黒蜥蜴26

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プレイ回数1354難易度(5.0) 3474打 長文 長文モード可
明智小五郎シリーズ
江戸川乱歩の作品です。句読点以外の記号は省いています。
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 ねね 4057 C 4.1 97.1% 836.2 3497 104 50 2024/01/29

関連タイピング

問題文

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(きのうはおさわがせしてきょうしゅく。おじょうさんはたしかにおあずかりしました。けいさつの)

昨日はお騒がせして恐縮。お嬢さんはたしかにお預かりしました。警察の

(そうさくからはぜったいにあんぜんなばしょにおかくまいしてあります。おじょうさんをわたしから)

捜索からは絶対に安全な場所におかくまいしてあります。お嬢さんを私から

(おかいもどしになるおきもちはありませんか。もしそのおきもちがあるのでしたら、)

お買い戻しになるお気持はありませんか。もしそのお気持があるのでしたら、

(さのじょうけんによってしょうだんにおうじてもよいとかんがえます。)

左の条件によって商談に応じてもよいと考えます。

(だいきん ごしょぞう えじぷとのほし いっこ。しはらいきじつ みょうなのかしょうごごごじ。)

(代金)ご所蔵「エジプトの星」一個。(支払期日)明七日正午後五時。

(しはらいばしょ tこうえんつうてんかくちょうじょうのてんぼうだい。)

(支払場所)T公園通天閣頂上の展望台。

(しはらいほうほう いわせしょうべえしたんしんにてうじかんまでにつうてんかくじょうにげんぴんを)

(支払方法)岩瀬庄兵衛氏単身にて右時間までに通天閣上に現品を

(じさんすること。 うのじょうけんにすこしでもいはいしたるばあい、またはこのことをけいさつに)

持参すること。 右の条件に少しでも違背したる場合、またはこのことを警察に

(つげしらせたるばあい、またはげんぴんじゅじゅののちわたしをほばくさせようとしたるばあいは、)

告げ知らせたる場合、または現品授受ののち私を捕縛させようとしたる場合は、

(れいじょうのしをもってこれにむくいること。うのじょうけんがせいかくにりこうされたうえは、)

令嬢の死を以てこれにむくいること。右の条件が正確に履行された上は、

(そのよるのうちにおじょうさんをおたくまでおくりとどけます。うきいをえます。おへんじには)

その夜のうちにお嬢さんをお宅まで送り届けます。右貴意を得ます。御返事には

(およびません。あすしょていのじかん、しょていのばしょへおいでなきかぎりは、このしょうだん)

及びません。明日所定の時間、所定の場所へ御いでなき限りは、この商談

(ふせいりつとみとめ、ただちによていのこうどうにうつります。いじょう)

不成立と認め、ただちに予定の行動に移ります。以上

(くろとかげ いわせしょうべえさま)

黒蜥蜴 岩瀬庄兵衛様

(これをよみおわると、いわせしはとうわくのいろをうかべてかんがえこんでしまった。)

これを読み終ると、岩瀬氏は当惑の色を浮かべて考えこんでしまった。

(えじぷとのほし ですか あけちがそれとさっしてたずねる。そうです。)

「『エジプトの星』ですか」明智がそれと察してたずねる。「そうです。

(こまったことになりました。あれはわしのしゆうにはなっているが、こくほうとも)

困ったことになりました。あれはわしの私有にはなっているが、国宝とも

(いうべきしなもので、いまわしいぞくのてなどにわたしたくはないのです ひじょうに)

いうべき品物で、いまわしい賊の手などに渡したくはないのです」「非常に

(こうかなものときいていますが じかにじゅうまんえんです。だが、にじゅうまんえんには)

高価なものと聞いていますが」「時価二十万円です。だが、二十万円には

(かえられないたからです。あんたは、あのほうせきのれきしをごぞんじですか ええ、)

替えられない宝です。あんたは、あの宝石の歴史をご存知ですか」「ええ、

など

(ききおよんでいます このくにさいだいさいきのだいやもんど えじぷとのほし は、)

聞き及んでいます」この国最大最貴のダイヤモンド「エジプトの星」は、

(みなみあふりかさん、ぶりりあんとがた、さんじゅういくからっとのほうぎょくであって、そのなの)

南アフリカ産、ブリリアント型、三十幾カラットの宝玉であって、その名の

(しめすごとく、かつてはえじぷとおうぞくのほうこにおさまっていたものだが、それが)

示すごとく、かつてはエジプト王族の宝庫に納まっていたものだが、それが

(またてんてんして、ついすうねんまえのこと、いわせしょうかいぱりしてんのばいしゅうするところとなり、)

また転々して、つい数年前のこと、岩瀬商会パリ支店の買収するところとなり、

(げんざいはおおさかほんてんのしょゆうとなっている。ゆいしょのふかいほうせきじゃ。わしはあれを)

