怪人二十面相37 江戸川乱歩

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プレイ回数2200難易度(5.0) 2928打 長文
少年探偵団シリーズ1作目

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問題文

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(「それほどにおっしゃるなら、ともかくおひきうけしましょう。にじゅうめんそうはぼくにとっても)

「それ程に仰るなら、ともかくお引き受けしましょう。二十面相は僕にとっても

(てきです。はやくあらわれてくれるのを、まちかねていたほどです。 では、ごいっしょに)

敵です。早く現れてくれるのを、待ちかねていた程です。  では、ご一緒に

(まいりましょうか、そのまえに、いちおうはけいさつともうちあわせをしておかなければ)

参りましょうか、その前に、一応は警察とも打ち合わせをしておかなければ

(なりません。やどへかえってぼくからでんわをかけましょう。そして、まんいちのよういに、)

なりません。宿へ帰って僕から電話を掛けましょう。そして、万一の用意に、

(2、3にんけいじのおうえんをたのむことにしましょう。あなたはひとあしさきへおかえりください。)

二、三人刑事の応援を頼む事にしましょう。貴方は一足先へお帰り下さい。

(ぼくはけいじといっしょに、すぐかけつけます」 あけちのくちょうは、にわかにねつをおびて)

僕は刑事と一緒に、すぐ駆け付けます」  明智の口調は、俄かに熱を帯びて

(きました。もうつりざおなんかみむきもしないのです。 「ありがとう、ありがとう。)

きました。もう釣り竿なんか見向きもしないのです。 「有難う、有難う。

(これでわしもひゃくまんのみかたをえたおもいです」 ろうじんはむねをなでおろしながら、)

これで儂も百万の味方を得た思いです」  老人は胸を撫で下ろしながら、

(くりかえしくりかえし、おれいをいうのでした。)

繰り返し繰り返し、お礼を言うのでした。

(ふあんのいちや くさかべさもんろうじんが、しゅぜんじでやとったじどうしゃをとばして、)

【不安の一夜】  日下部左門老人が、修善寺で雇った自動車を飛ばして、

(たにぐちむらの「おしろ」へかえってから30ふんほどして、あけちこごろうのいっこうがとうちゃくしました)

谷口村の「お城」へ帰ってから三十分程して、明智小五郎の一行が到着しました

(いっこうは、ぴったりとみにあうくろのようふくにきがえたあけちたんていのほかに、せびろふくの)

一行は、ピッタリと身に合う黒の洋服に着替えた明智探偵の外に、背広服の

(くっきょうなしんしが3にん、みなけいさつぶんしょづめのけいじで、それぞれかたがきつきのめいしを)

屈強な紳士が三人、皆警察分署詰めの刑事で、それぞれ肩書き付きの名刺を

(だして、さもんろうじんとあいさつをかわしました。 ろうじんはすぐさま、4にんをおくまった)

出して、左門老人と挨拶を交わしました。  老人はすぐさま、四人を奥まった

(めいがのへやへあんないして、かべにかけならべたかけじくや、はこにおさめてたなに)

名画の部屋へ案内して、壁に掛け並べた掛け軸や、箱に納めて棚に

(つみかさねてあるおびただしいこくほうてきけっさくをしめし、いちいちそのゆいしょをせつめいするのでした。)

積み重ねてある夥しい国宝的傑作を示し、一々その由緒を説明するのでした。

(「こりゃあどうも、じつにおどろくべきごしゅうしゅうですねえ。ぼくもこがはだいすきで、)

「こりゃあどうも、実に驚くべきご収集ですねえ。僕も古画は大好きで、

(ひまがあると、はくぶつかんやじいんのほうもつなどをみてまわるのですが、れきしてきなけっさくが)

暇があると、博物館や寺院の宝物等を見て回るのですが、歴史的な傑作が

(こんなにいっしつにあつまっているのを、みたことがありませんよ。)

こんなに一室に集まっているのを、見た事がありませんよ。

(びじゅつずきのにじゅうめんそうがめをつけたのは、むりもありませんね。ぼくでもよだれが)

