吸血鬼44

投稿者桃仔プレイ回数230
難易度(4.5) 4510打 長文 長文モード可タグ明智小五郎 江戸川乱歩 小説 長文 吸血鬼
明智小五郎シリーズ
江戸川乱歩の作品です。句読点以外の記号は省いています。
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 aria 8377 8.6 97.0% 518.9 4483 136 64 2021/06/08
2 hayao 8315 8.6 96.7% 517.7 4454 149 64 2021/05/14
3 おちり 8120 8.4 96.6% 529.9 4457 154 64 2021/06/10
4 おっ 7608 8.0 95.0% 556.9 4468 231 64 2021/05/14
5 HAKU 6998 S++ 7.3 95.0% 610.6 4506 233 64 2021/05/13

関連タイピング

問題文

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(しずこは、じしつのすみっこで、じゅうめんをつくったしげるしょうねんを、だきかかえて、)

倭文子は、自室の隅っこで、渋面を作った茂少年を、抱きかかえて、

(ぶるぶるふるえていたので、いちどう、まさかかのじょがとうぼうするとはおもわず、ついめを)

ブルブル震えていたので、一同、まさか彼女が逃亡するとは思わず、つい目を

(はなして、げんばちょうさやめしつかいのじんもんをつづけていた。ところが、しらべがおわって、)

離して、現場調査や召使の訊問を続けていた。ところが、調べが終って、

(いざこういんしようと、そのへやへひきかえしてみると、しずことしょうねんのすがたがない。)

いざ拘引しようと、その部屋へ引返して見ると、倭文子と少年の姿がない。

(やしきじゅう くまなくさがしまわってみても、そのへんにかげもかたちもない。おんなのみで、こどもまで)

邸中隈なく探し廻って見ても、その辺に影も形もない。女の身で、子供まで

(つれて、だいたんふてきにも、かのじょはとうぼうしたのだ。それっ というので、)

つれて、大胆不敵にも、彼女は逃亡したのだ。「ソレッ」というので、

(けいかんたちは、ほんしょにでんわをかけて、てはいをたのむ。てわけして、そうさくにはしりだす。)

警官達は、本署に電話をかけて、手配を頼む。手分けして、捜索に走り出す。

(というさわぎだ。さいばんしょのいっこうも、つづいてひきとっていく。ていないはあらしのあとのように、)

という騒ぎだ。裁判所の一行も、続いて引取って行く。邸内は嵐のあとの様に、

(しずまりかえったが、それからやくいちじかん、まだけいさつからなんのしらせもない。しずこは)

静まり返ったが、それから約一時間、まだ警察から何の知らせもない。倭文子は

(つかまらぬのだ。しかし、こどもづれのおんなが、どうしてながくみをかくして)

つかまらぬのだ。「しかし、子供づれの女が、どうして長く身を隠して

(いることができましょう。やがて、つかまるのはきまってます。そしてろうごくです。)

いることが出来ましょう。やがて、つかまるのは極ってます。そして牢獄です。

(ほうていです。しかも、こんなことになったもとはといえば、このぼくです。ぼくは)

法廷です。しかも、こんなことになった元はといえば、この僕です。僕は

(どうしていいかわかりません。あけちさんにでんわをかけたのは、このぼくのきもちを)

どうしていいか分りません。明智さんに電話をかけたのは、この僕の気持を

(おはなしして、ちえをおかりしたかったのです。ぼくはこんなめいはくなじじつを、)

お話しして、智恵をお借りしたかったのです。僕はこんな明白な事実を、

(どうしてもしんじることができません。あのしずこさんにほんとうにさついがあったとは)

どうしても信じることが出来ません。あの倭文子さんに本当に殺意があったとは

(おもえないのです みたにせいねんは、はけぐちのないくるしみを、つねかわけいぶにぶちまけた。)

思えないのです」三谷青年は、はけ口のない苦しみを、恒川警部にぶちまけた。

(じつにいがいです。ぼくにしたって、あのはたやなぎふじんが、ひとごろしをしようなどとは)

「実に意外です。僕にしたって、あの畑柳夫人が、人殺しをしようなどとは

(しんじられません。しかも、あのひとがきょうきをにぎっていたというのは、ざんねんながら、)

