黒蜥蜴16
順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 123 | 6138 | A++ | 6.3 | 96.8% | 650.3 | 4127 | 135 | 59 | 2024/09/29 |
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問題文
(めいたんていのはいぼく)
名探偵の敗北
(たんていのしょくにあるものが、てごわいはんざいしゃをとらえたときのきえつは、じょうじんのそうぞうにも)
探偵の職にある者が、手ごわい犯罪者を捕えた時の喜悦は、常人の想像にも
(およばない。そのきえつのあまり、かれがついきをゆるしすぎてしまったとしても、)
及ばない。その喜悦のあまり、彼がつい気をゆるし過ぎてしまったとしても、
(あながちむりではなかった。くろとかげ ははいぼくにうちひしがれながらも、)
あながち無理ではなかった。「黒トカゲ」は敗北にうちひしがれながらも、
(もちまえのするどいずのうをびんしょうにはたらかせて、このきゅうちをだっするけいかくをおもいめぐらした。)
持ち前の鋭い頭脳を敏捷に働かせて、この窮地を脱する計画を思いめぐらした。
(そして、とっさのまにひとつのぼうけんをおもいたったのだ。かのじょはやっとひきつった)
そして、とっさのまに一つの冒険を思い立ったのだ。彼女はやっと引きつった
(ひょうじょうをやわらげ、あけちたんていをわらいかえすことができた。で、どうしようって)
表情をやわらげ、明智探偵を笑い返すことができた。「で、どうしようって
(いうの?ぼくをほばくしようとでもおもっているの?ほほほほほ、それはちっと、)
いうの?僕を捕縛しようとでも思っているの? ホホホホホ、それはちっと、
(むしがよすぎやしなくって?なんというぼうじゃくぶじん。かよわいおんなのみで、みかたは)
虫がよすぎやしなくって?」なんという傍若無人。かよわい女の身で、味方は
(ひとり、あいては、びょうにんどうぜんのさなえさんをのぞいても、くっきょうのおとこがよにん、そのなかには)
一人、相手は、病人同然の早苗さんを除いても、屈強の男が四人、その中には
(せいふくいかめしいおまわりさんもまじっているではないか。にげみちはたったひとつ、)
制服いかめしいおまわりさんもまじっているではないか。逃げ路はたった一つ、
(ろうかにつうずるどあしかない。しかもそのどあのまえには、いまはいってきたばかりの)
廊下に通ずるドアしかない。しかもそのドアの前には、今はいってきたばかりの
(あけちのぶかとけいかんとが、とおせんぼうをしてたちはだかっている。まどから)
明智の部下と警官とが、通せんぼうをして立ちはだかっている。窓から
(とびだそうにも、ここはかいじょうだし、そのそとは、ぐるっとたてものでかこまれた)
飛び出そうにも、ここは階上だし、そのそとは、グルッと建物でかこまれた
(うちにわなのだ。いったいぜんたい、かのじょはどんなほうほうで、このきゅうちをだっするつもり)
内庭なのだ。一体全体、彼女はどんな方法で、この窮地を脱するつもり
(なのだろう。つまらないきょせいはよしたまえ。さあ、けいかん、このおんなをおひきわたし)
なのだろう。「つまらない虚勢はよしたまえ。さあ、警官、この女をお引き渡し
(します。えんりょなくなわをかけてください。これがこんどのゆうかいだんのしゅはんです)
します。遠慮なく縄をかけてください。これが今度の誘拐団の主犯です」
(あけちは くろとかげ のちょうせんをもくさつして、いりぐちのけいかんにことばをかけた。)
明智は「黒トカゲ」の挑戦を黙殺して、入口の警官に言葉をかけた。
