幽霊船の秘密11 海野十三
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問題文
(なぜかせんびから、つなばしごがさんじょうもたれていた。2ごうていのゆうしたちは、)
なぜか船尾から、綱梯子が三条も垂れていた。二号艇の勇士たちは、
(つぎつぎにかえるのように、このつなばしごにとびついた。かいたにもじゅうをせにななめに)
つぎつぎに蛙のように、この綱梯子にとびついた。貝谷も銃を背に斜めに
(おうたまま、ひらりときょくちょうのとなりのはしごにとびつき、そのままたったっと)
負うたまま、ひらりと局長のとなりの梯子にとびつき、そのままたったっと
(げんそくへのぼっていった。かれはいちばんのりをするつもりらしい。)
舷側へのぼっていった。彼は一番乗りをするつもりらしい。
(「おいかいたに、ゆだんをするな」 はやくもそれをみとめて、ふるやきょくちょうがこえをかけた)
「おい貝谷、油断をするな」 早くもそれをみとめて、古谷局長が声をかけた
(きょくちょうはしろざやのたんとうをこしにさしている。あとげんそくまで、ほんのひとのびだ。)
局長は白鞘の短刀を腰にさしている。あと舷側まで、ほんの一伸びだ。
(おそれているわけではないがむねがおどる。きょくちょうは、ひょいとからだをかるくうかして)
おそれているわけではないが胸が躍る。局長は、ひょいと身体をかるく浮かして
(げんそくにてをかけた。そしてしずかにあたまをあげていった。 「みえた、かんぱんだ」)
舷側に手をかけた。そしてしずかに頭をあげていった。 「見えた、甲板だ」
(ふるやきょくちょうは、げんそくごしにかんぱんをながめ、 「ふーん、やっぱりだれもいない」)
古谷局長は、舷側ごしに甲板をながめ、 「ふーん、やっぱり誰もいない」
(「きょくちょう、かんぱんにじんこつがちらばっています。あそこです。おや、こっちにも。)
「局長、甲板に人骨が散らばっています。あそこです。おや、こっちにも。
(・・・・・・ち、ちくしょう、どうするかおぼえていろ!」 とかいたにがさけんだ。)
……ち、畜生、どうするか覚えていろ!」 と貝谷が叫んだ。
(「なるほど、こいつはすごい。ゆうれいというやつが、こんなにあらっぽいものだと)
「なるほど、こいつは凄い。幽霊というやつが、こんなに荒っぽいものだと
(しったのは、こんどがはじめてだ」)
知ったのは、こんどが始めてだ」
(せんないのかいこう あらしのいきおいがおとろえ、あめはだいぶこやみになった。)
【船内の怪光】 嵐の勢いがおとろえ、雨はだいぶん小やみになった。
(かいせんのげんそくにすずなりになっている2ごうていのめんめんは、もうとつげきめいれいがくだるかと、)
怪船の舷側に鈴なりになっている二号艇の面々は、もう突撃命令がくだるかと、
(めいめいにないふやぼうきれをにぎってからだをかたくしている 「さあ、とつげきようい!」)
めいめいにナイフや棒切を握って身体をかたくしている 「さあ、突撃用意!」
(ふるやきょくちょうが、いよいよごうれいをかけた。 「せんないそうさくのときは、かならずふたりいじょう)
古谷局長が、いよいよ号令をかけた。 「船内捜索のときは、必ず二人以上
(くんでゆけ。ひとりきりではいっていっちゃだめだぞ。まずおれたちは)
組んでゆけ。一人きりで入っていっちゃ駄目だぞ。まずおれたちは
(ぶりっじをせんりょうする。そこで10ふんかんたってもいじょうがなかったら、)
船橋(ブリッジ)を占領する。そこで十分間たっても異状がなかったら、
(てをあげるから、こんどはみんなでせんないそうさくだ」 そういいすてるようにして)
手をあげるから、こんどはみんなで船内捜索だ」 そういい捨てるようにして
(きょくちょうはげんそくをみがるくとびこえ、かんぱんのうえにおどりあがった。)
局長は舷側を身軽くとび越え、甲板のうえに躍りあがった。
(つづいて、じゅうをもったかいたにが、かんぱんじょうのひととなる。のこりのていいんたちは、)
つづいて、銃を持った貝谷が、甲板上の人となる。残りの艇員たちは、
(ばしょをさらにうえにうつして、げんそくごしに、りょうにんのこうどうをじっとちゅうしする。)
場所をさらに上にうつして、舷側越しに、両人の行動をじっと注視する。
(そのとき、またそらがくらくなって、しろいあめがどっとふってきた。かんぱんをはうきょくちょうと)
そのとき、また空が暗くなって、白い雨がどっと降ってきた。甲板を這う局長と
(かいたにのすがたがいたましくあめにたたかれ、ぼーっとかすむ。 「とっしんだ」)
貝谷の姿が痛ましく雨にたたかれ、ぼーっと霞む。 「突進だ」
(ふるやきょくちょうは、かいたにをうながすと、だっとのようにかけだした。そしてぶりっじにつづく)
古谷局長は、貝谷をうながすと、脱兎のように駈けだした。そして船橋につづく
(せまいしょうこうかいだんをするするとのぼった。 「やっぱりだれもいないですね」)
狭い昇降階段をするするとのぼった。 「やっぱり誰もいないですね」
(かいたにはあめにたたかれているぶりっじをじっとみまわした。 「きょくちょう、どうもさっきから)
貝谷は雨に叩かれている船橋をじっとみまわした。 「局長、どうもさっきから