信じられません。しかも、あの人が兇器を握っていたというのは、残念ながら、

(うごかしがたいしょうこですね そうです。しょうこといえば、もっとわるいことが)

動かし難い証拠ですね」「そうです。証拠といえば、もっと悪いことが

(あるのです みたには、くちびるをなめなめ、しわがれたこえではなしつづける。しょさいで)

あるのです」三谷は、唇をなめなめ、しわがれた声で話しつづける。「書斎で

など

(しずこさんとさいとうろうじんが、あらそっているこえを、じょちゅうがもれきいた)

倭文子さんと斎藤老人が、争っている声を、女中が漏れ聞いた

(のです。・・・・・・そのじょちゅうがよしんはんじのまえで、はっきりとちんじゅつしたところに)

のです。・・・・・・」その女中が予審判事の前で、ハッキリと陳述した所に

(よると・・・・・・おまえをかいこします。たったいま、でていってください と、)

よると・・・・・・「お前を解雇します。たった今、出て行って下さい」と、

(しずこのかんばしったこえがさけんだ。ひごろのかのじょが、ゆめにもくちにすべきことばでない。)

倭文子の甲走った声が叫んだ。日頃の彼女が、夢にも口にすべき言葉でない。

(これをもってみても、そのときふたりが、いかにげきしあっていたがわかるのだ。)

これを以ても、その時二人が、如何に激し合っていたが分るのだ。

(でていきません。なくなられたごしゅじんにかわって、あなたにちゅうこくいたします。)

「出て行きません。なくなられた御主人に代って、あなたに忠告致します。

(どうあっても、あとへはひきません ろうじんのぴりぴりふるえるこえだ。)

どうあっても、あとへは引きません」老人のピリピリふるえる声だ。

(おんなとあなどって、なにをいうのです。もうがまんができません。わたしはきちがいです。)

「女とあなどって、何をいうのです。もう我慢が出来ません。私は気違いです。

(ええおまえのいうとおり、きがちがったのです。きちがいがなにをするかみて)

エエお前のいう通り、気が違ったのです。気違いが何をするか見て

(いらっしゃい。こうかいしてもおっつきませんよ と、だいたいそのような、ことばの)

いらっしゃい。後悔してもおっつきませんよ」と、大体その様な、言葉の

(やりとりを、じょちゅうがききとっていた。その、こうかいしてもおっつきませんよ。)

やり取りを、女中が聞取っていた。「その、後悔してもおっつきませんよ。

(といったのは、どういういみだとおもったか。ころしてやるぞと、たんとうでも)

といったのは、どういう意味だと思ったか。殺してやるぞと、短刀でも

(にぎっているようすだったか?よしんはんじが、たずねると、じょちゅうは、そうのようにも、)

握っている様子だったか?」予審判事が、尋ねると、女中は、「そうの様にも、

(おもえました とこたえた。こういうことがあったのです。つまり、つじつまが)

思えました」と答えた。「こういうことがあったのです。つまり、辻褄が

(あっているのです。このさつじんじけんには、どうきもあり、そのいしもあったと、)

合っているのです。この殺人事件には、動機もあり、その意志もあったと、

(みればみられるのです みたにがぜつぼうのみぶりでいった。つねかわしはなぐさめることばを)

見れば見られるのです」三谷が絶望の身振りでいった。恒川氏は慰める言葉を

(しらなかった。どうかんがえてみても、すべてのじじょうが、しずこのはんざいを)

知らなかった。どう考えて見ても、すべての事情が、倭文子の犯罪を

(かたっている。これではのがれるみちがない。おんなのみで、ちょっとありそうもないこと)

語っている。これでは逃れる道がない。女の身で、ちょっとあり相もない事

(だけれど、もののはずみはおそろしい。ふとしたこうろんが、おもわぬはんざいをひきおこすのは)

だけれど、物のはずみは恐ろしい。ふとした口論が、思わぬ犯罪をひき起すのは

(ままあること、おんなとて、こいには、おとこもおよばぬぼうきょをあえてするものだ。かれらは、)

間々あること、女とて、恋には、男も及ばぬ暴挙をあえてするものだ。彼等は、

(しばらくだまりこんでいた。みたにはみたにのものおもいに、つねかわしはつねかわしでべつのことを。)

