怪人二十面相58 江戸川乱歩

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少年探偵団シリーズ1作目

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問題文

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(さいぜんからのようすを、すっかりみとどけたこじきは、ふろうにんをやりすごしておいて、)

最前からの様子を、すっかり見届けた乞食は、浮浪人を遣り過ごしておいて、

(そのあとからそっとつけていきましたが、あけちていをすこしはなれたところで、いきなり)

その後からそっとつけて行きましたが、明智邸を少し離れたところで、いきなり

(「おい、おまえさん」 と、おとこによびかけました。)

「おい、お前さん」 と、男に呼び掛けました。

(「えっ」 びっくりしてふりむくと、そこにたっているのは、きたならしいこじきです。)

「エッ」  吃驚して振り向くと、そこに立っているのは、汚らしい乞食です。

(「なんだい、おこもさんか。おらあ、ほどこしをするようなかねもちじゃあねえよ」)

「何だい、おこもさんか。おらあ、施しをするような金持じゃあねえよ」

(ふろうにんはいいすてて、たちさろうとします。 「いや、そんなことじゃない。)

浮浪人は言い捨てて、立ち去ろうとします。 「いや、そんなことじゃない。

(すこしきみにききたいことがあるんだ」 「なんだって?」)

少し君に聞きたい事があるんだ」 「何だって?」

(こじきのくちのききかたがへんなので、おとこはいぶかしげに、そのかおをのぞきこみました。)

乞食の口のきき方が変なので、男は訝しげに、その顔を覗き込みました。

(「おれはこうみえても、ほんもののこじきじゃないんだ。じつは、きみだからはなすがね。)

「俺はこう見えても、本物の乞食じゃないんだ。実は、君だから話すがね。

(おれはにじゅうめんそうのてしたのものなんだ。けさっから、あけちのやろうのみはりを)

俺は二十面相の手下の者なんだ。今朝っから、明智の野郎の見張りを

(していたんだよ。だが、きみもあけちには、よっぽどうらみがあるらしいようすだね」)

していたんだよ。だが、君も明智には、よっぽど恨みがあるらしい様子だね」

(ああ、やっぱり、こじきはにじゅうめんそうのぶかのひとりだったのです。)

ああ、やっぱり、乞食は二十面相の部下の一人だったのです。

(「うらみがあるどころか、おらあ、あいつのためにけいむしょへぶちこまれたんだ。)

「恨みがあるどころか、おらあ、あいつの為に刑務所へぶち込まれたんだ。

(どうかして、このうらみをかえしてやりたいとおもっているんだ」 ふろうにんは、)

どうかして、この恨みを返してやりたいと思っているんだ」  浮浪人は、

(またしても、にぎりこぶしをふりまわして、ふんがいするのでした。)

またしても、にぎりこぶしをふりまわして、憤慨するのでした。

(「なまえはなんていうんだ」 「あかいとらぞうってもんだ」)

「名前は何ていうんだ」 「赤井寅三ってもんだ」

(「どこのみうちだ」 「おやぶんなんてねえ。いっぽんだちよ」)

「どこの身内だ」 「親分なんてねえ。一本立ちよ」

(「ふん、そうか」 こじきはしばらくかんがえておりましたが、やがて、なにをおもったか、)

「フン、そうか」  乞食は暫く考えておりましたが、やがて、何を思ったか、

(こんなふうにきりだしました。 「にじゅうめんそうというおやぶんのなまえをしっているか」)

こんな風に切り出しました。 「二十面相という親分の名前を知っているか」

(「そりゃあきいているさ。すげえうでまえだってね」 「すごいどころか、まるで)

「そりゃあ聞いているさ。すげえ腕前だってね」 「すごいどころか、まるで

など

(まほうつかいだよ。こんどなんか、はくぶつかんのこくほうを、すっかりぬすみだそうという)

魔法使いだよ。今度なんか、博物館の国宝を、すっかり盗み出そうという

(いきおいだからね・・・・・・。ところで、にじゅうめんそうのおやぶんにとっちゃ、このあけちこごろうって)

勢いだからね……。ところで、二十面相の親分にとっちゃ、この明智小五郎って

(やろうは、てきもどうぜんなんだ。あけちにうらみのあるきみとは、おなじたちばなんだ。)

野郎は、敵も同然なんだ。明智に恨みのある君とは、同じ立ち場なんだ。

(きみ、にじゅうめんそうのおやぶんのてしたになるきはないか。そうすりゃあ、うんとうらみが)

君、二十面相の親分の手下になる気はないか。そうすりゃあ、うんと恨みが

(かえせようというもんだぜ」 あかいとらぞうは、それをきくと、こじきのかおを、)

返せようというもんだぜ」  赤井寅三は、それを聞くと、乞食の顔を、

(まじまじとながめていましたが、やがて、はたとてをうって、 「よし、おらあ)

まじまじと眺めていましたが、やがて、ハタと手を打って、 「よし、おらあ

(それにきめた。あにき、そのにじゅうめんそうのおやぶんに、ひとつひきあわせてくんねえか」)

それに決めた。兄貴、その二十面相の親分に、ひとつ引き合わせてくんねえか」

(と、でしいりをしょもうするのでした。 「うん、ひきあわせるとも。)

と、弟子入りを所望するのでした。 「ウン、引き合わせるとも。

(あけちにそんなうらみのあるきみなら、おやぶんはきっとよろこぶぜ。だがな、そのまえに、)

明智にそんな恨みのある君なら、親分はきっと喜ぶぜ。だがな、その前に、

(おやぶんへのみやげに、ひとつてがらをたてちゃどうだ。それも、あけちのやろうをひっさらう)

親分への土産に、一つ手柄を立てちゃどうだ。それも、明智の野郎をひっさらう

(しごとなんだぜ」 こじきすがたのにじゅうめんそうのぶかは、あたりをみまわしながら、)

仕事なんだぜ」  乞食姿の二十面相の部下は、辺りを見回しながら、

(こえをひくめていうのでした。)

声を低めて言うのでした。

(めいたんていのききゅう 「ええ、なんだって、あのやろうをひっさらうんだって、)

【名探偵の危急】 「ええ、何だって、あの野郎をひっ攫うんだって、

(そいつあおもしれえ。ねがってもないことだ。てつだわせてくんねえ。)

そいつあおもしれえ。願ってもないことだ。手伝わせてくんねえ。

(ぜひてつだわせてくんねえ。で、それはいったい、いつのことなんだ」)

是非手伝わせてくんねえ。で、それはいったい、何時の事なんだ」

(あかいとらぞうは、もうむちゅうになってたずねるのです。 「こんやだよ」)

赤井寅三は、もう夢中になって尋ねるのです。 「今夜だよ」

(「え、え、こんやだって。そいつあすてきだ。だが、どうしてひっさらおうと)

「え、え、今夜だって。そいつあ素敵だ。だが、どうしてひっ攫おうと

(いうんだね」 「それがね、やっぱりにじゅうめんそうのおやぶんだ、うまいてだてを)

言うんだね」 「それがね、やっぱり二十面相の親分だ、うまい手立てを

(くふうしたんだよ。というのはね、こぶんのなかに、すてきもねえうつくしいおんながあるんだ)

工夫したんだよ。と言うのはね、子分の中に、すてきもねえ美しい女があるんだ

(そのおんなを、どっかのわかいおくさんにしたてて、あけちのやろうのよろこびそうな、)

その女を、どっかの若い奥さんに仕立てて、明智の野郎の喜びそうな、

(こみいったじけんをこしらえてたんていをたのみにいかせんだ。)

込み入った事件を拵えて探偵を頼みに行かせんだ。

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