怪人二十面相64 江戸川乱歩

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少年探偵団シリーズ1作目

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問題文

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(こばやしくんは、そんなふうにいって、しきりとあけちふじんをなぐさめましたが、)

小林君は、そんな風に言って、しきりと明智夫人を慰めましたが、

(しかし、べつにじしんがあるわけではなく、しゃべっているうちに、じぶんのほうでも)

しかし、別に自信があるわけではなく、喋っているうちに、自分の方でも

(ふあんがこみあげてきて、ことばもとぎれがちになるのでした。 めいたんていじょしゅの)

不安が込み上げてきて、言葉も途切れがちになるのでした。  名探偵助手の

(こばやしくんも、こんどばかりはてもあしもでないのです。にじゅうめんそうのかくれがをしる)

小林君も、今度ばかりは手も足も出ないのです。二十面相の隠れ家を知る

(てがかりはまったくありません。 おとついは、ぞくのぶかがかみしばいやにばけて、)

手掛かりは全くありません。  一昨日は、賊の部下が紙芝居屋に化けて、

(ようすをさぐりにきていたが、もしやきょうもあやしいじんぶつが、そのへんをうろうろ)

様子を探りに来ていたが、もしや今日も怪しい人物が、その辺をうろうろ

(していないかしら。そうすれば、ぞくのすみかをさぐるてだてもあるんだがと、)

していないかしら。そうすれば、賊の住み家を探る手立てもあるんだがと、

(いちるののぞみに、たびたび2かいへあがっておもてどおりをみまわしても、それらしいものの)

一縷の望みに、度々二階へ上がって表通りを見回しても、それらしい者の

(かげさえしません。ぞくのほうでは、ゆうかいのもくてきをはたしてしまったのですから、)

影さえしません。賊の方では、誘拐の目的を果たしてしまったのですから、

(もうそういうことをするひつようがないのでしょう。 そんなふうにして、)

もうそういう事をする必要がないのでしょう。  そんな風にして、

(ふあんのだい2やもあけて、みっかめのあさのことでした。 そのひはちょうどにちようび)

不安の第二夜も明けて、三日めの朝のことでした。  その日はちょうど日曜日

(だったのですが、あけちふじんとこばやししょうねんがさびしいちょうしょくをおわったところへ、)

だったのですが、明智夫人と小林少年が寂しい朝食を終わったところへ、

(げんかんへてっぽうだまのようにとびこんできたしょうねんがありました。 「ごめんください。)

玄関へ鉄砲玉のように飛び込んで来た少年がありました。 「ごめんください。

(こばやしくんいますか。ぼくはしばです」 すきとおったこどものさけびごえに、)

小林君いますか。僕羽柴です」  透き通った子どもの叫び声に、

(おどろいてでてみますと、おお、そこには、ひさしぶりのはしばそうじしょうねんが、)

驚いて出てみますと、おお、そこには、久し振りの羽柴壮二少年が、

(かわいらしいかおをまっかにじょうきさせて、いきをきらしてたっていました。)

可愛らしい顔を真っ赤に上気させて、息をきらして立っていました。

(よっぽどおおいそぎではしってきたものとみえます。 どくしゃしょくんはよもや)

よっぽど大急ぎで走って来たものとみえます。  読者諸君はよもや

(おわすれではありますまい。このしょうねんこそ、いつかじたくのていえんにわなをしかけて、)

お忘れではありますまい。この少年こそ、いつか自宅の庭園に罠を仕掛けて、

(にじゅうめんそうをてひどいめにあわせた、あのだいじつぎょうかはしばそうたろうしのむすこさんです。)

二十面相を手酷い目に合わせた、あの大実業家羽柴壮太郎氏の息子さんです。

(「おや、そうじくんですか。よくきましたね。さあ、おあがりなさい」)

