黒蜥蜴25
順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 123 | 6504 | S+ | 6.6 | 97.5% | 584.5 | 3901 | 99 | 58 | 2024/10/06 |
2 | ひま | 5175 | B+ | 5.5 | 94.0% | 717.8 | 3964 | 249 | 58 | 2024/10/05 |
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問題文
(えじぷとのほし)
「エジプトの星」
(ほうせきしょうれいじょうゆうかいじけんは、そのよくじつのしんぶんきじによって、ぜんこくにしれわたった。)
宝石商令嬢誘拐事件は、その翌日の新聞記事によって、全国に知れわたった。
(とちのけいさつはもちろん、おおさかふのぜんけいさつりょくをあげてさなえさんのゆくえそうさくが)
土地の警察はもちろん、大阪府の全警察力をあげて早苗さんの行方捜索が
(おこなわれた。でぱーとのちんれつじょでも、かぐしょうのしょう・うぃんどうでも、えきえきの)
行なわれた。デパートの陳列所でも、家具商のショウ・ウィンドウでも、駅々の
(かもつそうこでも、ながいすというながいすがぶきみなけんぎをうけた。しんけいしつなひとたちは)
貨物倉庫でも、長椅子という長椅子が無気味な嫌疑を受けた。神経質な人たちは
(じたくのおうせつまのそふぁにさえも、いちおうそこのぐあいをあらためないでは、)
自宅の応接間のソファにさえも、一応底のぐあいをあらためないでは、
(こしかけるきになれなかった。そうして、じけんからまるいっちゅうやがけいかしたけれど、)
腰かける気になれなかった。そうして、事件からまる一昼夜が経過したけれど、
(にんげんづめながいすのゆくえはすこしもしれなかった。いきているのかしんで)
人間詰め長椅子の行方は少しも知れなかった。生きているのか死んで
(しまったのか、うつくしいさなえさんのすがたは、まったくこのよからかきけされて)
しまったのか、美しい早苗さんの姿は、全くこの世からかき消されて
(しまったようにかんじられた。いわせしや、ふじんなどのなげきはいうまでもなかった。)
しまったように感じられた。岩瀬氏や、夫人などの歎きはいうまでもなかった。
(さなえさんをきちにみちびいたのも、ぞくをみのがしがしたのも、まったくいわせしふさいの)
早苗さんを危地にみちびいたのも、賊を見逃がしたのも、全く岩瀬氏夫妻の
(ておちであって、だれをうらむこともなかったが、かなしみのあまり、いきどおりのあまり、)
手落ちであって、誰を恨むこともなかったが、悲しみのあまり、憤りのあまり、
(ついどをうしなって、あけちたんていのふよういながいしゅつを、せめたいきもちにもなるので)
つい度を失って、明智探偵の不用意な外出を、責めたい気持にもなるので
(あった。あけちはむろんそのきもちをさっしないではなかった。またかれじしんとしても、)
あった。明智はむろんその気持を察しないではなかった。また彼自身としても、
(めいたんていのなにかけて、このゆうかいじけんにせきにんをかんじ、とりかえしのつかぬゆだんを)
名探偵の名にかけて、この誘拐事件に責任を感じ、取りかえしのつかぬ油断を
(くやまないわけではなかった。それにもかかわらず、さすがはひゃくせんれんまのゆうしょう、)
くやまないわけではなかった。それにもかかわらず、さすがは百戦錬磨の勇将、
(かれはふかくこころにきするところあるもののごとく、すこしもろうばいはしなかった。)
彼は深く心に期するところあるもののごとく、少しも狼狽はしなかった。
(いわせさん、ぼくをしんじてください。おじょうさんはあんぜんです。かならずとりかえして)
「岩瀬さん、僕を信じてください。お嬢さんは安全です。必らず取り返して
(おめにかけます。それに、ぞくのしゅちゅうにあっても、おじょうさんはけっしてきがいを)
お眼にかけます。それに、賊の手中にあっても、お嬢さんは決して危害を
(くわえられることはありません。あいつらはきっと、さなえさんをたいせつなたからものの)
加えられることはありません。あいつらはきっと、早苗さんを大切な宝物の
(ようにあつかっているでしょう。そうしなければならないりゆうがあるのです。すこしも)
ように扱っているでしょう。そうしなければならない理由があるのです。少しも
(ごしんぱいなさることはありません あけちはいわせしふさいに、くりかえしくりかえし)
ご心配なさることはありません」明智は岩瀬氏夫妻に、繰り返し繰り返し
(こういういみのことをいってなぐさめた。だが、あけちさん。とりかえすと)
こういう意味のことを言ってなぐさめた。「だが、明智さん。取り返すと
(いっても、むすめはいまどこにいるのですかね。あれのありかが、あんたにわかって)
いっても、娘は今どこにいるのですかね。あれのありかが、あんたにわかって
(いるとでもおっしゃるのかね いわせしは、またしてもれいのどくぐちをきいた。)
いるとでもおっしゃるのかね」岩瀬氏は、またしても例の毒口をきいた。
(そうです。わかっているといってもいいかもしれません あけちはどうじない。)
「そうです。わかっているといってもいいかもしれません」明智は動じない。
(ふん、じゃ、なぜそこへとりもどしにいってはくださらんのかね。みていると、)
「フン、じゃ、なぜそこへ取り戻しに行ってはくださらんのかね。見ていると、
(あんたは、きのうからまるでけいさつまかせで、なにもしないでてをつかねていなさる)
あんたは、きのうからまるで警察まかせで、何もしないで手をつかねていなさる
(ようじゃが、そんなにわかっていれば、はやくてきとうなしょちをこうじてほしい)
ようじゃが、そんなにわかっていれば、早く適当な処置を講じてほしい
(ものですね ぼくはまっているのですよ え、まっているとは?)