(よくじじょうをしらないけいかんは、このうつくしいきふじんがはんにんときいて、めんくらった)
よく事情を知らない警官は、この美しい貴婦人が犯人と聞いて、面くらった
(ようにみえたが、そうさかでしんようのあついあけちのかおはみしっていたので、)
ように見えたが、捜査課で信用のあつい明智の顔は見知っていたので、
(いわれるままに、みどりかわふじんのそばにちかづこうとした。あけちさん、みぎの)
いわれるままに、緑川夫人のそばに近づこうとした。「明智さん、右の
(ぽけっとをさわってごらんなさい。ほほほほほ、からっぽじゃなくって)
ポケットをさわってごらんなさい。ホホホホホ、からっぽじゃなくって」
(みどりかわふじんの くろとかげ が、ちかづくけいかんをしりめにかけながら、かんだかくさけんだ。)
緑川夫人の「黒トカゲ」が、近づく警官を尻目にかけながら、かん高く叫んだ。
(あけちははっとして、おもわずそのぽけっとへてをやった。ない。たしかにいれて)
明智はハッとして、思わずそのポケットへ手をやった。ない。確かに入れて
(おいたぶろーにんぐがない。にょぞく くろとかげ はゆびさきのまじゅつにもたけて)
おいたブローニングがない。女賊「黒トカゲ」は指先の魔術にもたけて
(いたのだ。さいぜん、しんしつでのさわぎのあいだに、よういしゅうとうにも、あけちの)
いたのだ。さいぜん、寝室での騒ぎのあいだに、用意周到にも、明智の
(ぽけっとから、そのぴすとるをちゃんとぬきとっておいたのだ。)
ポケットから、そのピストルをちゃんとぬき取っておいたのだ。
(ほほほほほほ、あけちさん、すりのてぐちもごけんきゅうにならなくっちゃだめだわ。)
「ホホホホホホ、明智さん、スリの手口もご研究にならなくっちゃだめだわ。
(あなたのたいせつなもの、ここにありますのよ にょぞくはにこやかにわらいながら、)
あなたの大切なもの、ここにありますのよ」女賊はにこやかに笑いながら、
(ようふくのむねからこがたのけんじゅうをつまみだしてきっとまえにかまえた。さあ、みなさん、)
洋服の胸から小型の拳銃をつまみ出してキッと前に構えた。「さあ、皆さん、
(てをあげてくださらない。でないと、あたしだって、あけちさんにおとらない)
手をあげてくださらない。でないと、あたしだって、明智さんにおとらない
(しゃげきのめいしゅなのよ。それにあたし、にんげんのいのちなんて、なんともおもってません)
射撃の名手なのよ。それにあたし、人間の命なんて、なんとも思ってません
(のよ いまいっぽでかのじょにくみつこうとしていたけいかんが、たちおうじょうをしてしまった。)
のよ」今一歩で彼女に組みつこうとしていた警官が、立ち往生をしてしまった。
(ざんねんなことには、だれもとびどうぐをもっているものはなかった。てを、さあ、)
残念なことには、誰も飛び道具を持っているものはなかった。「手を、さあ、
(てをあげなっていったら くろとかげ はめをすえて、あかいくちびるをなめながら、)
手をあげなっていったら」「黒トカゲ」は眼をすえて、紅い唇をなめながら、
(おとこたちにむかってつぎつぎとつつぐちをむけていった。ひきがねにかけたしろいゆびが、いまにも)
男たちに向かって次々と筒口を向けて行った。引き金にかけた白い指が、今にも
(ぎゅっとちからをいれそうに、ぶるぶるふるえている。かのじょのさっきばしった、)
ギュッと力を入れそうに、ブルブルふるえている。彼女の殺気ばしった、
(というよりはいっしゅきちがいめいたひょうじょうをみると、いわれるままにてをあげないでは)
というよりは一種気違いめいた表情を見ると、いわれるままに手をあげないでは
(いられなかった。だいのおとこがいくじのないはなしだけれど、けいかんも、あけちのぶかも、)
いられなかった。大の男が意気地のない話だけれど、警官も、明智の部下も、