「オヤ、壮二君ですか。よく来ましたね。サア、お上がりなさい」

など

(こばやしくんはじぶんよりふたつばかりとししたのそうじくんを、おとうとかなんぞのようにいたわって、)

小林君は自分より二つばかり年下の壮二君を、弟かなんぞのように労わって、

(おうせつしつへみちびきました。 「で、なんかきゅうなようじでもあるんですか」)

応接室へ導きました。 「で、なんか急な用事でもあるんですか」

(たずねますと、そうじしょうねんは、おとなのようなくちょうで、こんなことをいうのでした。)

尋ねますと、壮二少年は、大人のような口調で、こんな事を言うのでした。

(「あけちせんせい、たいへんでしたね。まだゆくえがわからないのでしょう。それについてね)

「明智先生、大変でしたね。まだ行方が分からないのでしょう。それについてね

(ぼくすこしそうだんがあるんです。 あのね、いつかのじけんのときから、ぼく、きみを)

僕少し相談があるんです。  あのね、いつかの事件の時から、僕、君を

(すうはいしちゃったんです。そしてね、ぼくもきみのようになりたいとおもったんです。)

崇拝しちゃったんです。そしてね、僕も君のようになりたいと思ったんです。

(それから、きみのはたらきのことを、がっこうでみんなにはなしたら、ぼくとおなじかんがえのものが)

それから、君の働きの事を、学校で皆に話したら、僕と同じ考えの者が

(10にんもあつまっちゃったんです。 それで、みんなで、しょうねんたんていだんっていうかいを)

十人も集まっちゃったんです。  それで、皆で、少年探偵団っていう会を

(つくっているんです。むろんがっこうのべんきょうやなんかのじゃまにならないようにですよ。)

作っているんです。無論学校の勉強やなんかの邪魔にならないようにですよ。

(ぼくのおとうさんも、がっこうさえなまけなければ、まあいいってゆるしてくだすったんです。)

僕のお父さんも、学校さえ怠けなければ、まあいいって許して下すったんです。

(きょうはにちようでしょう。だもんだから、ぼくみんなをつれて、きみんちへ)

今日は日曜でしょう。だもんだから、僕みんなを連れて、君んちへ

(おみまいにきたんです。そしてね、みんなはね、きみのさしずをうけて、ぼくたちしょうねんだんの)

お見舞いに来たんです。そしてね、皆はね、君の指図を受けて、僕達少年団の

(ちからで、あけちせんせいのゆくえをさがそうじゃないかっていってるんです」 ひといきに)

力で、明智先生の行方を捜そうじゃないかって言ってるんです」  ひと息に

(それだけいってしまうと、そうじくんはかわいいめでこばやししょうねんをにらみつけるようにして)

それだけ言ってしまうと、壮二君は可愛い目で小林少年を睨み付けるようにして

(へんじをまつのでした。 「ありがとう」)

返事を待つのでした。 「ありがとう」

(こばやしくんは、なんだかなみだがでそうになるのをやっとがまんして、ぎゅっとそうじくんの)

小林君は、何だか涙が出そうになるのをやっと我慢して、ギュッと壮二君の

(てをにぎりました。 「きみたちのことをあけちせんせいがおききになったら、どんなに)

手を握りました。 「君達の事を明智先生がお聞きになったら、どんなに

(およろこびになるかもしれないですよ。ええ、きみたちのたんていだんでぼくをたすけてください。)

お喜びになるかもしれないですよ。ええ、君達の探偵団で僕を助けて下さい。

(みんなでなにかてがかりをさがしだしましょう。 けれどね、きみたちはぼくとちがうんだから)

皆で何か手掛かりを捜し出しましょう。  けれどね、君達は僕と違うんだから

(きけんなことはやらせませんよ。もしものことがあると、みんなのおとうさんや)

危険な事はやらせませんよ。もしもの事があると、皆のお父さんや

(おかあさんにもうしわけないですからね。)

お母さんに申し訳ないですからね。

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