ものですね」「僕は待っているのですよ」「え、待っているとは?」
(くろとかげ からのつうちをです つうちを?それはおかしい。ぞくがつうちを)
「『黒トカゲ』からの通知をです」「通知を?それはおかしい。賊が通知を
(よこすとでもおっしゃるのかね。どうかおじょうさんをうけとりにきてくださいと)
よこすとでもおっしゃるのかね。どうかお嬢さんを受取りにきてくださいと
(いって いわせしは、にくまれぐちをきいて、ふふんとはなさきでわらってみせた。)
いって」岩瀬氏は、憎まれ口をきいて、フフンと鼻さきで笑って見せた。
(ええ、そうですよ めいたんていはこどものようにむじゃきである。あいつは)
「ええ、そうですよ」名探偵は子供のように無邪気である。「あいつは
(おじょうさんをうけとりにこいというつうちをよこすかもしれませんよ え、え、)
お嬢さんを受取りにこいという通知をよこすかもしれませんよ」「え、え、
(あんた、それはしょうきでいっていなさるのか。なんぼなんでも、ぞくがそんな)
あんた、それは正気でいっていなさるのか。なんぼなんでも、賊がそんな
(ことを・・・・・・あけちさん、このばあい、じょうだんはごめんこうむりますよ ほうせきおうが)
ことを……明智さん、この場合、冗談はごめんこうむりますよ」宝石王が
(にがにがしくいいはなった。じょうだんではありません。いまにきっとおわかりに)
にがにがしく言い放った。「冗談ではありません。今にきっとおわかりに
(なりますよ・・・・・・ああ、ひょっとしたら、そのなかにつうちじょうがまじっているかも)
なりますよ……ああ、ひょっとしたら、そのなかに通知状がまじっているかも
(しれません かれらはそのとき、れいのさなえさんのゆうかいされたおうせつまにたいざして)
しれません」彼らはその時、例の早苗さんの誘拐された応接間に対坐して
(いたのだが、ちょうどそこへ、しょせいのひとりが、そのひのだいさんびんのらいかんをまとめて)
いたのだが、ちょうどそこへ、書生の一人が、その日の第三便の来翰をまとめて
(もってきたのであった。このなかにですか?ぞくのつうちじょうがですか?)
持ってきたのであった。「このなかにですか?賊の通知状がですか?」
(いわせしはしょせいからすうつうのてがみをうけとって、なにをばかばかしいといわぬばかりに、)
岩瀬氏は書生から数通の手紙を受取って、何をばかばかしいといわぬばかりに、
(うわのそらのへんじをしながら、ひとつひとつさしだしにんをしらべていたが、たちまち)
うわの空の返事をしながら、一つ一つ差出人をしらべていたが、たちまち
(はっとしてとんきょうなこえをたてた。やあ、こりゃなんじゃ。このもようはいったい)
ハッとして頓狂な声を立てた。「やあ、こりゃなんじゃ。この模様はいったい
(なんじゃ それはじょうとうのようふうとうにつつまれたいっつうのてがみであったが、みると、)
なんじゃ」それは上等の洋封筒に包まれた一通の手紙であったが、見ると、
(そのりめんには、さしだしにんのなはなくて、ふうとうのひだりしたのすみに、いっぴきのまっくろな)
その裏面には、差出人の名はなくて、封筒の左下の隅に、一匹のまっ黒な
(とかげのもようが、たくみにえがかれてあった。くろとかげ ですね あけちは)
トカゲの模様が、たくみにえがかれてあった。「『黒トカゲ』ですね」明智は
(すこしもおどろかない。それごらんなさいといわぬばかりだ。くろとかげ じゃ。)
少しも驚かない。それごらんなさいといわぬばかりだ。「『黒トカゲ』じゃ。
(おおさかしないのけしいんがある いわせしはさすがにしょうにんらしいめはやさで、それをみて)
大阪市内の消印がある」岩瀬氏はさすがに商人らしい眼早さで、それを見て
(とった。ああ、あけちさん、あんたには、これがどうしてあらかじめわかって)
取った。「ああ、明智さん、あんたには、これがどうしてあらかじめわかって
(いたのです。たしかにぞくのつうちじょうじゃ。ふーん、これはどうも・・・・・・かれはかんに)
いたのです。確かに賊の通知状じゃ。フーン、これはどうも……」彼は感に
(たえたように、めいたんていのかおをみつめている。おこりっぽいかわりには、きげんの)
たえたように、名探偵の顔をみつめている。怒りっぽいかわりには、機嫌の
(なおるのもはやいろうじんであった。ひらいてごらんなさい。くろとかげ は)
なおるのも早い老人であった。「ひらいてごらんなさい。『黒トカゲ』は
(なにかをようきゅうしてきたのですよ あけちのことばに、いわせしはちゅういぶかくふうをきって、)
なにかを要求してきたのですよ」明智の言葉に、岩瀬氏は注意深く封を切って、
(なかのしょかんせんをひろげてみた。なんのしるしもないじゅんぱくのようしである。そこにへたな)
中の書翰箋をひろげて見た。なんの印もない純白の用紙である。そこに下手な
(しょたいで なんとなくわざとへたにかいたようなしょたいで つぎのもんくが)
書体で――なんとなくわざと下手に書いたような書体で――次の文句が
(したためてあった。)
したためてあった。