美術好きの二十面相が目を付けたのは、無理もありませんね。僕でも涎が

など

(たれるようですよ」 あけちたんていは、かんたんにたえぬもののように、ひとつひとつの)

垂れるようですよ」  明智探偵は、感嘆に堪えぬもののように、一つ一つの

(めいがについてさんじをならべるのでしたが、そのひひょうのことばが、そのみちのせんもんかにも)

名画について賛辞を並べるのでしたが、その批評の言葉が、その道の専門家にも

(およばぬほどくわしいのには、さすがのさもんろうじんもびっくりしてしまいました。)

及ばぬ程詳しいのには、さすがの左門老人も吃驚してしまいました。

(そして、めいたんていへのそんけいのねんが、ひとしおふかくなるのでした。 さて、すこしはやめに)

そして、名探偵への尊敬の念が、一入深くなるのでした。  さて、少し早めに

(いちどうゆうしょくをすませると、いよいよめいがしゅごのぶしょにつくことになりました。 )

一同夕食を済ませると、いよいよ名画守護の部署に付く事になりました。

(あけちはてきぱきしたくちょうで3にんのけいじにさしずをして、ひとりはめいがしつのなかへ、)

明智はテキパキした口調で三人の刑事に指図をして、一人は名画室の中へ、

(ひとりはおもてもん、ひとりはうらぐちに、それぞれてつやをして、みはりばんをつとめ、)

一人は表門、一人は裏口に、それぞれ徹夜をして、見張り番を務め、

(あやしいもののすがたをみとめたら、ただちによびこをふきならすというあいずまで)

怪しい者の姿を認めたら、直ちに呼び子を吹き鳴らすという合図まで

(きめたのです。 けいじたちがめいめいのぶしょにつくと、あけちたんていはめいがしつの)

決めたのです。  刑事達が銘々の部署に付くと、明智探偵は名画室の

(がんじょうないたどをそとからぴっしゃりしめて、ろうじんにかぎをかけさせてしまいました。)

頑丈な板戸を外からピッシャリ閉めて、老人に鍵を掛けさせてしまいました。

(「ぼくは、このとのまえに、ひとばんじゅうがんばっていることにしましょう」)

「僕は、この戸の前に、一晩中頑張っている事にしましょう」

(めいたんていはそういって、いたどのまえのたたみろうかに、どっかりすわりました。)

名探偵はそう言って、板戸の前の畳廊下に、ドッカリ座りました。

(「せんせい、だいじょうぶでしょうな。せんせいにこんなことをもうしてはしつれいかもしれませんが、)

「先生、大丈夫でしょうな。先生にこんな事を申しては失礼かもしれませんが、

(あいてはなにしろ、まほうつかいみたいなやつだそうですからね。わしは、なんだかまだ、)

相手は何しろ、魔法使いみたいな奴だそうですからね。儂は、何だかまだ、

(ふあんしんなようなきがするのですが」 ろうじんはあけちのかおいろをみながら、)

不安心なような気がするのですが」  老人は明智の顔色を見ながら、

(いいにくそうにたずねるのです。 「ははは・・・・・・、ごしんぱいなさることはありません。)

言い難そうに尋ねるのです。 「ハハハ……、ご心配なさる事はありません。

(ぼくはさっき、じゅうぶんしらべたのですが、へやのまどにはげんじゅうなてつごうしが)

ぼくは先刻、十分調べたのですが、部屋の窓には厳重な鉄格子が

(はめてあるし、かべはあつさが30せんちもあって、ちっとやそっとでやぶれる)

填めてあるし、壁は厚さが三十センチもあって、ちっとやそっとで破れる

(ものではないし、へやのまんなかにはけいじくんが、めをみはっているんだし、)

物ではないし、部屋の真ん中には刑事君が、目を見張っているんだし、

(そのうえ、たったひとつのでいりぐちにはぼくじしんががんばっているんですからね。)

その上、たった一つの出入り口には僕自身が頑張っているんですからね。

(これいじょう、ようじんのしようはないくらいですよ。)

これ以上、用心の仕様はない位ですよ。

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