現在は大阪本店の所有となっている。「由緒の深い宝石じゃ。わしはあれを

(いのちからにばんめぐらいにたいせつにおもっております。とうなんについてもようじんにようじんを)

命から二番目ぐらいに大切に思っております。盗難についても用心に用心を

(かさね、そのほうせきをおさめてあるばしょは、わしじしんのほかに、てんいんはもちろん)

かさね、その宝石を納めてある場所は、わし自身のほかに、店員はもちろん

(かないさえしらないのです すると、つまり、ぞくにしては、いっこのほうせきを)

家内さえ知らないのです」「すると、つまり、賊にしては、一個の宝石を

(いきたにんげんをぬすみだすほうが、たやすかったというわけですね あけちはしきりに)

生きた人間を盗み出す方が、たやすかったというわけですね」明智はしきりに

(うなずいている。そうです。えじぷとのほし はたびたびとうぞくにねらわれた。)

うなずいている。「そうです。『エジプトの星』はたびたび盗賊に狙われた。

(そのたびごとにわしはかしこくなったのです。そして、とうとう、)

そのたびごとにわしはかしこくなったのです。そして、とうとう、

(そのかくしばしょをわしだけのひみつにしてしまった。どんなにえらいとうぞくでも、)

そのかくし場所をわしだけの秘密にしてしまった。どんなにえらい盗賊でも、

(わしのあたまのなかのひみつをぬすむことはできませんからね・・・・・・しかし、そのくしんもいまは)

わしの頭の中の秘密を盗むことはできませんからね……しかし、その苦心も今は

(むだじゃ。さすがのわしも、むすめのみのしろきんとしてほうせきをゆするというてには、)

むだじゃ。さすがのわしも、娘の身代金として宝石をゆするという手には、

(すこしもきがつかなんだ・・・・・・あけちさん、いかなたからものでも、にんげんのいのちには)

少しも気がつかなんだ……明智さん、いかな宝物でも、人間の命には

(かえられませんわい。ざんねんじゃが、わしはあきらめました。ほうせきをてばなす)

かえられませんわい。残念じゃが、わしはあきらめました。宝石を手ばなす

(ことにしましょう いわせしはあおざめたかおでけついのほどをしめした。それほどの)

ことにしましょう」岩瀬氏は青ざめた顔で決意のほどを示した。「それほどの

(ものをてばなすことはありませんよ。なあに、こんなきょうはくじょうなんかもくさつしても)

ものを手ばなすことはありませんよ。なあに、こんな脅迫状なんか黙殺しても

(かまわないのです。おじょうさんのいのちにかかわるようなことはだんじてありません)

かまわないのです。お嬢さんの命にかかわるようなことは断じてありません」

(あけちがたのもしくなぐさめても、いってつのいわせしはかれのことばをしんようしない。)

明智が頼もしくなぐさめても、一徹の岩瀬氏は彼の言葉を信用しない。

(いやいや、あのおそろしいあくとうは、なにをしでかすかしれたものではない。)

「いやいや、あの恐ろしい悪党は、何を仕でかすか知れたものではない。

(いくらこうかとはいえ、たかがこうぶつです。こうぶつなどをおしんで、むすめにまんいちのことが)

いくら高価とはいえ、たかが鉱物です。鉱物などを惜しんで、娘に万一のことが

(あってはとりかえしがつきません。わしはやっぱりぞくのもうしでにおうずることに)

あっては取り返しがつきません。わしはやっぱり賊の申し出に応ずることに

(しましょう それほどのごけっしんなれば、ぼくはおとめしません。いちおうてきの)

しましょう」「それほどの御決心なれば、僕はお止めしません。一応敵の

(たくらみにかかったとみせかけて、ほうせきをてわたすのもいっさくでしょう。ぼくの)

たくらみにかかったと見せかけて、宝石を手渡すのも一策でしょう。僕の

(たんていぎじゅつからいえば、むしろそのほうがべんぎなのです。しかしいわせさん、けっして)

探偵技術からいえば、むしろその方が便宜なのです。しかし岩瀬さん、決して

(ごしんぱいなさることはありません。ぼくははっきりおやくそくしておきます。おじょうさんも)

ご心配なさることはありません。僕はハッキリお約束しておきます。お嬢さんも

(そのほうせきも、かならずぼくのてでとりもどしておめにかけますよ。ただちょっとの)

その宝石も、必らず僕の手で取り戻してお眼にかけますよ。ただちょっとの

(あいだ、あいつにぬかよろこびをさせてやるだけです あけちはなんのたのむところ)

あいだ、あいつにぬか喜びをさせてやるだけです」明智はなんの頼むところ

(あってか、じしんにみちたちからづよいくちょうで、こともなげにいいきるのであった。)

あってか、自信に満ちた力強い口調で、こともなげに言い切るのであった。

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