怪人二十面相68 江戸川乱歩

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少年探偵団シリーズ1作目

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問題文

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(けいしそうかんは、あけちをにらみつけて、はらだたしげにどなりました。 「ところが、)

警視総監は、明智を睨み付けて、腹立たしげに怒鳴りました。 「ところが、

(すっかりぬすみだされているのです。にじゅうめんそうはれいによってまほうをつかいました。)

すっかり盗み出されているのです。二十面相は例によって魔法を使いました。

(なんでしたら、ごいっしょにしらべてみようではありませんか」)

なんでしたら、ご一緒に調べてみようではありませんか」

(あけちはしずかにこたえました。 「ふーん、きみはたしかにぬすまれたというんだよね。)

明智は静かに答えました。 「フーン、君は確かに盗まれたと言うんだよね。

(よし、それじゃ、みんなでしらべてみよう。かんちょう、このおとこのいうのがほんとうかどうか、)

よし、それじゃ、皆で調べてみよう。館長、この男の言うのが本当かどうか、

(ともかくちんれつしつへいってみようじゃありませんか」 まさかあけちがうそを)

ともかく陳列室へ行ってみようじゃありませんか」  まさか明智が嘘を

(いっているともおもえませんので、そうかんもいちどしらべてみるきになったのです。)

言っているとも思えませんので、総監も一度調べてみる気になったのです。

(「それがいいでしょう。さあ、きたこうじせんせいもごいっしょにまいりましょう」)

「それがいいでしょう。さあ、北小路先生もご一緒に参りましょう」

(あけちはしらがしらひげのろうかんちょうににっこりほほえみかけながら、うながしました。)

明智は白髪白髯の老館長にニッコリ微笑みかけながら、促しました。

(そこで、4にんは、つれだってかんちょうしつをでると、ろうかづたいにほんかんのちんれつじょうのほうへ)

そこで、四人は、連れ立って館長室を出ると、廊下伝いに本館の陳列場の方へ

(はいっていきましたが、あけちはきたこうじかんちょうのろうたいをいたわるようにそのてをとって、)

入って行きましたが、明智は北小路館長の老体を労わるようにその手を取って、

(せんとうにたつのでした。 「あけちくん、きみはゆめでもみたんじゃないか。どこにも)

先頭に立つのでした。 「明智君、きみは夢でも見たんじゃないか。どこにも

(いじょうはないじゃないか」 ちんれつじょうにはいるやいなや、けいじぶちょうがさけびました。)

異状はないじゃないか」  陳列場に入るや否や、刑事部長が叫びました。

(いかにもぶちょうのいうとおり、がらすばりのちんれつだなのなかには、こくほうのぶつぞうが)

いかにも部長の言うとおり、ガラス張りの陳列棚の中には、国宝の仏像が

(ずらっとならんでいて、べつになくなったしなもないようすです。 「これですか」)

ズラッと並んでいて、別に無くなった品もないようすです。 「これですか」

(あけちはそのぶつぞうのちんれつだなをゆびさして、いみありげにぶちょうのかおをみかえしながら、)

明智はその仏像の陳列棚を指さして、意味ありげに部長の顔を見返しながら、

(そこにたっていたしゅえいにこえをかけました。 「このがらすどをひらいてくれたまえ」)

そこに立っていた守衛に声をかけました。 「このガラス戸を開いてくれ給え」

(しゅえいは、あけちこごろうをみしりませんでしたけれど、かんちょうやけいしそうかんと)

守衛は、明智小五郎を見知りませんでしたけれど、館長や警視総監と

(いっしょだものですから、めいれいにおうじて、すぐさまもっていたかぎでおおきながらすどを)

一緒だものですから、命令に応じて、すぐさま持っていた鍵で大きなガラス戸を

(がらがらとひらきました。 すると、そのつぎのしゅんかん、じつにいようなことが)

ガラガラと開きました。  すると、その次の瞬間、実に異様な事が

など

(おこったのです。 ああ、あけちたんていは、きでもちがったのでしょうか。かれは、)

