怪人二十面相16 江戸川乱歩
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問題文
(ろうじんがくびをかしげているのをみて、さなえさんがとつぜんくちをはさみました。)
老人が首を傾げているのを見て、早苗さんが突然口を挟みました。
(「おとうさま、それはあけちこごろうたんていよ。あのひとならばけいさつでさじをなげたじけんを、)
「お父様、それは明智小五郎探偵よ。あの人ならば警察で匙を投げた事件を、
(いくつもかいけつしたっていうほどのめいたんていですわ」 「そうそう、そのあけちこごろうと)
幾つも解決したっていう程の名探偵ですわ」 「そうそう、その明智小五郎と
(いうじんぶつでした。じつにえらいおとこだそうで、にじゅうめんそうとはかっこうのとりくみで)
いう人物でした。実にえらい男だそうで、二十面相とは格好の取り組みで
(ございましょうて」 「うん、そのなはわしもきいたことがある。ではそのたんていを)
ございましょうて」 「ウン、その名は儂も聞いた事がある。ではその探偵を
(そっとよんで、ひとつそうだんしてみることにしようか。せんもんかには、われわれにそうぞうの)
そっと呼んで、一つ相談してみる事にしようか。専門家には、我々に想像の
(およばないめいあんがあるかもしれん」 そして、けっきょくあけちこごろうにこのじけんを)
及ばない名案があるかもしれん」 そして、結局明智小五郎にこの事件を
(いらいすることにはなしがきまったのでした。 さっそく、こんどうろうじんがでんわちょうをしらべて、)
依頼する事に話が決まったのでした。 早速、近藤老人が電話帳を調べて、
(あけちたんていのたくにでんわをかけました。すると、でんわぐちからこどもらしいこえで、)
明智探偵の宅に電話を掛けました。すると、電話口から子どもらしい声で、
(こんなへんじがきこえてきました。 「せんせいはいま、あるじゅうだいなじけんのために)
こんな返事が聞こえてきました。 「先生は今、ある重大な事件の為に
(がいこくへしゅっちょうちゅうですから、いつおかえりともわかりません。しかし、せんせいのだいりを)
外国へ出張中ですから、何時お帰りとも分かりません。しかし、先生の代理を
(つとめているこばやしというじょしゅがおりますから、そのひとでよければ、すぐおうかがい)
務めている小林という助手がおりますから、その人で良ければ、すぐお伺い
(いたします」 「ああ、そうですか。だが、ひじょうななんじけんですからねえ。)
致します」 「ああ、そうですか。だが、非常な難事件ですからねえ。
(じょしゅのほうではどうも・・・・・・」 こんどうしはいにんがちゅうちょしていますと、せんぽうからは)
助手の方ではどうも……」 近藤支配人が躊躇していますと、先方からは
(おっかぶせるように、げんきのよいこえがひびいてきました。 「じょしゅといっても、)
おっかぶせるように、元気のよい声が響いてきました。 「助手といっても、
(せんせいにおとらぬうでききなんです。じゅうぶんごしんらいなすっていいとおもいます。)
先生に劣らぬ腕利きなんです。十分ご信頼なすっていいと思います。
(ともかく、いちどおうかがいしてみることにいたしましょう」 「そうですか。)
ともかく、一度お伺いしてみる事に致しましょう」 「そうですか。
(では、すぐにひとつごそくろうくださるようにおつたえください。ただ、おことわりして)
では、すぐに一つご足労下さるようにお伝え下さい。ただ、お断わりして
(おきますが、じけんをごいらいしたことがあいてかたにしれてはたいへんなのです。ひとのせいめいに)
おきますが、事件をご依頼した事が相手方に知れては大変なのです。人の生命に
(かんすることなのです。じゅうぶんごちゅういのうえ、だれにもさとられぬよう、こっそりと)
関する事なのです。十分ご注意の上、誰にも悟られぬよう、こっそりと
