怪人二十面相60 江戸川乱歩

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少年探偵団シリーズ1作目

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問題文

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(とどうじに、きゃくせきにいたようそうのふじんも、いつのまにかぴすとるをかまえています。)

と同時に、客席にいた洋装の夫人も、いつのまにかピストルを構えています。

(それから、うんてんしゅまでがうしろむきになって、そのてにはこれもぴすとるが)

それから、運転手までが後ろ向きになって、その手にはこれもピストルが

(ひかっているではありませんか。つまり4ちょうのぴすとるがつつさきをそろえて、)

光っているではありませんか。つまり四丁のピストルが筒先を揃えて、

(きゃくせきにいる、たったひとりのじんぶつに、ねらいをさだめたのです。 そのねらわれた)

客席にいる、たったひとりの人物に、狙いを定めたのです。  その狙われた

(じんぶつというのは、ああ、やっぱりあけちたんていでした。たんていは、にじゅうめんそうのよそうに)

人物というのは、ああ、やっぱり明智探偵でした。探偵は、二十面相の予想に

(たがわず、まんまとけいりゃくにかかってしまったのでしょうか。 「みうごきすると、)

違わず、まんまと計略に掛かってしまったのでしょうか。 「身動きすると、

(ぶっぱなすぞ」 だれかがおそろしいけんまくで、どなりつけました。)

ぶっぱなすぞ」  誰かが恐ろしい剣幕で、怒鳴りつけました。

(しかし、あけちはかんねんしたものか、しずかにくっしょんにもたれたまま、)

しかし、明智は観念したものか、しずかにクッションに凭れたまま、

(さからうようすはありません。あまりおとなしくしているので、ぞくのほうがぶきみに)

逆らう様子はありません。あまり大人しくしているので、賊の方が不気味に

(おもうほどです。 「やっつけろ!」)

思うほどです。 「やっつけろ!」

(ひくいけれどちからづよいこえがひびいたかとおもうと、こじきにばけたおとことあかいとらぞうのりょうにんが)

低いけれど力強い声が響いたかと思うと、乞食に化けた男と赤井寅三の両人が

(おそろしいいきおいで、くるまのなかにふみこんできました。そして、あかいがあけちのじょうはんしんを)

恐ろしい勢いで、車の中に踏み込んで来ました。そして、赤井が明智の上半身を

(だきしめるようにしておさえていると、もうひとりは、ふところからとりだした)

抱き締めるようにして押さえていると、もう一人は、懐から取り出した

(ひとかたまりのしろぬののようなものを、てばやくたんていのくちにおしつけて、しばらくのあいだ)

一塊の白布のような物を、手早く探偵の口に押し付けて、暫くの間

(ちからをゆるめませんでした。 それから、やや5ふんもして、おとこがてをはなしたときには)

力を緩めませんでした。  それから、やや五分もして、男が手を離した時には

(さすがのめいたんていも、やくぶつのちからにはかないません。まるでしにんのように、)

さすがの名探偵も、薬物の力には敵いません。まるで死人のように、

(ぐったりときをうしなってしまいました。 「ほほほ、もろいもんだわね」)

グッタリと気を失ってしまいました。 「ホホホ、脆いもんだわね」

(どうじょうしていたようそうふじんが、うつくしいこえでわらいました。 「おい、なわだ。)

同乗していた洋装婦人が、美しい声で笑いました。 「おい、縄だ。

(はやくなわをだしてくれ」 こじきにばけたおとこは、うんてんしゅから、ひとたばのなわを)

早く縄を出してくれ」  乞食に化けた男は、運転手から、ひと束の縄を

(うけとると、あかいにてつだわせて、あけちたんていのてあしを、たとえそせいしても)

受けとると、赤井に手伝わせて、明智探偵の手足を、たとえ蘇生しても

など

(みうごきもできないように、しばりあげてしまいました。 「さあ、よしと。)

身動きもできないように、縛り上げてしまいました。 「さあ、よしと。

(こうなっちゃ、めいたんていもたわいがないね。これでやっとおれたちも、なんのきがねも)

こうなっちゃ、名探偵もたわいがないね。これでやっと俺達も、何の気兼ねも

(なくしごとができるというもんだ。おい、おやぶんがまっているだろう。いそごうぜ」)

なく仕事が出来るというもんだ。おい、親分が待っているだろう。急ごうぜ」

(ぐるぐるまきのあけちのからだを、じどうしゃのゆかにころがして、こじきとあかいとが、)

ぐるぐる巻きの明智の身体を、自動車の床に転がして、乞食と赤井とが、

(きゃくせきにおさまると、くるまはいきなりはしりだしました。)

客席におさまると、車はいきなり走り出しました。

(いくさきはいわずとしれたにじゅうめんそうのそうくつです。)

行く先は言わずと知れた二十面相の巣窟です。

(かいとうのそうくつ ぞくのてしたのうつくしいふじんと、こじきと、あかいとらぞうと、)

【怪盗の巣窟】  賊の手下の美しい婦人と、乞食と、赤井寅三と、

(きをうしなったあけちこごろうとをのせたじどうしゃは、さびしいまちさびしいまちとえらびながら、)

気を失った明智小五郎とを乗せた自動車は、寂しい町寂しい町と選びながら、

(はしりにはしって、やがて、よよぎのめいじじんぐうをとおりすぎ、くらいぞうきばやしのなかに)

走りに走って、やがて、代々木の明治神宮を通り過ぎ、暗い雑木林の中に

(ぽつんとたっている、いっけんのじゅうたくのもんぜんにとまりました。 それは7まか)

ポツンと建っている、一軒の住宅の門前に停まりました。  それは七間か

(8まぐらいのちゅうりゅうじゅうたくで、もんのはしらにはきたがわじゅうろうというひょうさつがかかっています。)

八間ぐらいの中流住宅で、門の柱には北川十郎という表札が掛かっています。

(もういえじゅうがねてしまったのか、まどからあかりもささず、さもつつましやかな)

もう家中が寝てしまったのか、窓から明りもささず、さも慎ましやかな

(かていらしくみえるのです。 うんてんしゅ(むろんこれもぞくのぶかなのです)が)

家庭らしく見えるのです。  運転手(むろんこれも賊の部下なのです)が

(まっさきにくるまをおりて、もんのよびりんをおしますと、ほどもなくかたんというおとがして)

まっ先に車を降りて、門の呼び鈴を押しますと、程もなくカタンという音がして

(もんのとびらにつくってあるちいさなのぞきまどがあき、そこにふたつのおおきなめだまがあらわれました)

門の扉に作ってある小さな覗き窓が開き、そこに二つの大きな目玉が現れました

(もんとうのあかりで、それが、ものすごくひかってみえます。 「ああ、きみか、)

門燈の明かりで、それが、ものすごく光って見えます。 「ああ、きみか、

(どうだ、しゅびよくいったか」 めだまのぬしが、ささやくようなこごえでたずねました。)

どうだ、守備よくいったか」  目玉の主が、囁くような小声で尋ねました。

(「うん、うまくいった。はやくあけてくれ」 うんてんしゅがこたえますと、はじめて)

「ウン、うまくいった。早く開けてくれ」  運転手が答えますと、初めて

(もんのとびらがぎいーとひらきました。 みると、もんのうちがわには、くろいようふくを)

門の扉がギイーと開きました。  見ると、門の内側には、黒い洋服を

(きたぞくのぶかが、ゆだんなくみがまえをして、たちはだかっているのです。)

着た賊の部下が、油断なく身構えをして、立ちはだかっているのです。

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