異妖編「龍を見た話」3 岡本綺堂

投稿者chiroプレイ回数247
難易度(5.0) 2561打 長文タグ長文 小説 タイピング文庫 怪談
江戸時代の怪異談
「K君はこの座中で第一の年長者であるだけに、江戸時代の怪異談をたくさんに知っていて、それからそれへと立て続けに五、六題の講話があった。そのなかで特殊のもの三題を選んで左に紹介する。」
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 HAKU 7223 7.4 97.2% 344.3 2560 73 36 2021/01/22
2 subaru 7142 7.5 95.1% 338.4 2548 131 36 2021/01/21
3 おっ 7098 7.5 93.9% 335.4 2546 165 36 2021/02/02
4 ma 6337 S 6.5 97.3% 392.1 2555 70 36 2021/01/28
5 みき 6094 A++ 6.3 96.7% 404.6 2552 86 36 2021/01/26

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問題文

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(「してみると、あいつほうじょうにあやかって、いまにてんかをとるかな。」と、わらうものも)

「してみると、あいつ北条にあやかって、今に天下を取るかな。」と、笑う者も

(あった。 「てんかをとらずとも、くみがしらぐらいにはしゅっせするかもしれないぞ。」と)

あった。 「天下を取らずとも、組頭ぐらいには出世するかも知れないぞ。」と

(うらやましそうにいうものもあった。 こんなうわさがこひとつきもつづいているうちに、)

羨ましそうに言う者もあった。  こんな噂が小ひと月もつづいているうちに、

(それがおばのつとめているまつだいらさがみのかみのやしきへもきこえて、いちどそれを)

それが叔母の勤めている松平相模守の屋敷へもきこえて、一度それを

(みせてもらいたいといってきた。そのときには、おばはもうぜんかいしていた。ほかの)

みせてもらいたいと言って来た。その時には、叔母はもう全快していた。ほかの

(やしきとはちがうので、いしろうはこころよくしょうちして、しんおおはしのしもやしきへでていったのは、)

屋敷とは違うので、伊四郎は快く承知して、新大橋の下屋敷へ出て行ったのは、

(9がつはつかすぎのうららかにはれたあさであった。うろこはわたぎれにつつんで、ちいさい)

九月二十日過ぎのうららかに晴れた朝であった。鱗は錦切れにつつんで、小さい

(しらきのはこにいれて、そのうえをさらにふくさにつつんで、たいせつにかかえていった。)

白木の箱に入れて、その上を更に袱紗につつんで、大切にかかえて行った。

(おばはじぶんがいちおうけんぶんしたうえで、さらにそれをおくへささげていった。いくにんが)

叔母は自分が一応検分した上で、さらにそれを奥へささげて行った。幾人が

(みたのかしらないが、そのあいだいしろうはいっときほどもまたされた。)

見たのか知らないが、そのあいだ伊四郎は一時ほども待たされた。

(「めずらしいものをみたとおおせられて、みなさまごまんぞくでござりました。」と、)

「めずらしい物を見たと仰せられて、みなさま御満足でござりました。」と、

(おばもよろこばしそうにはなした。「これはおまえのいえのたからじゃ。たいせつにしまって)

叔母も喜ばしそうに話した。「これはお前の家の宝じゃ。大切に仕舞って

(おきなされ。」 これはおくからくだされたのだといって、いしろうはここで)

置きなされ。」  これは奥から下されたのだといって、伊四郎はここで

(おりょうりのごちそうになった。かれはよわないていどにさけをのみ、ひるめしをくって、)

お料理の御馳走になった。彼は酔わない程度に酒をのみ、ひる飯を食って、

(ここのつはん(ごご1じ)すぐるころにおいとまもうしてでた。 かれがやしきのもんをでたのは、)

九つ半(午後一時)過ぐる頃にお暇申して出た。  彼が屋敷の門を出たのは、

(もんばんもたしかにみとどけたのであるが、いしろうはそれぎりどこへいって)