暫く黙り込んでいた。三谷は三谷の物思いに、恒川氏は恒川氏で別のことを。

(べつのことというのは、さっきあけちがうけとった、ぞくのよこくじょうと、それと)

別の事というのは、さっき明智が受取った、賊の予告状と、それと

(もうしあわせたようにとっぱつした、このじけんとを、いかにむすびつけるかであった。)

申し合わせた様に突発した、この事件とを、如何に結びつけるかであった。

(まったくれんらくがないようにもみえる。また、なにかしらつながりがなくてはならぬようにも)

全く聯絡がない様にも見える。また、何かしらつながりがなくてはならぬ様にも

(おもわれる。それにしても、くちびるのないかいぶつと、きゃつにねらわれたしずことが、)

思われる。それにしても、唇のない怪物と、彼奴に狙われた倭文子とが、

(どうるいだなんて、そんなばかなことがあるだろうか。と、そんなことを)

同類だなんて、そんな馬鹿なことがあるだろうか。と、そんなことを

(おもいふけっていたつねかわしは、そのとき、こしをかけているおしりのへんを、ちょいちょいと)

思い耽っていた恒川氏は、その時、腰をかけているお尻の辺を、チョイチョイと

(つくものがあるのにきづいた。よこをみると、となりにかけていた、こばやししょうねんのてが、)

突くものがあるのに気づいた。横を見ると、隣にかけていた、小林少年の手が、

(じぶんのうしろへのびている。おかしなことをするとおもって、しょうねんのかおをながめると)

自分のうしろへ伸びている。おかしなことをすると思って、少年の顔を眺めると

(かれはめであるものをさししめしていた。てーぶるのうえの、かしうつわのなかだ。)

彼は目であるものを指し示していた。テーブルの上の、菓子器の中だ。

(かしうつわのなかには、ようかんがならんでいる。みると、そのひとつに、だれかが)

菓子器の中には、羊羮が並んでいる。見ると、その一つに、誰かが

(たべさしのままのこしておいたとみえて、かじりかけのはがたが、はっきり)

たべさしのまま残しておいたと見えて、かじりかけの歯型が、ハッキリ

(ついている。こどもらしいめのつけどころだと、ちょっとおかしくなったが、しかし、)

ついている。子供らしい目のつけ所だと、ちょっとおかしくなったが、しかし、

(こどものちょっかくはばかにはならぬ。もしもこのはがたが、あけちのもっている、ぞくの)

子供の直覚は馬鹿にはならぬ。若しもこの歯型が、明智の持っている、賊の

(はがたといっちしたらとおもうと、なにかしらぞっとしないではいられなかった。)

歯型と一致したらと思うと、何かしらゾッとしないではいられなかった。

(みたにさん、へんなことをきくようですが、このようかんはだれがたべさしておいた)

「三谷さん、変なことを聞くようですが、この羊羮は誰がたべさしておいた

(のです。ごぞんじありませんか ねんのためにきいてみると、みたにはみょうなかおをして、)

のです。ご存じありませんか」念の為に聞いて見ると、三谷は妙な顔をして、

(しばらくかんがえていたが、ああ、それは、たしかしずこさんです。けさ、あのさわぎが)

暫く考えていたが、「アア、それは、確か倭文子さんです。今朝、あの騒ぎが

(おこるまえ、ここでぼくとふたりきりでいるあいだに、かじったのです。いつもおぎょうぎの)

起る前、ここで僕と二人切りでいる間に、かじったのです。いつもお行儀の

(いいひとが、きょうにかぎってあんなことをすると、へんにおもったので、よくおぼえて)

いい人が、今日に限ってあんなことをすると、変に思ったので、よく覚えて

(います。しかし、それがどうかしたのですか といがいなこたえだ。つねかわけいぶは、)

います。しかし、それがどうかしたのですか」と意外な答えだ。恒川警部は、

(どきんとした。ああ、これがしずこさんのはがたなのだ。このはがたと、ぞくのはがたと)

ドキンとした。アア、これが倭文子さんの歯型なのだ。この歯型と、賊の歯型と

(くらべてみて、まんいちおなじであったら、どういことになるのだ。とおもうと、なんとも)

くらべて見て、万一同じであったら、どうい事になるのだ。と思うと、何とも

(いえぬせんりつが、はらのそこから、こみあげてきた。)

いえぬ戦慄が、腹の底から、込み上げて来た。

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