(いわせしも、めいたんていあけちこごろうさえも、ばんざいをちゅうとでやめたようなかっこうを)
岩瀬氏も、名探偵明智小五郎さえも、ばんざいを中途でやめたような恰好を
(しないわけにはいかなかった。みどりかわふじんは そのときもれいのくろずくめのようふくで)
しないわけにはいかなかった。緑川夫人は(その時も例の黒ずくめの洋服で
(あったが あだなの くろとかげ そっくりのすばやさで、さっとどあのそばへ)
あったが)あだ名の「黒トカゲ」そっくりの素早さで、サッとドアのそばへ
(かけよった。あけちさん、これが、あんたのだいにのしっさくよ。ほら いいながら、)
駈け寄った。「明智さん、これが、あんたの第二の失策よ。ほら」言いながら、
(あいているひだりてをうしろにまわして、さっきあけちがどあをあけたとき、かぎあなに)
あいている左手をうしろに廻して、さっき明智がドアをあけた時、鍵穴に
(さしたままにしておいたかぎをぬきとると、きらきらとかおのまえでふってみせた。)
差したままにしておいた鍵を抜き取ると、キラキラと顔の前で振ってみせた。
(まさかこんなことになろうとはそうぞうもしなかったので、あわただしいおりから、)
まさかこんなことになろうとは想像もしなかったので、あわただしい折りから、
(あけちはなんのきもなくかぎをそのままにしておいたのだが、それをみのがさず、)
明智はなんの気もなく鍵をそのままにしておいたのだが、それを見逃がさず、
(とっさにりようすることをかんがえついたにょぞくのちえのするどさ。それから、)
とっさに利用することを考えついた女賊の智恵のするどさ。「それから、
(おじょうさん!かのじょはもうどあをあけて、かたあしをろうかにふみだしながら、しかし)
お嬢さん!」彼女はもうドアをあけて、片足を廊下にふみ出しながら、しかし
(ぴすとるはゆだんなくかまえたまま、こんどはさなえさんにこえをかけた。あんたは)
ピストルは油断なく構えたまま、今度は早苗さんに声をかけた。「あんたは
(ほんとうにかわいそうだとおもうけど、にほんいちのほうせきやのむすめさんにうまれついたのが)
ほんとうにかわいそうだと思うけど、日本一の宝石屋の娘さんに生れついたのが
(ふうんとあきらめてね。それに、あんたは、あんまりうつくしすぎたのよ。ぼくはほうせきも)
不運とあきらめてね。それに、あんたは、あんまり美し過ぎたのよ。僕は宝石も
(ごしゅうしんだけど、ほうせきよりも、あんたのからだがほしくなった。けっしてだんねん)
ご執心だけど、宝石よりも、あんたのからだがほしくなった。決して断念
(しないわ。ねえ、あけちさん、ぼくはだんねんしないよ。おじょうさんはあらためてちょうだいに)
しないわ。ねえ、明智さん、僕は断念しないよ。お嬢さんは改めて頂戴に
(あがりますよ。じゃ、さよなら ばたんとどあがしまって、そとからかちかちと)
上がりますよ。じゃ、さよなら」バタンとドアがしまって、そとからカチカチと
(かぎをかけるおと。さなえさんとよにんのおとことは、へやのなかへとじこめられてしまった。)
鍵をかける音。早苗さんと四人の男とは、部屋の中へとじこめられてしまった。
(かぎはひとつしかない。それをもちさられたのでは、どあをたたきやぶるか、たかいまどから)
鍵は一つしかない。それを持ち去られたのでは、ドアを叩き破るか、高い窓から
(とびおりるほかに、ここをぬけだすほうほうはない。だが、たったひとつ、でんわという)
飛び降りるほかに、ここを脱け出す方法はない。だが、たった一つ、電話という
(ぶきがのこっている。あけちはたくじょうでんわにとびついて、こうかんだいをよびだした。)
武器が残っている。明智は卓上電話に飛びついて、交換台を呼び出した。