門番もたしかに見届けたのであるが、伊四郎はそれぎり何処へ行って

(しまったのか、そのひがくれても、おかちまちのいえへはかえらなかった。いえでもしんぱい)

しまったのか、その日が暮れても、御徒町の家へは帰らなかった。家でも心配

(しておばのところへききあわせると、みぎのしだいでやしきのもんをでたあとのことは)

して叔母のところへ聞合せると、右の次第で屋敷の門を出た後のことは

(わからなかった。それからふつかをすぎ、みっかをすぎても、いしろうはそのすがたを)

判らなかった。それから二日を過ぎ、三日を過ぎても、伊四郎はその姿を

(どこにもみせなかった。かれはりゅうのうろこをかかえたままで、なぜちくでんしてしまった)

どこにも見せなかった。彼は龍の鱗をかかえたままで、なぜ逐電してしまった

など

(のか、だれにもそうぞうがつかなかった。 ただひとつのてがかりは、)

のか、誰にも想像が付かなかった。  ただひとつの手がかりは、

(とうじつのここのつはんごろにさかやのこぞうがはまちょうがしをとおりかかると、いままではれていた)

当日の九つ半ごろに酒屋の小僧が浜町河岸を通りかかると、今まで晴れていた

(そらがたちまちくらくなって、ぞくにたつまきというすさまじいつむじかぜがふきたった。こぞうは)

空がたちまち暗くなって、俗に龍巻という凄まじい旋風が吹き起った。小僧は

(たまらなくなって、じめんにしばらくうつぶしていると、つむじかぜはひとしきりで、)

たまらなくなって、地面にしばらく俯伏していると、旋風は一としきりで、

(てんちはふたたびもとのようにあかるくなった。あきのそらはあおぞらにかがやいて、おおかわのみずは)

天地は再び元のように明るくなった。秋の空は青空にかがやいて、大川の水は

(なんにもしらないようにしずかにながれていた。つむじかぜはしょうぶぶんにおこったらしく、)

なんにも知らないように静かに流れていた。旋風は小部分に起ったらしく、

(そこらきんじょにもべつにひがいはないらしくみえた。ただこのこぞうのすこしさきを)

そこら近所にも別に被害はないらしく見えた。ただこの小僧のすこし先を

(あるいていたはおりばかまのさむらいが、つむじかぜのやんだときにはもうみえなくなっていたという)

あるいていた羽織袴の侍が、旋風のやんだ時にはもう見えなくなっていたという

(ことであるが、そのいっせつな、こぞうはめをとじてちにふしていたのであるから、)

ことであるが、その一刹那、小僧は眼をとじて地に伏していたのであるから、

(そのあいだにさむらいはとおりすぎてしまったのかもしれない。 いしろうがみたのは)

そのあいだに侍は通り過ぎてしまったのかも知れない。  伊四郎が見たのは

(りゅうではない、おそらくさんしょううおであろうというものもあった。そのころのえどには)

龍ではない、おそらく山椒魚であろうという者もあった。そのころの江戸には

(かわやふるいけにおおきいさんしょううおもすんでいたらしい。それがあらしのために)

川や古池に大きい山椒魚も棲んでいたらしい。それが風雨(あらし)のために

(まよいだしたので、うろこはなにかほかのさかなのものであろうとせつめいするものもあった。)

迷い出したので、鱗はなにかほかの魚のものであろうと説明する者もあった。

(いずれにしても、かれがゆくえふめいになったのはじじつである。かれはとうじ28さいで)

いずれにしても、彼がゆくえ不明になったのは事実である。彼は当時二十八歳で

(ふうふのあいだにこはなかった。じじょうがじじょうで、きゅうようしのとどけをだすという)

夫婦のあいだに子はなかった。事情が事情で、急養子の届けを出すという

(わけにもいかなかったので、そのいえはむなしくだんぜつした。)

わけにもいかなかったので、その家はむなしく断絶した。

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