三人の百姓5 秋田雨雀

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三人の仲の良い百姓が、赤ん坊を拾った。その赤ん坊は実は……。
ふりがなが独特な部分がありますが、参考文書のままになっています。

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問題文

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(こどものなは、あさひろったので、あさたろうとつけましたが、そのあさたろうも、)

子供の名は、朝拾ったので、朝太郎とつけましたが、その朝太郎も、

(もう4さいになりました。かおだちこそうつくしいが、しじゅうたはたややまへつれていくので、)

もう四歳になりました。顔立こそ美しいが、始終田畑や山へつれて行くので、

(いろがまっくろになって、ひゃくしょうのこどもとしてはずかしくないようなかおになって)

色が真黒になって、百姓の子供として恥かしくないような顔になって

(しまいました。むろんきものなぞも、ひゃくしょうのこどものきるようなものをきせていたので)

しまいました。無論着物なぞも、百姓の子供の着るようなものを着せていたので

(ほんとにたろうえもんふうふのこどもだといっても、だれもふしぎにおもうものが)

ほんとに太郎右衛門夫婦の子供だと言っても、誰も不思議に思うものが

(ないくらいでありました。 はなしかわって、あのたろうえもんといっしょにこどもをみつけた)

ない位でありました。  話変って、あの太郎右衛門と一緒に子供を見つけた

(いさくとたすけはどうしたでしょう?いさくとたすけはそのあと、だんだんなかが)

伊作と多助はどうしたでしょう? 伊作と多助はその後、だんだん仲が

(わるくなって、いつでもけんかばかりしていました。いさくはあるとしのなつ、はしのたもとに)

悪くなって、いつでも喧嘩ばかりしていました。伊作はある年の夏、橋の畔に

(ちいさないざかやをこしらえましたが、むらにはいっけんもさかやがなかったので、このいざかやが)

小さな居酒屋を造えましたが、村には一軒も酒屋がなかったので、この居酒屋が

(たいそうはんじょうしてだんだんもうかっていきました。いさくはいまではたをたがやしたり、すみを)

大層繁昌してだんだん儲かって行きました。伊作は今では田を耕したり、炭を

(やいたりしないでも、りっぱにたべていかれるようになりました。たすけは、そのころ)

焼いたりしないでも、立派に食べて行かれるようになりました。多助は、その頃

(むらのはずれにちいさなすいしゃごやをもっていましたが、まいにちいさくのみせによってはさけを)

村の端に小さな水車小屋を持っていましたが、毎日伊作の店に寄っては酒を

(のんだり、ひざかなをたべたりして、すこしもかんじょうをはらわないので、それがどだいになって)

飲んだり、干魚を食たりして、少しも勘定を払わないので、それが土台になって

(ふたりはいつでもけんかをしました。ふたりはけんかをしたかとおもうとなかなおりをし、)

二人はいつでも喧嘩をしました。二人は喧嘩をしたかと思うと仲直りをし、

(なかなおりをしたかとおもうと、またけんかをしました。 むらのひとたちには、どうして)

仲直りをしたかと思うと、また喧嘩をしました。  村の人たちには、どうして

(あんなになかのよかったいさくとたすけが、こんなけんかをするようになったのかだれも)

あんなに仲の好かった伊作と多助が、こんな喧嘩をするようになったのか誰も

(しりませんでした。 あさたろうが4さいになったあきのはじめに、じょうかからだいかんさまが)

知りませんでした。  朝太郎が四歳になった秋の初めに、城下から代官様が

(おおぜいのけらいにからかごをまもらせて、このさびしいむらへやってきました。むらのひとたちは)

大勢の家来に空駕籠を護らせて、この淋しい村へやって来ました。村の人たちは

(きもをつぶしてぎょうれつをみていました。するとだいかんさまのいっこうは、しょうやちょうざえもんのいえに)

胆をつぶして行列を見ていました。すると代官様の一行は、庄屋長左衛門の家に

(どやどやとはいりました。しょうやはかおをまっさおにしてだいかんさまのまえにでました。)

どやどやと入りました。庄屋は顔を真青にして代官様の前に出ました。

など

(「まだもみじにはおはようございますが、いったいどういうごようでおいで)

「まだ紅葉にはお早ようございますが、一体どういう御用でおいで

(なさいましたか、どうぞごようをおおせつけてください」 としょうやはたたみにあたまを)

なさいましたか、どうぞ御用を仰せつけてください」 と庄屋は畳に頭を

(つけてあいさつしました。すると、だいかんさまはわらって、 「じつは、きょうはみょうなそうだんが)

つけて挨拶しました。すると、代官様は笑って、 「実は、今日は妙な相談が

(あってきたのだが、そうだんにのってくれるだろうかね?」 といいました。)

あって来たのだが、相談にのってくれるだろうかね?」 と言いました。

(ちょうざえもんは、ますますきょうしゅくして、 「これはまことにおそれいります。おだいかんさまの)

長左衛門は、益々恐縮して、 「これは誠に恐れ入ります。御代官様の

(ごそうだんならばどんなことでもおあいてになりましょう。どうかなんなりと)

御相談ならばどんなことでも御相手になりましょう。どうか何んなりと

(おおせつけください」 といいました。)

仰せつけください」 と言いました。

(「さっそくだが、このむらにあさたろうというおとこのこがいるそうだが、そのこどもをもらい)

「早速だが、この村に朝太郎という男の子がいるそうだが、その子供を貰い

(うけるわけにはいかないだろうか?」 とだいかんはいいだしました。)

受ける訳には行かないだろうか?」 と代官は言い出しました。

(「さあ・・・・・・」といったきり、ちょうざえもんはなんともあとのくがでなくなりました。)

「さあ……」と言ったきり、長左衛門は何とも後の句が出なくなりました。

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