怪人二十面相24 江戸川乱歩

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少年探偵団シリーズ1作目

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問題文

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(ぴっぽちゃんは、しょうねんたんていのますこっとでした。かれはこのますこっとといっしょに)

ピッポちゃんは、少年探偵のマスコットでした。彼はこのマスコットと一緒に

(いさえすればどんなきなんにあってもだいじょうぶだという、しんこうのようなものを)

いさえすればどんな危難にあっても大丈夫だという、信仰のようなものを

(もっていたのです。 そればかりではありません。このはとは)

持っていたのです。  そればかりではありません。このハトは

(ますこっととしてのほかに、まだじゅうだいなやくめをもっていました。たんていのしごとには)

マスコットとしての外に、まだ重大な役目を持っていました。探偵の仕事には

(つうしんきかんがなによりもたいせつです。そのためには、けいさつにはらじおをそなえたじどうしゃが)

通信機関が何よりも大切です。その為には、警察にはラジオを備えた自動車が

(ありますけれど、ざんねんながらしりつたんていにはそういうものがないのです。)

ありますけれど、残念ながら私立探偵にはそういう物がないのです。

(もしようふくのしたへかくせるようなこがたらじおはっしんきがあればいちばんいいのですが、)

もし洋服の下へ隠せるような小型ラジオ発信器があれば一番良いのですが、

(そんなものはてにはいらないものですから、こばやししょうねんはでんしょばとという、おもしろいしゅだんを)

そんな物は手に入らない物ですから、小林少年は伝書バトという、面白い手段を

(かんがえついたのでした。 いかにもこどもらしいおもいつきでした。)

考えついたのでした。  如何にも子どもらしい思い付きでした。

(でも、こどものむじゃきなおもいつきが、ときにはおとなをびっくりさせるような、)

でも、子どもの無邪気な思い付きが、時には大人をびっくりさせるような、

(こうかをあらわすことがあるのです。 「ぼくのかばんのなかに、ぼくのらじおももっているし)

効果を表す事があるのです。 「僕のカバンの中に、僕のラジオも持っているし

(それからぼくのひこうきももっているんだ」 こばやししょうねんは、さもとくいそうに)

それから僕の飛行機も持っているんだ」  小林少年は、さも得意そうに

(そんなひとりごとをいっていることがありました。なるほど、でんしょばとはらじおでもあり、)

そんな独り言を言っている事がありました。成程、伝書バトはラジオでもあり、

(ひこうきでもあるわけです。 さて、ななつどうぐのてんけんをおわりますと、)

飛行機でもあるわけです。  さて、七つ道具の点検を終わりますと、

(かれはまんぞくそうにかばんをころものなかにかくし、つぎにはかいちゅうでんとうで、ちかしつのもようを)

彼は満足そうにカバンを衣の中に隠し、次には懐中電燈で、地下室の模様を

(しらべはじめました。 ちかしつは10じょうじきほどのひろさで、しほうこんくりーとのかべに)

調べ始めました。  地下室は十畳敷き程の広さで、四方コンクリートの壁に

(つつまれた、いぜんはものおきにでもつかわれていたらしいへやでした。どこかにかいだんが)

包まれた、以前は物置きにでも使われていたらしい部屋でした。どこかに階段が

(あるはずだとおもってさがしてみますと、おおきなきのはしごがへやのいっぽうのてんじょうに)

ある筈だと思って捜してみますと、大きな木の梯子が部屋の一方の天井に

(つりあげてあることがわかりました。でいりぐちをふさいだだけではたりないで、)

釣り上げてあることが分かりました。出入り口を塞いだだけでは足りないで、

(かいだんまでとりあげてしまうとは、じつにようじんぶかいやりかたといわねばなりません。)

階段まで取り上げてしまうとは、実に用心深い遣り方と言わねばなりません。

など

(このちょうしでは、ちかしつからにげだすことなどおもいもおよばないのです。)

この調子では、地下室から逃げ出す事など思いも及ばないのです。

(へやのすみに1きゃくのこわれかかったながいすがおかれ、そのうえにいちまいのふるもうふが)

部屋の隅に一脚の壊れかかった長イスが置かれ、その上に一枚の古毛布が

(まるめてあるほかには、どうぐらしいものはなにいっぴんありません。まるでろうごくのような)

丸めてある外には、道具らしい物は何一品ありません。まるで牢獄のような

(かんじです。 こばやししょうねんはそのながいすをみて、おもいあたるところがありました。)

感じです。  小林少年はその長イスを見て、思い当るところがありました。

(「はしばそうじくんは、きっとこのちかしつにかんきんされていたんだ。そしてこの)

「羽柴壮二君は、きっとこの地下室に監禁されていたんだ。そしてこの

(ながいすのうえでねむったにちがいない」 そうおもうと、なにかなつかしいかんじがして、)

長イスの上で眠ったに違いない」  そう思うと、何か懐かしい感じがして、

(かれはながいすにちかづき、くっしょんをおしてみたりもうふをひろげてみたり)

彼は長イスに近づき、クッションを押してみたり毛布を広げてみたり

(するのでした。 「じゃ、ぼくもこのべっどでひとねむりするかな」)

するのでした。 「じゃ、僕もこのベッドでひと眠りするかな」

(だいたんふてきのしょうねんたんていは、そんなひとりごとをいって、ながいすのうえにごろりと)

大胆不敵の少年探偵は、そんな独り言を言って、長イスの上にゴロリと

(よこになりました。 ばんじはよるがあけてからのことです。それまでにじゅうぶんえいきを)

横になりました。  万事は夜が明けてからの事です。それまでに十分鋭気を

(やしなっておかねばなりません。なるほど、りくつはそのとおりですが、このおそろしいきょうぐうに)

養っておかねばなりません。成程、理屈はその通りですが、この恐ろしい境遇に

(あってのんきにひとねむりするなんて、ふつうのしょうねんには、とてもまねのできない)

あって呑気にひと眠りするなんて、普通の少年には、とても真似の出来ない

(ことでした。 「ぴっぽちゃん、さあねむろうよ。そして、おもしろいゆめでもみようよ」)

事でした。 「ピッポちゃん、さあ眠ろうよ。そして、面白い夢でもみようよ」

(こばやししょうねんは、ぴっぽちゃんのはいっているかばんをだいじそうにだいて、やみのなかに)

小林少年は、ピッポちゃんの入っているカバンを大事そうに抱いて、闇の中に

(めをふさぎました。そしてまもなく、ながいすのしんだいのうえからすやすやと、)

目を塞ぎました。そして間もなく、長イスの寝台の上からすやすやと、

(さもやすらかなしょうねんのねいきがきこえてくるのでした。)

さも安らかな少年の寝息が聞こえてくるのでした。

(でんしょばと こばやししょうねんはふとめをさますと、へやのようすが)

【伝書バト】  小林少年はふと目を覚ますと、部屋の様子が

(いつものたんていじむしょのしんしつとちがっているのでびっくりしましたが、)

いつもの探偵事務所の寝室と違っているのでびっくりしましたが、

(たちまちゆうべのできごとをおもいだしました。 「ああ、ちかしつにかんきんされて)

たちまち夕べの出来事を思い出しました。 「ああ、地下室に監禁されて

(いたんだっけ。でも、ちかしつにしちゃあ、へんにあかるいなあ」)

いたんだっけ。でも、地下室にしちゃあ、へんに明るいなあ」

(さっぷうけいなこんくりーとのかべやゆかが、ほんのりとうすあかるくみえています。)

殺風景なコンクリートの壁や床が、ほんのりと薄明るく見えています。

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