起こったのです。  ああ、明智探偵は、気でも違ったのでしょうか。彼は、

(ひろいちんれつだなのなかへはいっていったかとおもうと、なかでもいちばんおおきいきぼりの)

広い陳列棚の中へ入って行ったかと思うと、中でも一番大きい木彫りの

(こだいぶつぞうにちかづき、いきなり、そのかっこうのよいうでを、ぽきんとおってしまった)

古代仏像に近づき、いきなり、その恰好の良い腕を、ポキンと折ってしまった

(ではありませんか。 しかもそのすばやいこと、3にんのひとたちが、あっけにとられ、)

ではありませんか。  しかもその素早い事、三人の人達が、呆気にとられ、

(とめるのもわすれて、めをみはっているあいだに、おなじちんれつだなの、どれもこれも)

止めるのも忘れて、目を瞠っている間に、同じ陳列棚の、どれもこれも

(こくほうばかりのいつつのぶつぞうを、つぎからつぎへと、たちまちのうちに、かたっぱしから)

国宝ばかりの五つの仏像を、次から次へと、たちまちの内に、片っ端から

(とりかえしのつかぬきずものにしてしまいました。 あるものはうでをおられ、)

取り返しのつかぬ傷物にしてしまいました。  あるものは腕を折られ、

(あるものはくびをひきちぎられ、あるものはゆびをひきちぎられて、みるもむざんな)

あるものは首を引き千切られ、あるものは指を引き千切られて、見るも無残な

(ありさまです。 「あけちくん、なにをする。おい、いけない。よさんか」)

ありさまです。 「明智君、何をする。おい、いけない。よさんか」

(そうかんとけいじぶちょうとが、こえをそろえてどなりつけるのをききながして、あけちはさっと)

総監と刑事部長とが、声を揃えて怒鳴りつけるのを聞き流して、明智はサッと

(ちんれつだなをとびだすと、また、さいぜんのようにろうかんちょうのそばへより、そのてをにぎって、)

陳列棚を飛び出すと、また、最前のように老館長の傍へより、その手を握って、

(にこにことわらっているのです。 「おい、あけちくんいったい、どうしたというんだ。)

にこにこと笑っているのです。 「おい、明智君一体、どうしたというんだ。

(らんぼうにもほどがあるじゃないか。これははくぶつかんのなかでもいちばんきちょうな)

乱暴にも程があるじゃないか。これは博物館の中でも一番貴重な

(こくほうばかりなんだぞ」 まっかになっておこったけいじぶちょうは、りょうてをふりあげて)

国宝ばかりなんだぞ」  真っ赤になって怒った刑事部長は、両手を振り上げて

(いまにもあけちにつかみかからんばかりのありさまです 「ははは・・・・・・。これがこくほうだって)

今にも明智に掴み掛らんばかりの有り様です 「ハハハ……。これが国宝だって

(あなたのめはどこについているんです。よくみてください。いまぼくがおりとった)

貴方の目は何処についているんです。よく見て下さい。今僕が折り取った

(ぶつぞうのきずぐちを、よくしらべてください」 あけちのかくしんにみちたくちょうに、けいじぶちょうは)

仏像の傷口を、よく調べて下さい」  明智の確信に満ちた口調に、刑事部長は

(はっとしたように、ぶつぞうにちかづいて、そのきずぐちをながめまわしました。)

ハッとしたように、仏像に近付いて、その傷口を眺め回しました。

(すると、どうでしょう。くびをもがれ、てをおられたあとのきずぐちからは、)

すると、どうでしょう。首をもがれ、手を折られた後の傷口からは、

(がいけんのくろずんだふるめかしいいろあいとはにてもにつかない、まだなまなましい)

外見の黒ずんだ古めかしい色合いとは似ても似つかない、まだ生々しい

(しろいきぐちが、のぞいていたではありませんか。ならじだいのちょうこくに、こんなあたらしい)

白い木口が、覗いていたではありませんか。奈良時代の彫刻に、こんな新しい

(ざいりょうがつかわれているはずはありません。)

材料が使われている筈はありません。

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