(きになっているんだが、みょうなものがありますぜ。あれをごらんなさい」)
気になっているんだが、妙なものがありますぜ。あれをごらんなさい」
(かいたには、ぶりっじのうえをきみわるそうにさした。 「あめにあらわれて、うすくしか)
貝谷は、船橋のうえを気味わるそうに指した。 「雨に洗われて、うすくしか
(みえませんが、ちのかたまりをたたきつけたようなものが、てんてんとしているのでは)
見えませんが、血の固まりを叩きつけたようなものが、点々としているのでは
(ないですか」 「そうです。もしここがりくじょうなら、いやじゃんぐるなら、)
ないですか」 「そうです。もしここが陸上なら、いやジャングルなら、
(もうじゅうのあしあととでもいうところでしょうな」 「ふん、じょうだんじゃないよ。)
猛獣の足跡とでもいうところでしょうな」 「ふん、冗談じゃないよ。
(ここはうみのうえじゃないか」 といったが、ふるやきょくちょうもかいたにのさした)
ここは海の上じゃないか」 といったが、古谷局長も貝谷の指した
(みょうなちのはんてんがなんであるか、とくことができなかった。そのうちに、)
妙な血の斑点がなんであるか、解くことができなかった。そのうちに、
(よていの10ふんかんはいつのまにかたってしまった。 「きょくちょう、げんそくのところで、)
予定の十分間はいつの間にか経ってしまった。 「局長、舷側のところで、
(みんながきょくちょうのしんごうをまっていますぜ」 「ああ、そうか。)
みんなが局長の信号を待っていますぜ」 「ああ、そうか。
(じゃあ、いよいよせんないをさがしてみることにしよう」 そういってきょくちょうは、)
じゃあ、いよいよ船内を探してみることにしよう」 そういって局長は、
(まっているいちどうのほうへてをあげて、かかれのあいずをおくった。)
待っている一同の方へ手をあげて、懸れの合図をおくった。
(まっていましたとばかり、いちどうはどやどやとかんぱんじょうにおどりあがった。)
待っていましたとばかり、一同はどやどやと甲板上に躍りあがった。
(「おいかいたに。せんしつのほうへいってみよう」ふたりはせんしつのほうへおりていったが、)
「おい貝谷。船室の方へいってみよう」二人は船室の方へ下りていったが、
(どのむろのとびらもこわれたり、またはひらいていてしつないはたとえようもなくみだれている。)
どの室の扉も壊れたり、または開いていて室内はたとえようもなく乱れている。
(「いったいここのせんきゃくたちは、どうしたんだろうね」 「ゆうれいにくいころされ)
「一体ここの船客たちは、どうしたんだろうね」 「幽霊に喰い殺され
(ちまったんですよ」 「そうかなあ、それにしてはあまりにさんじょうがひどすぎるよ)
ちまったんですよ」 「そうかなあ、それにしてはあまりに惨状がひどすぎるよ
(ふん、ひょっとすると、このきせんのなかに、おそろしいはやりやまいがはやりだして、)
ふん、ひょっとすると、この汽船の中に、恐ろしい流行病がはやりだして、
(ぜんいんみんなそれにたおれてしまったのではないかな」 「えっ、はやりやまいですって」)
全員みんなそれに斃れてしまったのではないかな」 「えっ、流行病ですって」
(かいたにのかおいろはさっとかわった。 「そうだ、そうかもしれない。たとえば、)
貝谷の顔色はさっと変った。 「そうだ、そうかもしれない。たとえば、
(ぺすととか、あるいはまた、まだにんげんがしらないようなさいきんがこのせんないに)
ペストとか、或いはまた、まだ人間が知らないような細菌がこの船内に
(とびこんでさ、くすりもなにもやくにたたないから、みなしんでしまった)
とびこんでさ、薬もなにも役に立たないから、皆死んでしまった
(というのはどうだ」 「しかしきょくちょう、じんこつだけのこっていて、まんぞくなじんたいが)
というのはどうだ」 「しかし局長、人骨だけ残っていて、満足な人体が
(のこっていないのはどういうわけですかな」 そういっているうちに、)
残っていないのはどういうわけですかな」 そういっているうちに、
(ふたりはぶりっじへつうずるかいだんのところへでた。そのときかのせんそうから、)
二人は船橋へ通ずる階段のところへ出た。そのとき下の船艙から、
(なにかことんとものおとがしたのを、ふたりはどうじにききとがめた。そのみょうなものおとは、)
なにかことんと物音がしたのを、二人は同時に聞きとがめた。その妙な物音は、
(ずっとしたのせんそうからきこえる。ふたりはそのものおとをおってついに2ばんせんそうのそこまで)
ずっと下の船艙からきこえる。二人はその物音を追ってついに二番船艙の底まで
(はいりこんだ。あたりはでんとうもきえてまっくらであった。が、どこからともなく)
はいりこんだ。あたりは電灯も消えて真暗であった。が、どこからともなく
(ふいてくるちなまぐさいかぜ! 「あっ、あんなところに、なにかきらきらひかって)
吹いてくる血なまぐさい風! 「あっ、あんなところに、なにかキラキラ光って
(いるものがある!」 と、かいたにがきょくちょうのうでをぐっとひきよせた。)
いるものがある!」 と、貝谷が局長の腕をぐっと引寄せた。