち。ごらんよ。とうろうはどうしたんだろう。)

注意をひいた。 「熊吉。御覧よ。燈籠はどうしたんだろう。

(おかしいじゃないか。」と、にょうぼうはこごえでいった。 こぞうもたちどまった。)

おかしいじゃないか。」と、女房は小声で言った。  小僧も立ちどまった。

(「だれかがおとしていったんですかしら。」 おとしものもいろいろあるが、)

「誰かが落して行ったんですかしら。」  落し物もいろいろあるが、

(きりこどうろうをおうらいのまんなかにおとしていくのはすこしおかしいとにょうぼうはおもった。)

切子燈籠を往来のまん中に落して行くのは少しおかしいと女房は思った。

(こぞうはもっているちょうちんをかざして、そのとうろうのしょうたいをたしかにみとどけようと)

小僧は持っている提灯をかざして、その燈籠の正体をたしかに見届けようと

(すると、いままでしろくみえたとうろうがだんだんにうすあかくなった。さながらそれに)

すると、今まで白くみえた燈籠がだんだんに薄あかくなった。さながらそれに

(ひがはいったようにおもわれるのである。そうして、そのしろいおをよかぜにかるく)

灯がはいったように思われるのである。そうして、その白い尾を夜風に軽く

(なびかせながら、ちのうえからふわふわとまいあがっていくらしい。)

なびかせながら、地の上からふわふわと舞いあがっていくらしい。

(にょうぼうはつめたいみずをあびせられたようなこころもちになって、おもわずこぞうのてを)

女房は冷たい水を浴びせられたような心持になって、思わず小僧の手を

(しっかりとつかんだ。 「ねえ、おまえ。どうしたんだろうね。」)

しっかりと掴んだ。 「ねえ、お前。どうしたんだろうね。」

(「どうしたんでしょう。」 くまきちもいきをのみこんで、あやしいきりこどうろうのかげを)

「どうしたんでしょう。」  熊吉も息を呑み込んで、怪しい切子燈籠の影を

(じっとみつめていると、それはあまりたかくもあがらなかった。せいぜいがじめんから)

じっと見つめていると、それは余り高くも揚がらなかった。せいぜいが地面から

(3、4しゃくほどのところをたかくひくくゆらめいて、まえにいくかとおもうとまたあとのほうへ)

三、四尺ほどのところを高く低くゆらめいて、前に行くかと思うと又あとの方へ

(もどってくる。ちょっとみるとかぜにふかれてただよっているようにもおもわれるが、)

戻ってくる。ちょっと見ると風に吹かれて漂っているようにも思われるが、

(かりにもぼんどうろうほどのものがかぜにふかれてくうちゅうをまいあるくはずもない。)

かりにも盆燈籠ほどのものが風に吹かれて空中を舞いあるく筈もない。

(ことにうすあかるくみえるのもふしぎである。なにかのたましいがこのとうろうに)

ことに薄あかるくみえるのも不思議である。何かのたましいがこの燈籠に

(やどっているのではないかとおもうと、にょうぼうはいよいよぶきみになった。)

宿っているのではないかと思うと、女房はいよいよ不気味になった。

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