天野月子　鮫

(ひからびたすいそうひくくおよいでみせてた)

ひからびた水槽低く泳いでみせてた

(あなたからけむたがられるきがして)

あなたから煙たがられる気がして

(ただ「あきた」たったひとことわたしにつたえて)

ただ「飽きた」たった一言わたしに伝えて

(すてるならあるべきばしょへはなして)

捨てるならあるべき場所へ放して

(わたしならあなたなしでもあるいてゆけるはず)

わたしならあなた無しでも歩いて行けるはず

(あなたのめをあやめただれかとちがう)

あなたの目を殺めた誰かと違う

(おしみなくあいしておしみなくにくんであげる)

惜しみなく愛して惜しみなく憎んであげる

(かわれないかたちがあるならこころをとかしましょう)

変われない形があるなら心を溶かしましょう

(せいてんのふちからおおつぶのあらしがおりた)

晴天の淵から大粒の嵐が降りた

(さめのようにきゅうかーぶきってくわたしをどうかわらって)

鮫のように急カーブ切ってくわたしをどうか笑って

(たいせつなだれかをかばうきんきゅうにゅーすは)

大切な誰かを庇う緊急ニュースは

(ありのままほうどうされずおわった)

ありのまま報道されず終わった

(なにもかもうそでまるめてかくしとおすつもり？)

何もかも嘘で丸めて隠し通すつもり？

(よごれたてにもたれるだれかといきて)

汚れた手に凭れる誰かと生きて

(おしみなくあいしておしみなくにくんであげる)

惜しみなく愛して惜しみなく憎んであげる

(ふりつもるみずのおもさごとあなたをつぶしましょう)

降り積もる水の重さごとあなたを潰しましょう

(このむねにはしったいたみなどえぐってあげる)

この胸に走った痛みなど抉ってあげる

(さめのようにきゅうかーぶきってくわたしをどうかわらって)

鮫のように急カーブ切ってくわたしをどうか笑って

(あなたのふれたからだがもとどおりになるまで)

あなたの触れた身体が元通りになるまで

(だれかをただしくあいせるわたしにもどれるまで)

誰かを正しく愛せるわたしに戻れるまで

(ないはずのかどをまがってふりだしへいそいだ)

無いはずの角を曲がってふりだしへ急いだ

(あなたにきばをむいて)

あなたに　牙を剥いて

(おしみなくあいしておしみなくにくんであげる)

惜しみなく愛して惜しみなく憎んであげる

(かわれないかたちがあるならこころをとかしましょう)

変われない形があるなら心を溶かしましょう

(せいてんのふちからおおつぶのあらしがおりた)

晴天の淵から大粒の嵐が降りた

(さめのようにきゅうかーぶきってくわたしをどうぞわらって)

鮫のように急カーブ切ってくわたしをどうぞ笑って