(おたずねください」 「それはおっしゃるまでもなく、よくこころえております」)
お訪ねください」 「それは仰るまでもなく、よく心得ております」
(そういうもんどうがあって、いよいよこばやしというめいたんていがやってくることに)
そういう問答があって、いよいよ小林という名探偵がやって来る事に
(なりました。 でんわがきれて10ふんもたったかとおもわれたころ、ひとりのかわいらしい)
なりました。 電話が切れて十分も経ったかと思われた頃、一人の可愛らしい
(しょうねんがはしばけのげんかんにたって、あんないをこいました。ひしょがとりつぎにでますと)
少年が羽柴家の玄関に立って、案内を乞いました。秘書が取次ぎに出ますと
(そのしょうねんは、 「ぼくはそうじくんのおともだちです」)
その少年は、 「僕は壮二君のお友達です」
(とじこしょうかいをしました。 「そうじさんはいらっしゃいませんが」)
と自己紹介をしました。 「壮二さんはいらっしゃいませんが」
(とこたえると、しょうねんは、さもあらんというかおつきで、 「おおかたそんなことだろうと)
と答えると、少年は、さもあらんという顔つきで、 「大方そんな事だろうと
(おもいました。では、おとうさんにちょっとあわせてください。ぼくのおとうさんから)
思いました。では、お父さんにちょっと会わせてください。僕のお父さんから
(ことづけがあるんです。ぼく、こばやしっていうもんです」 と、すましてかいけんを)
言付けがあるんです。僕、小林っていうもんです」 と、澄まして会見を
(もうしこみました。 ひしょからそのはなしをきくと、そうたろうしは、こばやしというなに)
申し込みました。 秘書からその話を聞くと、壮太郎氏は、小林という名に
(こころあたりがあるものですから、ともかく、おうせつしつにとおさせました。)
心当たりがあるものですから、ともかく、応接室に通させました。
(そうたろうしがはいっていきますと、りんごのようにつやつやしたほおの、めのおおきい)
壮太郎氏が入って行きますと、林檎のように艶々した頬の、目の大きい
(12、3さいのしょうねんがたっていました。 「はしばさんですか、はじめまして。)
十二、三歳の少年が立っていました。 「羽柴さんですか、はじめまして。
(ぼく、あけちたんていじむしょのこばやしっていうもんです。おでんわをくださいましたので、)
僕、明智探偵事務所の小林っていうもんです。お電話を下さいましたので、
(おうかがいしました」 しょうねんはめをくりくりさせて、はっきりしたくちょうで)
お伺いしました」 少年は目をくりくりさせて、はっきりした口調で
(いいました。 「ああ、こばやしさんのおつかいですか。ちとこみいったじけんなのでね)
言いました。 「ああ、小林さんのお使いですか。ちと込み入った事件なのでね
(ごほんにんにきてもらいたいのだが・・・・・・」 そうたろうしがいいかけるのを、)
ご本人に来てもらいたいのだが……」 壮太郎氏が言いかけるのを、
(しょうねんはてをあげてとめるようにしながらこたえました。)
少年は手を上げて止めるようにしながら答えました。
(「いえ、ぼくがそのこばやしよしおです。ほかにじょしゅはいないのです」)
「いえ、僕がその小林芳雄です。他に助手はいないのです」
(「ほほう、きみがごほんにんですか」 そうたろうしはびっくりしました。とどうじに、)
「ホホウ、君がご本人ですか」 壮太郎氏はびっくりしました。と同時に、
(なんだかみょうにゆかいなきもちになってきました。こんなちっぽけなこどもが、)
何だか妙に愉快な気持になってきました。こんなちっぽけな子どもが、
(めいたんていだなんてほんとうかしら。だが、かおつきやことばづかいは、なかなか)
名探偵だなんて本当かしら。だが、顔つきや言葉遣いは、なかなか
(たのもしそうだわい。ひとつ、このこどもにそうだんをかけてみるかな。)
頼もしそうだわい。ひとつ、この子どもに相談をかけてみるかな。